黒崎隊長物語。



















1



その日、尸魂界に衝撃が走った。




「マジかよ!?今さら十四番隊の設立!?」



旅禍の侵入やそれに重なるように起こった中央四十六室の全滅。
様々な思いが交錯した事件から早数十年、突然護廷十三隊にもう一つ隊が増設されることが決定した。
その知らせは多くのどよめきを生んだが、それよりもその人選に衝撃が走った。


「それも驚いたが、ンなこと隊長と副官になる人に比べたらへでもねぇぜ!」
「ど、どういうことだ?」
「聞いて驚け!十四番隊の隊長は・・・」
「黒崎一護だろ?」
「そう!数十年前にやってきた旅禍の・・・ってえぇ!?ひ、日番谷隊長!?」

屋根の上から平隊員達を見下ろし、日番谷冬獅郎は笑った。

「十四番隊隊長は元旅禍の黒崎一護。現世で死んだからコッチで死神やるんだってよ・・・って、
こんな内情は関係ないか、お前らには。ほら、さぼってねぇで仕事しろよ。」
「「は、はい!失礼しました!!」」

走り去る二人には気にも留めず、日番谷は空を見上げた。

「一護が隊長かぁ・・・それはいいけど、あの人が副官?冗談だろ・・・」



















2



その日、更木剣八は楽しくて仕方なかった。



「剣ちゃん今日は朝から上機嫌だね!」

剣八の背の上でやちるも始終笑顔だ。

「おうよ!これで毎日退屈せずにすむぜ。」
「あははー!いっちー早く来ないかなぁ。また剣ちゃんと戦ってもらわなきゃv」
「随分楽しそうにしてるなか悪いんですけど、まず此処は驚く所じゃねぇっすか?」
「そうそう。一護が隊長になるのは構いませんが、その下に就く人が・・・」
「もー!そんな事どうでもいいの!いっちーがずっとコッチにいることが重要なの!
つるりんも弓っちも硬い事言わない!」

やちるが背に乗ったまま一角と弓親にブーイングする。

「つるりん言うなっ・・・じゃなくて。普通逆とかじゃないっすか?」
「そうとも限らねぇだろ?両者が是とすりゃいいんだし。現にやちるは俺に就いてるじゃねぇか。」
「・・・確かにそうですね。ということは、一護の奴・・・あの人とはただの師弟関係じゃねぇってことか・・・?」
「一角、そこは気にしない方がいいよ。」
「お、おう。」


なにやら黒いものが混じる弓親の笑顔に一角は冷や汗をたらした。



















3



「まさか、けいとこんな形で再会する事になるとはな。」

白哉は目の前に居る少年に向かって微笑した。

「おう。俺もまさか死んでまで死神やるとは・・・って、普通は死んでからやるものか。」

白哉の前に居るのはオレンジ色の頭をした少年。
数十年前に本気で戦った人物だが、今の彼はその時のままの姿だった。

「そうっスよ。まぁ朽木君は違いますけどね。」

一護の横に居た人物がニコリと微笑む。
白哉は一護からその人物に視線を移した。

「お久しぶりです。まさか貴殿が帰ってこられるとは・・・」
「アタシもビックリですよ。いきなり永久追放が解けたんですから。
ま、今は黒崎サンと一緒にいられることが何より嬉しいって言うか、それ以外なんでもいいと言うか。」
< 「なっ!?アンタ何言ってんだよ!」
「ヤだな〜黒崎サンったら。赤くなちゃって可愛いv」
「うるせぇ!」
「目が痛い!」

斬月の柄がクリーンヒットし、その人物―――浦原は手で顔を覆った。


「あれ?浦原君?」
「おや、浮竹さんじゃないっスか。どうも〜お久しぶりです。」

白哉の後方からやって来た浮竹に浦原はへらりと笑う。

「久しぶり。ずいぶんとまぁ・・・鬼の喜助がねぇ・・・ただの惚気た男になってるぞ?」
「貴殿を尊敬している者が見たら泣くな。」

浮竹の言葉に同意するように白哉が言い足した。

「いいんスよ。アタシは黒崎サンが居てくれればそれで全部オッケーなんスから。」
「お、オマエなぁ!!」

一護が再び赤くなる。

「もー!黒崎サンったらカーワーイーイー!!」
「あ゛ー!早く総隊長ンとこ行くぞ!それじゃ、白哉、浮竹さん。また!」

一護が歩き出す。

「それじゃ、アタシもこれで。・・・・・・黒崎サーン!待ってくださーい!」

副官章を身につけた金髪の死神が白い羽織を纏ったオレンジ色の少年を追いかけていくのを見送って、
浮竹は声を上げて笑い、白哉は眉をしかめた。






















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