過去にP-BBSで書いた短文です。ジャンル混合。









ただの妄想さ、と男は笑った。

そう。
例えば君というものを全て奪い取って、鎖で雁字搦めにすることが出来たなら。
僕はその冷たい鉄の塊にキスを送ろう。何度も何度も熱を分け与えるように。
そうして僕は微笑むのだ。
「   」
君の、名を呼んで。










その言葉より、泣きそうな顔に泣きたくなった。

「お前、俺を裏切った罪は重いぞ。」

 なんてない休日。
 空は蒼く、綿雲が幾つか浮かんでいる。
 まさに平和そのもの。
 けれど隣から聞こえてきた声は酷く冷たい温度をしていた。

 (君の声に足を止めてしまったのは、たぶん、僕に自覚があったからだ。)










「そうだ。・・・三年後、俺はお前に会いに行くよ。」と観察者は言った。

「・・・おめでとう、ハルヒ。」
 口から零れ落ちた音はただ空中に霧散する。
 しかし先程感じた言い表し難い感覚はまだ確かにこの胸に残っていて、俺は部屋に誰も居ないのをいいことにもう一度祝いの言葉を呟くと口元を緩めて笑みを形作った。
 今日、この世界に新たな神が生れ落ちた。
 それは小さな女の子。
 長い髪が美しく、その性格は快活で、しかしこの世の不条理に気付いてしまった不幸なまでに敏い子供。
「お前はどんな面白いことを引き起こしてくれるんだろうな。」










繰り返す世界の中で。

「知っていますか?
 神殺しをした者は、次の神になるそうですよ。」

 そう言って、先刻目の前から一人の少女の存在を消した男は如才ない笑みを浮かべた。


(僕は嘗て神をこの手で殺したんです。)
(何度も何度も神に拒絶され否定され、葬られてきたこの僕が。)
(そして僕は、今、この世界で。)










リセットボタンを押すのは誰か。

 嫌なら死ねばいい、と彼は言った。死んで逃げることは可能だと。それで「僕」は救われるのだと。
 笑いながら、泣きながら。
 僕が頷いて窓から飛び降りるのを静かに見守っていた。
「また、五月に。」
 彼が呟いたその言葉の意味を僕は知らない。なんだろうと考える前に、僕は。
 暗転。
□■□
 どうやらあいつは自分の立場に耐え切れなかったらしい。そうして、自ら命を絶つのはもう何度目になるのだろうか。
 何度も何度も…。最初のうちは俺だってあいつを止めようと必死だった。でも、もう無駄だと解ってしまったから。
 だから俺はあいつを止めない。そしてまた五月を迎え、あいつと出会える時を待つ。今度もあいつの背中を押すために。
(諦めたんだ。何もかも。ただ俺に出来ることはこれしかないんだ、って知ったんだ。)












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