嫌なら死ねばいい、と彼は言った。死んで逃げることは可能だと。それで「僕」は救われるのだと。
笑いながら、泣きながら。
僕が頷いて窓から飛び降りるのを静かに見守っていた。
「また、五月に。」
彼が呟いたその言葉の意味を僕は知らない。なんだろうと考える前に、僕は。
暗転。
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どうやらあいつは自分の立場に耐え切れなかったらしい。そうして、自ら命を絶つのはもう何度目になるのだろうか。
何度も何度も…。最初のうちは俺だってあいつを止めようと必死だった。でも、もう無駄だと解ってしまったから。
だから俺はあいつを止めない。そしてまた五月を迎え、あいつと出会える時を待つ。今度もあいつの背中を押すために。
(諦めたんだ。何もかも。ただ俺に出来ることはこれしかないんだ、って知ったんだ。)
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