舞台は、魔法と共に科学技術も発達した世界。
その世界の国々の一つ、ローランド帝国から物語は始まる。







君の為に僕は生きよう〜序〜







魔法と科学技術をあわせ、ローランドは大国の一つとなっている。

現在、ローランド帝国を治めるのは若き英雄王、シオン・アスタール。
彼は類まれなる王としての才能を発揮し、国を発展させてきた。

そして、ここはそのローランドの力の中核でもある、ローランド中央研究所。
魔法と科学技術を合わせ、シオンが王となる前からずっと、国民の生活を豊かにするものから、他国との戦争のための武器・戦闘用魔法生物までもを作り出しているところである。

かの英雄王が現在歩いているのは、その研究所の無機質な、そして病的なまでに白い廊下。
その廊下の向かって右は白い壁、左はガラス張りになっており、こちらから下―――円形の空間の中央には人一人分の大きさの筒状のガラスケースがあり、その周りを科学者や魔法使い達がせわしなく動いている―――を見下ろすことができた。

何度も訪れたこの場所、何度も見たこの情景の中、ガラスを通して下の様子を見ながら、横と後ろにいるこの施設の責任者達に様子を聞く。

「彼の様子はどうだ?」

横にいた最高責任者がすぐさま口を開く。

「はい、≪眼≫については全て順調に進んでおります。このまま行けば、一週間後には目覚めるかと・・・」

それを聞いて、端的に答える。ただ、「そうか」と。
そして、独りつぶやく。

「早く目覚めろ・・・ライナ。俺はもう、待ちくたびれたぞ・・・」

シオンしか使わぬ彼の呼称でもって。

コポリ・・・と、その声に応えるように、筒状ガラスの中で気泡が生まれた。
ローランド帝国の技術の全てをつぎ込まれ作られた生物兵器・複写眼――ライナ・リュートが、その五方星の浮かぶ眼に世界を映すまで、あと少し・・・・・・








生物兵器なライナさんのお話。
日記連載からの再録(?)です。

(05.03.25初up)