邂逅は一瞬。
一瞬だけだったのが情けなくて、一瞬でも有ったのが嬉しかった。







君の為に僕は生きよう〜合わないタイミング〜







コンコン。
扉がノックされる音。

ちょっとショックを受けてうつむいていた俺は顔を上げ、『王』の表情を作る。

「何だ?」

声の向こうに声をかけると、兵士だろうか、少々固めの返事が帰ってくる。

「はっ!城からご連絡です!そろそろ通常業務に戻られるようにと。」
「・・・・・・・・・はぁ」

俺は小さくため息をこぼした。
しかし、やることはやらねばならない。
それが王である俺の義務だ。

「わかった。すぐに行こう。」

そう言って席を立つ。

「ライナ、今度こそきちんと話をしたいものだね。」
―――俺の元気のためにも。

そうして俺は部屋を後にした。





□■□





意識がゆっくりと浮上する。
さっきまで誰かがいたような気がするのだが、今は何の気配も感じない。

「あ゛ーーー。どこだここ?部屋?白ばっかり・・・病気になりそうだ。ってかハラ減った・・・」

ちょうどセリフにあわせたかのように、ぐぅという音が鳴る。

「おーい、誰かいませんかぁ?・・・・・・って、近くに人の気配は無いっつうの。一体どうすりゃ・・・」

ベッドサイドを見るとこれまた真っ白な台があり、そこには電話が置いてあった。

「これか?これで連絡しろと。」

そういって受話器をとる。
電話の横にあったメモを見ながら番号を押しつつ独り言は続く。

「あらかじめ電話の掛け方頭の中に入っててよかったぁ。
生まれたばかりだからって、このなりで一般常識無かったら結構痛いよな・・・」

番号をプッシュする指は細く白い。
押し終わった後、コール音が聞こえる中でがしがしと掻く頭髪は茶色がかった黒。
あくびをしつつ眠たげに細められる瞳の色も同色。ただしそこにはぼんやりと朱の五方星が浮かび上がっている。

目覚めたばかりの彼―――ライナ・リュートは五回目のコールで出た人物に向かって言い放った。

「え〜と、α-013です。おなかがすきました。何かください。」
『え、あの、ちょっと!?』

ブチ。
自分の言いたいことだけ言い終わったライナは電話を切ってしまう。

「俺が従うのはこの国の王だけだって設定したのはここの人だし・・・いいよな、あんな対応しても。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、ほら、腹が減ってると人間気が短くなるとか言うし。」

すぐに電話を切ったのは拙かったか?という思いが頭の中を駆け巡るが、やってしまったことは仕方が無い。
人間誰しも考えなしにやってしまうことはいくらでもある。

(まあ、俺は“ニンゲン”ではないけれど・・・)

とにかく連絡を入れたのだから誰か来るだろう。
検査のために来るだけかもしれないが、食べ物も持ってきてくれるかもしれないし。

今のところとりあえずは、

「眠い。」

・・・・・・睡魔に負けないことが重要だろうか。








日記連載からの再録(?)です。
シオンはヘタレ街道爆走中。

(05.03.25初up)