BLEACH(浦一)





「好き。」

「愛してる。」



どれだけ言っても、キミはアタシと同じ言葉を返してくれない。

注意深く見なくともキミがアタシを好いてくれているのはわかってる。

言えば「うん。俺も。」なんて可愛らしく目元を朱に染めるキミ。

でもやっぱりそれだけじゃァ物足りない。


肯定の言葉は嬉しいけれど。

同意の言葉は嬉しいけれど。


それだけじゃなくて。


もっと確かな

もっと明らかな

言葉・・・が、欲しい。


なんて貪欲。

なんて強欲。


気持ちが其処にあるというだけでは最早満足できないのだ。


もっと単純でわかりやすいものを・・・

もっと安易で絶対のものを・・・


どうかください。

どうかアタシに。


その口から紡ぎだされる刹那の台詞を。







「黒崎サン。・・・言っては、くれませんか?」

「そんなに言って欲しいのか?」

「ええ!もちろんです!」

言い切った大人に子供は苦笑。

そして―――

「・・・・・・・・・一回だけだぞ。」

顔を真っ赤にして子供が大人の耳に口を近づけた。



「・・・・・・浦原、愛してる。・・・・・・」




















BLEACH(浦原×スレ一護)





気持ちなんかいらない。


俺はアンタの能力が欲しいだけ。

だから、気持ちなんかいらないんだよ。


「好き。」なんて言わないで。

「愛してる。」なんて囁かないで。


俺は好きじゃないんだ。

俺は愛しちゃいないんだ。


お願いだから、そんなに優しく微笑まないで。

「それでもいい。」なんて許さないで。


俺はアンタを何とも思ってねぇんだぞ?

アンタに応えてなんかやれねぇんだぞ?



ホント頼むよ。



これ以上優しくしないでくれ。

これ以上甘やかさないでくれ。


アンタに言葉を告げられるたび、

アンタに抱きしめられるたび、

どうにもこうにも


胸が、痛いんだ・・・







「浦原、頼むよ。」

「駄目ですよ。それだけは譲れない。」




優しく優しく、男が笑った。




















BLEACH(夜一×一護)





オレンジ色なら良かったのに・・・

自分の毛並みが彼と同じ色に染まっていれば・・・


そう、思っていた。


でもそれは過去のこと。

今はこの色で十分だ。

いや、この色で・・・黒でないと駄目なのだ。







「夜一さんの毛ってスッゲー綺麗だよな。・・・ホント綺麗。この黒。」



さらさら。

するする。



優しく撫でるその手に心までが気持ちよくて、

言われたことが一瞬理解できなかった。



「・・・そうか?」



やっとの思いでそれだけ返せば「うん」と、なんとも可愛らしい返事。



さらさら。

するする。



撫で続ける手に「黒でよかった」と思う。

この子供に誉めてもらえる色ならば、それが一番いいのだ。


赤が綺麗だといえば赤色が一番良くて、

白が綺麗だといえば白色が一番良くて、

そしてこの黒を綺麗だと言ってくれるならば

どんなものより、この色を誇りに思う。



―――まぁ、この子供の色彩は別格なのだけれど。



「お主の橙色ほどではないがな、一護。」

「いやいや。夜一さんの方が綺麗だって。絶対。」





眉間にシワを寄せたまま、綺麗な子供が綺麗に笑った。




















BLEACH(白黒)





誰にもやらない。

これは俺のもの。


身体も魂も全部ぜーんぶ、俺のもの。


オレンジ色の髪、茶色い瞳、しかめられた眉、

存外に綺麗な肌、細長くて筋張った四肢。

目を焼きそうなくらいに輝く霊圧、

強くて弱くてやっぱり強い精神、ときに雨を呼ぶ心。



俺だけを見て・なんて甘ったれたことは言わない。


無理矢理・・・

そう、無理矢理にでも俺だけを見させる。


その瞳に映るのは、その心に思うのは

俺一人だけで十分なんだ。



誰かのために死なないで・なんて事も言わない。


誰が他人のために死なせるか。

こいつの死さえ俺が決める。

時も理由もその場所も。



今までもこれからも、もちろん肉体が滅びた後だって、

これは俺のものなんだ。







「そういうことだ。わかったか、相棒?」

「ごちゃごちゃウルセーんだよ、テメーは。」



縦横デタラメな世界で、オレンジ色の子供が唸った。




















BLEACH(ルキ一)





一体何なのだ。この義骸は。

もしや粗悪品か?



あの日、死神の力を失った己に与えられた仮初の体。


元々胡散臭い人物から買ったものだが、

最近あまりの不調っぷりにそんなことを考えるようになった。


体の動きが頭に、ひいては魂に追いつかない。

所々でぎこちない動きを見せる体に苛立ちは募るばかり。

今だって現在進行形で足に違和感を覚えていた。

共に歩くクラスメイト兼同居人の少年にそれを悟られまいと

そして躓いて転んだりしないようにと常より意識して歩を進める。


ああ、腹が立つ。

この体に。

そして何より、これを私に売りつけた浦原喜助に。

ついでに言うと内魄固定剤を切らしている己と

そうせざるを得ない財政状況にも。







考え事をしていたせいか、



カクン



と、何もないところで躓いた。


「わっ・・・」

地面と正面衝突か!?なんて目を瞑った。

しかしいっこうにやって来ない痛み。

代わりに感じたのは腰に回された腕の感触で・・・



「セーフ。大丈夫か?ルキア。」

「う、うむ。助かった。すまぬな。」

「どういたしまして。」



そう言ってするりと外される一護の腕。

そして何事もなかったかのように歩き出す。



灰色の制服に包まれた背中を見ながら、

今この時だけは

こんな義骸を持ってきた浦原に感謝してもかまわない。



黒髪の少女が微かに顔をほころばせ、そう思った。






















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