※2011年1月インテ発行「青のレヴェイユ」(CP:臨也×帝人(罪歌憑き))(発行:D-パラドックス 結騎様)の設定をお借りした三次創作となります。「青のレヴェイユ」未読でもお楽しみいただける仕様……のはず。



「いつもそうだけど、やっぱり人間を斬る感触ってのは好きになれないなあ」
 刀を振って刀身に付着した液体を払いながら少年は独り言つ。
 抜き身の日本刀は、しかしどこにも鞘が見当たらない。そして得物の血糊を払った少年は包帯が巻かれた右手で柄を握ったまま切っ先を―――
「え? あぁはいはい。斬るじゃなくて愛する、だったね」
 少年が動きを止める。そして誰も居ないはずの空間で、さもすぐ近くに話し相手が居るかのように苦笑を浮かべてそう言った。
「それにしても罪歌って思ってたよりよく喋るんだね。園原さんが普通にしてたからもっと静かなのか、反対によく喋っても僕には関係のない言葉の羅列なのか……そんな感じだと予想してたんだけど」
 そこまで告げ、少年は口を噤む。外ではない、彼の内側に巣くう存在―――罪歌の声に耳を傾けるために。
「へぇ。園原さんの時は殆どずっと『愛してる』って言ってたんだ。ま、全人類への愛が溢れに溢れてる君らしいと言えば君らしいかな。っていうか、じゃあどうして僕にはこんなに饒舌なの?」
 ふんふん、と罪歌の声を聞きながら少年はストップしていた動作を再開する。
 即ち、己の左手に日本刀の切っ先を潜り込ませたのだ。
 しかし少年は別段痛がる様子も見せず、日本刀は刀身どころか最後には柄の部分まできれいに細い体内へと飲み込まれていった。
「あははっ。そうだね。僕は君にとても協力的だ。だって全人類を君に捧げるだけで、僕はあの人を手に入れる事ができるんだもの」
 日本刀―――たった今人間を『愛した』ばかりの妖刀・罪歌を己の身体に仕舞い、少年はクリスマスや誕生日を目前に控えた幼い子供のように無邪気な笑みを浮かべる。
「罪歌の『子』が満ちた世界で最後に僕が君を手放して、そうして折原臨也に愛してもらえる≠フは竜ヶ峰帝人ただ一人になるんだ」

「嗚呼、楽しみだなあ」