おはよう。
ここがスタートだ。 君の為に僕は生きよう〜ここが始まり〜 おなかがすいたと連絡を入れた後、やってきた研究員達によってライナは検査を受け、それから無事食べ物を手に入れることができた。 続いて食べ終わり、満足したライナが見たのは急いだ様子でこちらにやってきた青年の姿。 長い銀髪、強い意志が篭った金の瞳―――シオン・アスタールである。 (あれ?) ライナは彼の姿を見て何かを感じた。 (どこかで見たことある・・・?) ケースから出された後のおぼろげな記憶をたどる。 そして、 「あ。あんたシオン?」 ポム。と手を打って納得したような表情をするライナ。 それを聞いたシオンは始め驚いた顔を見せ、それからすぐに嬉しそうな表情になった。 「どうやらあの時のことは覚えていてくれたようだな。いきなり寝てしまったからどうしようかと思ったぞ?」 「え、はは。悪ぃ。いや〜あん時すっげぇ眠くってさぁ。」 ライナは笑うしかない。 「そういや、シオンはこの国の王なんだよな?」 「あ、ああ。そうだけど・・・それがどうしたんだライナ?」 そこでシオンは少し眉をしかめて、 「まさか俺が王だから、今さらきちんとした言葉使いで話し出すとか言うのは嫌だぞ?俺はお前と対等で居たいんだ。」 シオンにとって、今までずっとその目覚めを待ち望んでいた存在にそんな風にされるのはぜひとも避けたい所である。 「あ、そなの?じゃあこのままでいっか。」 そう言ってライナは続ける。 「でも一応、俺、兵器だし。王に危害を加えないようにって設定されてるから。 だから今のうちにちょっとやらしてもらうな?」 「え、なにを!?」 ライナの開発に一から携わってきたわけではないシオンに彼の今の言葉は意味のわからないものだった。 ちょっぴり焦るシオンにライナは笑う。 「契約っつーか、認識っつーか・・・とにかく、“王=シオン”って俺の中にインプットするだけだから。」 ライナの主を認識するシステムは先王の御代に構築されたもので、この国の現在の王がその血を引く者であるとわかっていても、複数いる先王の血族の中の誰が“ソレ”なのかは改めて記録されるようになっているのだ。 「そうなのか・・・えっと、それじゃあ俺は何をすればいいんだ?」 シオンの問いにライナは少し考えて・・・ 「そうだなぁ。認識にはシオンの体の一部が要るんだけど・・・あ、そうだ。髪の毛一本くれね?」 そう言ってライナは手を差し出す。 「髪の毛でいいのか?」 「ああ。」 「一本?」 「そう。」 シオンは己の髪を一本手に取り、プチリと抜きとった。 そしてライナに手渡す。 「サンキュ。」 髪を使って一体どうするのかと思うシオンの前で、ライナは髪を受け取り、長い一本のそれを何回か重ねあわせ、輪を作った。 (これならきれいな仕上がりになりそうだ・・・) そう思って、契約の言葉を呟く。 「我・ここにその一部をもって・この者を我が主として認める・・・」 ライナが言葉を紡いでいくと、それに呼応するようにライナに握られたシオンの髪が光を放ち、その姿を変えてゆく。 「・・・ッ!」 シオンは驚いてその様子を見守るしかない。 「・・・主の命に背かず違わず・常にこの身をもって守り仕える事をここに誓おう。」 ライナの言葉が終わると同時に光が消え、髪の替わりに現れたのは、細かい細工がなされた銀の腕輪だった。 ライナはその銀環を自分の右腕に通し、 「これで終わり。」 シオンを見てそう言った。 「終わり・・・?」 呆気にとられていたシオンが聞き返すとライナは「そ。」とだけ答える。 そして、 「これで契約成立。つーことで、これからよろしく。シオン。」 眠そうな顔のまま笑った。 この日この時から、シオンとライナの本当の物語が始まる・・・・・・・・・・・・・・・かもしれない。 日記連載からの再録(?)です。 (05.03.25初up) |