腐女子談義
in『必要悪の教会』女子寮
「やっぱりステ上なんじゃないですか? 時代は年下攻めですよ」 「いえいえ。いつも一緒に学園生活、そして友情から始まる恋!な土上でしょう」 「ビアージオ×上条とう」 「却下」 「うう」 「ア、アク上(アックア×上条)! アク上なんていかがですか!?」 「……後方のアックアが出ますか。天草式の方から話を聞いたんですね…はっ!? 天草式と言えば建上があるじゃないですか!」 「おっとなんたること…! 忘れておりました! 昔は敵で今は味方だなんてオイシイ! 美味しすぎる!!」 「ふむ、年上ね……じゃあアン上。警備員(アンチスキル)×上条当麻はどうだ?」 「ぐはぁ! 学園都市の屈強なおじさま×喧嘩っ早い少年キましたーっ!! もしかして複数でりんか…」 「はーいその先はストップ。あたしら一応シスターだからね? 清く正しい修道女だからね?」 「こんな会話してる時点でアウトだろうに」 「衆道は日本の文化ですよ?」 「うわ言い切っちゃったこの人」 「いやまぁ何はともあれ土上を再プッシュ! 甘え上手×甘やかせ上手に世界中がニヤニヤ!!」 「(話を強引に戻しやがった!と解りつつもノってしまう我が性(サガ)!) だからステ上です! 年下ツンデレ攻め&残り香は煙草の香り!」 「いやーもういっそ、TS(性転換)で禁書目録×幻想殺しに走ってみるとか。「とうまは僕が守るよ」的に。ちなみに幻想殺しの性別は男でも女でも」 「……! そ、それは禁断の蜜の味!」 「いやいや意味不明ですから! ……あーでも、そうなると男体化女教皇様(プリエステス)×上条さんもアリ…?」 「聖人二人目追加ーっ! アックアVS女教皇→幻想殺しのトライアングルいっちゃいますか!」 「行っちゃいたいですーっ!!」 「その横から漁夫の理な建上」 「この人ぼそっと言いおった! でも紛れることが得意な天草式なら可能かも!?」 「力技でローマ教皇×幻想殺し」 「腕力ならぬ権力か…! 掠め取る隙もありゃしないって訳ですね!?」 「二〇億の人間がローマ教皇×幻想殺しのために動く! C文書を使えばもっと効果的! だって教皇の言うことは正しいってことになるからっ♪」 「そうなったらステイル=マグヌスと土御門元春が黙っていないでしょう。むしろ学園都市とイギリス清教の連合で争奪戦スタート?」 「彼女達はあそこで何を話しているんですか?」 実に不思議そうな顔でそう問い掛けたのは神裂火織。現在彼女が立っているのは必要悪の教会(ネセサリウス)の女子寮、その中にある広い食堂である。そして視線の先で先程から熱い談義を交わしているのは同じ女子寮に住まう見慣れた者達だ。アニューゼ部隊の面々や小麦色の肌を持つシェリー、それからよく見れば天草式に属する少女もいる。 「あら、神裂さんにはわかりませんか?」 にっこりと穏やかな笑顔でもって返したのはオルソラ=アクィナス。神裂の隣に立つ格好で同じ光景を眺めているのだが、その様子から察するに、彼女には視線の先でなされる会話が理解出来ているらしい。 「時折知った名前が聞こえると言うか……確実にあの少年のことですよね? それに私や“あの子”のことも話題に出ているような?」 「そうですわねぇ…ですが、」 「“ですが”?」 鸚鵡返しに首を傾げる神裂。 オルソラは「ほほほ」と口元を手で隠して上品に笑いながら、 「“挟んで擦る”ことの意味もまだ解らないうちはアレのことも知らない方がよろしいかと」 にっこり。 神裂にはやはりさっぱり解らないことを言って彼女は熱気を放つ集団へと足を向けた。 「みなさま、やはりあのウルトラ旗男・上条当麻さんならば男女区別無しの総受けで決まりではありません?」 「“総受け”?」 頭上にクエスチョンマークを増やし続ける神裂を残して。 in学園都市 「そこはほら、オーソドックスに土上じゃないかなー」 「土上って……それアンタの兄貴ってことでしょう? 土御門の好きな漫画って確か兄と妹がドロドロのやつじゃなかったっけ」 「それは二次元ゆえなのだ。三次元(リアル)でそんな状況だったら読んでられないと思うー」 「ああ、教師は教師ドラマが好きになれなくて、刑事も同様ってやつね」 「うーん、ちょっと違うような気がするけど、まぁいっかー。とにかく身近な三次元なら土上だねー私は。みさかはー?」 「私? ………、一上とか?」 「一?」 「一方通行(アクセラレータ)のことよ」 「えーっと、確かその人って学園都市最強の超能力者(レベル5)だったと記憶しているのだがー?」 「だからその一方通行本人だってば」 「なにゆえ」 「夏休み中にちょっとねー。黒いのが白いのを殴り飛ばしたのよ」 「……逆ではなく?」 「逆ではなく」 「うわー。となると、初めて拳を受けて気になるアイツ方式な胸キュン乙女攻めと言った所かー」 「殺伐系もありじゃない? 拉致監禁で《ピーー》」 「待て待てみさかー。みさかも私もまだ中学生のはずだぞ一応ー」 「やぁねぇ。単語だけなら引っかからないわよ」 「とか言いつつしっかりピー音だったような気がするのは私の間違いなのかなー?」 「この国では精神の自由が認められています。つまり行動しなけりゃ何考えてもオーケー。拡大解釈で世間様に向けて大声で言うなんてことが無ければ、こうして内輪で暴露しちゃうのもアリアリでしょ」 「……うーん、さすが学園都市第三位の超能力者(レベル5)。自分だけの現実(パーソナルリアリティ)も確立されてるって言えばされてるなー」 「あ」 「なんだいみさかー。何か別CPでも思いついた?」 「うん。青髪×ツンツン頭ってのもどうかな」 「青髪……兄貴の友達の青髪ピアスかー」 「そう、たぶんそれ。ってアンタも本名知らないの?」 「知らないー。兄貴も上条当麻も青髪ピアスって呼んでるからねー。で、あの長身&世界三大テノールな青髪ピアスをピックアップかー」 「あの身長差はオイシイと思うのよね」 「土上も頭一つ分くらい違うぞー」 「でも青上ならもっと差があるじゃない。やっぱり腕の中にすっぽり且つキスする時に受けは爪先立ち&攻めは身を屈めてってのはある種の萌え要素じゃない?」 「それならいっそ、三馬鹿トリオ(デルタフォース)CPでいいんじゃないー? 図式的に言うと土御門→上条←青髪ピアス」 「いやいや、だったら土上で青上で土VS青でさん《ピー》」 「みさかみさかー、今のピー音ははっきり言って間に合ってなかったからー。もろ聞こえって言うか、むしろ音入っても入らなくても一緒だ」 「え、そう?」 「あれー? あそこにいるのは短髪とまいかだよね」 街を散歩中のインデックスが見つけたのは、公園のベンチに腰掛けている御坂美琴と土御門舞夏の姿だった。二人は穏やかそうでありながら、しかし何やら妙なオーラを纏いつつ話し込んでいる。こちらに気付く様子はない。 特に目的地も無かったインデックスは知り合いを見つけたことでふらふらとそちらへ足を運び、 「ねぇねぇ、短髪とまいかはそこで何話してるの?」 「ふぅおらあぁぁぁあああ!?」 「みさかー、なんかもう全然お嬢様じゃないよそれはー」 「な、なんなのかな…!? 私なにか悪いことしちゃったかも!?」 文字通り飛び上がった美琴と呆れる舞夏、そしてドキドキと嫌な感じに心臓を高鳴らせるインデックスの姿が出来上がった。 一歩後ずさるインデックスに舞夏は手をパタパタと振って、「まぁ安心しー、純白シスター。別に襲われやしないからー」と笑う。 「ほらみさかもー。常盤台のお嬢様がそんなベンチに乗り上げて大股開きっぱなしにしないー。いくら中に短パン穿いてるからって、やっちゃいけない格好でしょうそれはー」 「わ、わかってるわよ…。で、アンタはここで何してるの?」 気を取り直して(ついでに姿勢も正して)美琴がインデックスに問う。が、インデックスとしては特に理由も無かったためあるがままに答えるしかない。散歩だよ、と。 「散歩? 一人で?」 「む。それは言外にとうま無しじゃ私が街を歩けないってことなのかな。それはあまりにも心外な感じだよ。私だってとうまがいなくてもお散歩くらい出来るんだから」 「いやいや、そこまで言ってないってば。つかいつも一緒にいるみたいな発言があったような」 「気にしないのが吉だと思うー」 美琴が首を傾げた所で舞夏がさらりと流す。 「で、なんかもうちょうどいいからシスターに質問」 「なになに?」 「ぶっちゃけ上条当麻に関して何か知ってることってないかなー」 「……質問がアバウトすぎるよ、まいか」 「つまりだなーアレだよ。ときたま変な歩き方してるとか、首筋に虫刺されみたいな痕があるとか」 「ちょ、土御門!?」 「だって上条当麻は私達と違って高校生ですぞー、みことさん。それくらいある時はあるでしょー」 「そ、そうなの!?」 「たぶんねー」 え?え?と戸惑ったり顔を赤らめたり挙動不審な美琴。それを眺めながら舞夏はただ笑っている。 そしてそんな二人を前にしてインデックスは「うーん」と完全記憶能力つきの頭の中から過去の情報を浚っていた。根は真面目なのが幸いしてか、二人の会話にまで神経は行っていない。 「……あ」 「おお、何か思い当たることがあるのかいシスター」 「え? ホントに!?」 インデックスが発した一音で舞夏と美琴の目の色が変わった(とインデックスは感じた)。彼女ら二人の様子にやや圧倒されつつも、知人から求められた回答を律儀に言葉にすべくインデックスは口を開く。 「そう言えば、隣の部屋から帰って来た時のとうまはだいたいぎこちない歩き方してるけど」 「……隣イコール我が義兄の部屋だ」 美琴のためにぼそりと舞夏が補足。彼女の言葉にインデックスは肯定を返し、更に続ける。 「あと、とうまは別に痒がってなかったけど、まいかが言うみたいに虫刺されもあったよ」 答えるインデックスの顔に邪気は無い。ついでに記憶違いも無い。完全記憶能力はどんなに些細なことでも覚えてしまうものなのである。 「………つ、」 「つ?」 舞夏が俯き、ふるふると震えた。ちなみに美琴は言葉も無く悶絶中。台詞で表すなら「〜〜〜〜……っ!!」な感じだ。 インデックスは舞夏が零した「つ」という言葉を鸚鵡返しに発した後、その続きを待って相手を見据える。すると一瞬の間を置いて舞夏がばっと顔を上げた。 「土上はいりましたーっ!! リアル! リアル土上きちゃったー!!」 「見たい聞きたい! あいつが居ないうちに部屋に忍び込んで壁に耳を当てるのってアリかな!?」 「え? な、なに!? いきなり何なのこの二人! って、まいかそれ何!? どっから出してきたのそのチラシ! なんか“とうちょうき”って書いてあるし!」 「気にするなシスター。人は必要な時に必要な分だけ汚れていくものなのさー。シスターも意味が解るようになったら私の所においでー。諸手を挙げて歓迎してあげるからー」 「わけわかんないよ!!」 「さーて、兄貴に見つかんないように仕掛けないとなー」 「データはコピーしてよね」 「もちろんー」 「え、ちょ、無視!? 本当になんなのーっ!?」 一応土上オチ(?)ですが、個人的にはブラザー・インデックスもプッシュ。 シスターじゃありません。ブラザーで。 ベランダに続くドアを開けたら純白の神父さんが引っかかってました、的に。 噛み付き攻撃は第三者の視覚的にそりゃもうエラいことになりますね(笑) |