―それは揺るがす甘美な響き―








例えば俺が、本当はもっと強かったら

例えば俺が、本当は敵だったりしたら




なぁ、お前等はどうする?










「危ない、一護!」




虚による攻撃を、ルキアが跳ね返している。
どうやら俺はぼぉとしていたらしい。




「何をしておるのだ、一護っ危ない所だったぞ!」

「あぁ、悪りぃ」

「ボケてんじゃねぇよ」





当たり前のように助けてくれるルキア。
憎まれ口を叩く恋次。



彼らは知らない。

そう、けして。






別に嫌いな訳ではない。
確かに死神は好きではない。

だが、彼らは少し別。



だからだろうか。
時折彼らが滑稽でたまらない。
俺のコトと知った時の、反応がおもしろそうでたまらない。





ふと後ろを掠め見ると、雨竜とチャド、それから織姫が見えた。
こちらも虚と戦っている。
そろそろ決着がつきそうだ。





彼らも自分を知ったら、一体どんな顔をするのだろう。

きっと、信じられないというよな
そして、裏切られたとでもいうような顔をするのだろう。




あぁ、可笑しい。
たまらなく滑稽だ。






「黒崎君っ」

「黒崎、まだ虚を倒してないのか?」

「一護…」




三人がこちらに寄ってくる。
それをチラと見ながら、残りの虚をぶった切る。




「うるせぇな、もう終ったっての」

「おぉ、織姫。怪我はないか?」

「うん、全然」




ルキアと織姫が楽しそうに会話している。
雨竜とチャドは何時ものように、まぁ落ち着いている。









あぁ、感じる。


アイツが近づいてくる気配。




気配を消して、力も消して

静かに近づいてくるアイツは、誰にも気づかれずに歩み寄る。




そう、俺以外は気付かない。






あぁ、たまらない。
想像するだけで、口元が緩む。





ほら、今はもう後ろに…―









「お迎えに上がりましたよ、一護様」









闇を裂くような力の篭った声
だけど、それは水のように耳に抵抗なく流れ込む


そんな声







「っ!藍染っっ!!?」






恋次が最初に声を上げる。





「一護、後ろっ!!」





ルキアが俺に注意を促すように、叫ぶ。


が、それは俺には関係ない。








「遅い」





藍染の方に振り返る。
彼は静かな瞳で俺を見ている。





「一護!?」





驚いたような、声が響いている。
だが、それは耳には入らない。





「すみません…」

「俺は待ちくたびれたぞ、藍染」





跪いた彼を、上から見下ろす。
彼はその視線を甘んじて受け止める。




「御託はいい。行けるのか?」

「えぇ。準備は整っております」

「じゃ、行くか…」




俺がそういうと同時に、空に穴があく。

真っ暗なその穴は、まるで闇が集まり形作られたような暗さ。
何も受け入れられないような、そんな色。





「一護!!」

「黒崎!!?」




穴に吸い込まれる瞬間。
彼らの声が耳に届いた。
顔を見れば、泣きそうな歪んだ顔が見える。





あぁ、たまらない。
その顔が、俺の中の何かを撫で付ける。








「破面たちには言ってあるのか?」

「いぇ、まだ」

「…楽しくなりそうだな」







あぁ、その歪んだ顔が

その悲痛な声が

俺の心の何かを揺らす









例えば俺が、本当はもっと強かったら

例えば俺が、本当は敵だったりしたら




なぁ、お前等はどうする?



































『我白紙』の紅宵藍様から相互リンク記念として頂きましたv

黒幕の一護様!(あえて「様」付け)格好良過ぎます…!惚れる!

もう本当に素敵です!態度や言葉の一つ一つに心臓打ち抜かれました!!

ありがとうございます!

そして、これからもよろしくお願いします!!












BACK