「いち、ご・・・?」
白い白い白い。 どこまでも白い世界に掠れた声が落ちた。 世界に溶け込んでいきそうな白い着物を纏った青年が同じ年恰好の誰かを腕に抱いている。 元は無人のビルが立っていたこの世界は、突如として全てを崩壊させた。 残ったのはただの白。 そして、白い着物を纏う彼。 その腕に抱かれた青年はまるで生気の感じられぬ白い肌をし、力なく目を閉じるのみ。 オレンジ色の短髪が白い肌に対照的で酷く脆い印象を与えていた。 これほどまでに明るい色が。そう、余計に。 白い世界の白い青年はもう一度「いちご」と呟いた。 腕に抱いたもう一人の頬を撫で、親指で目尻をくすぐる。 しかし何も変わらずに。 いちご、と呼ぶ声は白い世界に溶けて消えた。 声は。 解けて。 溶けて。 融けて。 消える。 「おい、返事しろよ・・・・・・相棒・・・!」 泣きそうな。 抱く腕に力を込め、抱きしめているのに、縋りつく。 「相棒相棒相棒・・・なぁっ!聞いてんのかよ、このバカ一護っ!」 脆く壊れそうな躯を―――否、既に『壊れてしまった』躯を力いっぱい抱きしめた。 けれど、痛いと言う声も無く。 白い世界にそれは霧散し、消えて。 流した事の無い水だって目から溢れ出て来て。 でも。 「一護ぉ・・・っ!」 どれだけ声を張り上げても、どれだけ泣き叫んでも。 この声は届かず、世界に溶けて消えていく。 たった一人に伝われば良いのに、たった一人が聞いてくれれば良いのに、たった一人の返事が欲しいだけなのに。 どうして。 どうしてこんなにも、こんなにも。 君がいない世界は酷く酷く冷たくて。 |