そして彼方で見る夢は
□side-Kisuke Urahara□




















「・・・・・・はら。」



己を気安く呼ぶ声。



「アンタさ。・・・・・・・・・だよな。」



なぜか心をかき乱す響き。



「やって・・ろ・・・・じゃ・・・・・・か。」



強い光を帯びた琥珀色。



「・・・き。アンタが・・・き。」



そして、眩しいくらい鮮やかな萱草色の髪。



























「・・・・・・・・・夢?」



もう随分と長い間見なくなっていた夢。

それを久々に見て、浦原喜助は天井を見つめながらポツリと呟いた。





内容は・・・よく覚えていない。

若い、おそらくは少年のものであろう声と琥珀色の何か。

それから萱草色の髪。



その三つだけは何とか思い出せるのだが、他は全くと言って良いほど駄目だった。



それでも。

それだけでも。



より深く思い出そうとすると、いや実の所、少し意識するだけで、

意識は高揚し、胸は締めつけられるような痛みを訴えてきた。













「可笑しなことだ。」



と、今の自分の状況を一笑に付す。

鬼と呼ばれる、情の一欠けらすら持ちえぬ自分が、一体何をやっているのやら。

戸惑いを通り越して笑がこみ上げてくる。



嗚呼、可笑しい。

今の自分は、まるで―――





「恋、してるみたいじゃないですか。」



あの萱草色の人物に。











自分で言って、そして苦笑。



らしくない。

らしくないが、そんなに悪い気もしない。











「今日は何かいいことありそうですねぇ。」





占いの類は信じていないのだが何となくそう思い、浦原は障子を開けて部屋を出て行った。























その日、どこか機嫌のいい上司を見やって、

何事かと嫌な汗を流した部下が居たとか居なかったとか。






















BACK