■BLEACH/霊王一護で浦(→)一
「俺を殺したいんだってさ。」 くすり、と『彼』が笑う。 目を眇めて遠くへ視線を飛ばす彼に、普段感じる真っ直ぐな子供らしさは感じられない。 だがこれも正真正銘彼の一部だ、と思いながら浦原は「そうみたいっスね。」と相槌を打つ。 誰が、とは問わない。 そんなもの、彼の正体と今の状況を考えればすぐに解ることだ。 山本総隊長を通して『尸魂界の裏切り者』であるあの男が何を目的にどんな動きをしているのか、それを知らされたのは今日の昼頃。 それから時間は経ち、今は夜。 ストレス発散に付き合ってくれと浦原商店(の地下勉強部屋)を訪れ、その後「七時過ぎちまったから今日はここで食ってって良いか?」と訊いて来た彼に浦原もテッサイも(ここは重要だ。何せ衣食住の殆どがテッサイによるものなのだから。そしてテッサイにも了承を求める辺り、彼が浦原達のことをよく理解しているということでもある。)二つ返事で頷いた。 夕食が出来上がるまでの間、彼は浦原の部屋に招き入れられ、十六という年齢に見合わず静謐を保って月を見上げている。 そして先刻の呟き。 浦原は微風に揺れるオレンジ色の髪を見つめながら再び口を開いた。 「あの男も無駄なことを考えてますねぇ・・・」 「まったくだ。」 尸魂界の裏切り者はどうやら王鍵を作ろうとしているらしい。 それはつまり、霊王に会う(最悪、殺害する)ということを示している。 王鍵を作るには相当の対価が要るのだが―――。 「ンな犠牲なんて払わなくても『俺』は此処にいるっての。」 月を見上げたまま彼は笑う。 否、嗤う。 「なぁ、いつ正体をバラしてやろうか。」 「それはアナタのお好きな時に。全ては一護サン・・・霊王の思うがままっスよ。」 ■BLEACH/白黒・コン一前提白一護+コン 「・・・あいつの調子、最近どうなんだよ。」 「ぐっすりお休み中さ。起きる気配なんて微塵も無ェ。」 そう答え、くつり、とオレンジ色の髪の少年が喉を鳴らす。 自室のベッドの上に座り、寝るでもなく目を閉じていたその彼を見上げ、ライオンのヌイグルミ―――コンは「そうかよ。」と呟いた。 この状態になってもうどれくらいの日数が過ぎたのだろう。 一ヶ月なんてものでは納まらない。 もっとだ。 もっと長い間、自分は『あいつ』を見ていない。 ぽすん、と床に腰を下ろしてコンは視線を下げた。 この事実に気付いているのは自分だけ。 ルキアも、『あいつ』の父親や妹達も、友人も、怪しげな商店の店主も、誰も彼も気付いていないのだ。 「・・・おいコン、」 「なんだよ。」 低い呼びかけにぼそぼそとした声で応えると、僅かな間が空いてから視界に人間の足が映った。 そのまま視線を上にやれば、勿論のことオレンジ色の髪の少年が目に留まる。 しかしコンは知っていた。 これが『あいつ』ではないことを。 眉間の皺も記憶の通り再現しながら、しかしやはりどこか違う表情を浮かべてそいつは言う。 「お前がンなシケたツラしたって何も変わりゃしねーんだよ。あいつはボロボロになって眠っちまった。だからその傷が癒えるまで俺がオモテに出る。それだけだろ。」 「わかってるっての・・・。でも遣る瀬無ェんだよ。」 コンは再び視線を下げ、床を見つめる。 そしてなるべく早く『あいつ』が目覚めてくれるよう祈るのだ。 そうしなければ『あいつ』の心と身体をボロボロにしたこの世界が憎くて憎くてたまらなくなってしまいそうだったから。 ■BLEACH/一護(破面側)と一心、捏造設定。 「なぁ親父、俺もう行くわ。」 「本当に考えを変えちゃくれねぇのか、一護。」 「ああ。」 窓際に立ち、弱い月の光を受けながら。 黒い死覇装を纏った一護は頷く。 背を向けているため背後にいる父親の表情を見ることは叶わないが、ひどく沈んでいることはその声だけで判った。 彼にそんな顔をさせてしまったことは素直に悲しい。 だが。 「俺は決めたんだ。おふくろを見殺しにした尸魂界に復讐してやるって。そのためなら藍染の手を取ることだって厭わない。」 「一護・・・」 「ごめん。でも俺、知っちまったから。おふくろのことを知って尚、今まで通りにするなんて出来ねぇよ。俺はそれほど博愛主義じゃない。」 囁きに似た声で告げ、一護は見納めとばかりに背後を振り返る。 彼の父親は感情の波に耐えるように眉根を寄せ、口元を歪ませていた。 きっと一護自身も似たような顔になっているのだろう。 「っ、今までありがとう。それじゃあ、元気で。」 一心の返答を聞く前に一護は正面へと向き直る。 そして窓の向こうの闇夜へと姿を消した。 |