「あっ」

「雪だ……」






SNOW






学校帰り、浦原商店に寄っていた一護。
門限も近くなり、そろそろ帰ろうと商店の扉を開けて外を見た。

「どうりで寒いと思ったぜ」

空から舞う落ちる白い雪。

「どうしますか?」

一護の見送りについて来た浦原は一護の背中から外を見つめ言った。

「いや、帰るよ。まだそんなに降ってないしな」

首に巻いてあるマフラーを強くより強く巻きつけ、手袋をした手をポケットに突っ込む。
商店から一歩出ると一護の頭に白い粉が降りかかる。

「そうっスか?じゃあ、途中まで送りますよ」

近くにあった傘を一護に差しかけながら浦原は笑顔で言った。
苦笑しつつ、一護は浦原から傘を受け取る。

「いいよ、別に。アンタも寒いだろ?」
「そんなわけにはいかないっスよ。アタシの大切な一護サンを家までお送りしなくては」

ニッコリ笑って茶化すように言った浦原は一護の隣に傘を持って並んだ。
ほんのりと、一護の頬が赤く染まった。
それでも少し嬉しそうに一護は笑った。

「心配性」
「一護サンに関してだけっスけどね〜」

そして、二人で一護の家へと歩き出す。

雪のせいか、辺りに人は誰もいなかった。
だからこそ、一護は浦原の隣をどうどうと歩けるのだろう。

静かに、白い雪が舞い落ちる。

「一護サン、雪好きっスか?」

唐突な浦原の質問。
さっきから雪を見つめながら歩いていた一護はちょっと驚く。

「雪?…別に好きでもねぇし、嫌いでもねぇよ。寒いのはイヤだけだな」

一護の返答に浦原は苦笑した。
その浦原の反応がいまいちよくわからない一護は浦原に問いかける。

「アンタはどうなんだよ?」
「アタシっスか?」

浦原は考え込むようなポーズをする。

思いついたような浦原は真っ直ぐに一護を見つめた。

「アタシは好きっスよ?」

「だって、君と一緒にいる時間が長くなるでしょ?」

そう言った浦原の瞳は慈愛に満ちていた。
そんな浦原の言葉や視線が恥ずかしくて、一護は俯きがちに言った。

「ずるい……」

その言葉はもちろん浦原にも届いていて、浦原は微笑んでいた。
一護が顔を上げたときは、寒さのせいか、はたまた浦原のせいか、ほんのり顔が朱に染まっていた。

「アタシはずるい大人っスからね。覚悟しといてくださいね」

さっきまでもの甘く、切ない雰囲気をぶち壊すかのような浦原の明るい声。
一護と目が合えばウインクした。
それがおかしくて、一護はつい笑ってしまった。

「笑うなんてひどいじゃないっスか〜」

恨めしげに言った声はすごく楽しそうで。
一護は更に笑っていた。
そんな一護に浦原も一緒に笑ってしまう。

「ここでいいよ」

家の前の交差点。

一護は浦原の方を向く。
さすがに家族に見付かるわけにはいかないので、一護は言った。

「ありがとな。……っと、傘」

浦原から借りた傘を返そうとたたもうとする。
しかし、それは浦原の手によって止められてしまった。

「いいんスよ。また今度、返しに来てください」

ニッコリと微笑んで言った浦原に一護はたためなかった傘をもう一度差した。

「悪いな。今度返しに行くから」

次回の約束。

毎日浦原のところに通っているのに未にこういうのは嬉しく思えてしまう一護だった。

くるりと体を反転させて一護は家への道を見つめる。
しかし、一歩踏み出したところでまた浦原に振り返った。

「どうかしたんスか?」

一護は何も言わず自分の首に巻いてあったマフラーを外した。
そしてそのまま、浦原の首にふわりと巻きつける。

「お礼。今度返しに来いよ」

浦原の首にマフラーを巻き終えた一護はそう言った。
至近距離で微笑まれ、浦原はちょっと驚いた。
でもすぐ笑顔になって自分の傘を落として、一護を抱きしめる。

「ありがとうございます。ちゃんと返しに行きますからね」

傘を落とした浦原にやれやれと言った風に浦原も入れるように傘を差しなおした。
持ってない手は背中に回した。

「おう。絶対に来いよ」

片手じゃやっぱりもどかしくて、一護も傘を落とした。
羽織を握り締める手に力が入ってしまう。

「もう少しだけ、こうしていてください」

ギュッと抱きしめる腕に力が入る。
自分より幾分小さな体が微かに動いた。

「しょうがねぇな……」

浦原の胸に顔をうずくめながら一護は呟いた。

「嬉しいくせに」
「うっせぇ」

そんな戯言にも思わず笑ってしまう。

どのくらいそうしていただろう。
まるで世界が一護と浦原しかいないような錯覚に陥りそうだ。

「じゃあ、またな」

ゆっくりと浦原から離れた一護は家に帰らなくてはならない。

「ええ、マフラー借りて帰りますね」

そう言った浦原は二つの傘を拾って片方を一護に手渡した。
嬉しそうに笑いながら一護は傘を受け取った。

「気をつけて帰れよ」
「わかってますよん」

もう一度微笑んだ一護は今度こそ家へと歩き出した。

一護の背中が見えなくなるまで浦原が見つめていたことを一護はきちんと知っていた。

浦原が帰るまで部屋の窓から一護が見つめていることを浦原はやっぱり知っていた。


そんな二人のある雪の日の話。











10000HITありがとうございました!
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これからもFATALISTをよろしくお願いします。

満月流留拝












「FATALIST」の満月流留様から頂きましたv

ああもうなんだよこの二人!(嬉)
貸し借りとか物凄く胸キュンなんですけど・・・!
そうやってわざわざ「次の約束」を作る辺りが!うあああっ(落ち着け)
それに一護といる時間が長くなるから雪が好きって!浦原さん!!もっと言って!

満月様、この度は10000HIT本当におめでとうございますv












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