崎嶇きく

≫ 険しいこと。容易でないこと。また、辛苦すること。









改造魂魄の事件以来

胡散臭いと思いながらも何かと助けられ

気が付けば視線を向けるようになった



普通の大人と違い

オレンジの髪に対して注意をする訳でもなく

自然に受け入れてくれている

珍しい色だろうと髪を摘まみながら問いかけてみた

そうしたら臆面も無く



「キレイな色ですよ

黒崎サンに良く似合う」



「…おぅ……サンキュ」



褒められて茶化す事も出来ず

熱くなる頬を隠すために俯いた



微かに唇に浮かんだ笑みと

穏やかな声音

優しげに感じた空気

そんな物がない交ぜになって

あぁ…俺はこいつが好きなのかもしれないと思った







いやぁ

可愛いなぁ…

頬染めて俯くなんて

少女漫画みたいですね〜♪



扇子で表情を隠し唇を歪め浦原は思う

こんな悪い大人に見初められた可哀相な子供

運が無かったと諦めてくださいな

折角目の前にぶら下がっているオイシイ存在

据え膳食わねば武士の恥とも言いますし

諦めて食べられちゃってください



俯く子供の顔を横から覗き込み

滑らかな頬に手を添えて

こちらを向くように促す



「下駄帽子…?」



まだ微かに染まった頬を撫で

視線で獲物が動かぬように射竦め

ゆっくり顔を近付けていく



「…ぁ……」



子供は動きを止め

視線に促されて震える瞼を閉じる

吐息を感じるほど近い距離

唇が重な…



「…る訳ないだろっ!!」



目の前に迫った顔を押しのけ

間を置かず男の腹へと拳を叩き込む



「…っ……黒崎サン…酷いっ!!」



「酷いのはどっちだ! 何しやがるつもりだった!!」



「何って…キ…」



最後まで告げる事は出来ず

照れた子供の容赦ない攻撃に浦原は地面へと倒れた



足を踏み鳴らして去っていく子供をそのまま見送り

大人しく据え膳にはなってくれないらしいと浦原は苦笑する



もう少し

もう少しだけなら大人の余裕で待ってあげますよ

でも…

隙を見せたら食べてしまいますから















































☆オマケ☆



しばらく地面とお友達になっていたのだが

黒崎サンが帰ってしまってはこのポーズをしている意味がない

よいしょの掛け声で起き上がり形ばかりの埃を払う



「忘れ物ですか?」



「おぅ」



帰った筈の子供の霊圧に振り返らぬまま問えば

即座に返事が返ってくる



まだご機嫌は斜めのままだと声音から判断し

これ以上機嫌を損ねないよう

余計な事を言わないよう縁側に腰掛け煙管に火を付ける

ふぅっと煙を吐き出し

夕暮れの空に向かっていく煙に視線を馳せる





薄闇に染まっていく空に覆われ

翳っていく太陽の光

まるで自分のようだと自嘲する



闇から抜け出せない自分

太陽のような子供

光を求めて子供を闇の中へといざな





打ち寄せる思考の波に気を取られ

頬へ寄せられた温もりが離れるまで気付かなかった



「またな 浦原サン?」



悪戯の成功に笑みを浮かべた子供が走り去っていき

微かに残った柔らかな唇の感触と温もりを逃さぬよう

浦原は自らの掌で覆い苦笑した



「今日はアタシの負けッスね…」



















『まいぺぇす』の文々様から相互記念としていただきました v


無茶苦茶なリクエストですみません・・・!(汗)

それでもこんなにすばらしいお話を作ってくださって・・・!(感涙)

文々様、本当にありがとうございました!

そしてこれからもよろしくお願いしますっ!












BACK