生かしてあげる。活かしてあげる。
ああ丈、きみは僕のためだけにいきればいい。 「ひぁ…ぁぁあぁん……ッッ 」 後ろから強く攻めたてられながら仁が感じるのは強烈 な違和感。 誘ったのは仁。乗ったのはドレイク。思った通りの--- 抱き方。 まだ日も高いうちから司令室の机に上体を押し付けら れ、下半身だけをくつろげられて。他は必要ないとば かりにそこだけを攻められる。 仁の弱い場所を嬲るようにつつきあげ、舐るようにこ すりつけ。あるいは前に廻した手では執拗に先端だけを 弄び--- 思った通りの抱き方---思った通りの、男。 「あんッ…ぁ、ん、あ…ひァン…ッッ 」 ずじゅ。ぶじゅっ。ずちゅん。 激しく繰り返される抽挿。後ろからは絶え間なく聴こ えてくる水音。男のものでいっぱいになった其処から は白濁が溢れ出て、男の手によって堰き止められなが らも耐えられぬとばかりに漏れ出てくる己のものと混 ざり合い、足を伝わり床で水溜りとなって最早どちら のものとも区別はつかず。 「あひッ…ッ、ひぃ……ん、ひんッ… 」 仁に対する気遣いなど欠片もなく、ただ身勝手に腰を 動かす---仁が、思っていた通りの抱き方。 仁が、思っていた通りの男であるのに--- なのに、このどうしようもない違和感は。 「はんッ…、あ……はあ、ん……ッ 」 仁の、名を呼ぶ声も(チガウ)仁に触れる、その手の 感触も(チガ、ウ…)仁を苛む、その灼熱も( ハ、モット---) 「なにを、…考えている、鶴沢---? 」 「ッ、ちろん…貴方、のことッ、ですよ…ドレイ、ク 」とでも、云えば--- 満足か、と嘲笑に仁は唇を歪ませてやる。 ふ、と頭上で男が哂う気配を見せ 「ひあぁぁぁぁぁぁああんッッ…!! 」 次の瞬間、仁は激しく突き上げられていた。 「あんッ、…あ、アンッ、あ…はぁんッ…ドレ、イク……ッッ 」 仁に伸し掛かり、仁の腰をつかみ上げ、ただ自分本位 に仁を蹂躙する男。仁が、思っていた通りの抱き方。 仁が思っていた通りの、セックス。 仁が、思っていた通りの、男…なのに、 なのに、何故--- 「あひッ…ひぁぁぁああああ……ッッッ!!! 」 迎えた小さな死の頂で、聴こえたのは別の声。 『仁 』 この上もなく大切だと、仁だけが全てだと。 『じ ん 』 仁のためだけに在る命。仁のためにだけ在る身体。 仁の、願いを、望みを、叶えることこそが己の歓びな のだと 魂の果てまでも、己は仁のものであるのだと--- 仁の名を呼ぶ、男の声。 (じょ、う --- ) 切り捨てたはずの、男の声。 生かしてあげる---活かして、あげる。 ああ丈、きみは僕のためにだけ、いきたら、よかった。 『さよならだ、丈 』 だから、きみはもういらない。 僕を揺るがす存在(きみ)など欲しくはない。 |