月曜日。いつもの如くまた昇る朝日が一週間の始まりを告げ、俺は憎さ余って愛しさ百倍にでもなればいいのにと思ってしまう程の坂道を登り学校に辿り着いた。普段より坂道に対するイライラ度が大きいように感じるのは今日が月曜日だからなのか、それとも一昨日・昨日と連続決行されたSOS団の活動による疲れが原因なのかは、あえて言及しないことにしておく。
 朝のホームルームが始まるまでの時間、ハルヒはまた何処かに行ってしまっているようで机には鞄だけが取り残されていた。俺より先に来ていた知り合いは勿論ハルヒだけでなく、自分の机に鞄を下ろしたのと同時にこちらに近寄って来たのは谷口と国木田だった。
「おっすキョン!」
「おはよう、キョン。」
「おう。」
 つうか国木田はいつも通りだが、谷口、お前また何かあったのか?少々気持ち悪いくらいにテンションが高いぞ。
「しかたないよキョン。谷口は谷口でしかないんだから。」
 そう言って苦笑する国木田の背後に薄らと黒いものが見えたのは何故だろう。ハルヒの影響か。うん、そうに違いない。だといいな。その方がマシだ。
 俺がやや意識的に己の先刻見た光景を誤魔化している間にも、谷口は国木田の台詞を気にする様子も無く上機嫌のままニヤついている。この様子から察するに、どうやら俺に何か話したくてたまらない話題があるらしい。とすれば、先に来ていた国木田はその話を聞かされてげんなりしているということか。
 これから自分もこの国木田のようになるのだろうかと吐きたい溜息を我慢している俺に、谷口はついに堪え切れないとばかりにB5サイズの紙束を差し出した。
 何だこれは。
「まあ読め。とにかく読め。そして俺とこの言い知れぬ感情の渦を体験しろ。簡単に言うと、萌えろ。」
 ・・・・・・。なんだかこう、その一言だけでどっと疲れたような気がする。国木田、お前はこの台詞による朝一の疲労感に加えてその紙の束に書かれた内容を親切にも全て読んでやったんだな。同情するよ。そして俺もこれから同じ物を読まされる訳だな。よし国木田、俺にも同情してくれ。
「なーにぶつぶつ言ってんだよ。ほら、涼宮がいねえうちに読めってば。とりあえず最新一週間分な。」
 そう言って無理やり押し付けられた紙束の一部――コピー用紙七枚分である――に俺が唖然としていると、再度谷口が急かしてくる。と言うか、どうしてハルヒがいないうちに読む必要があるんだ。
「それはたぶん内容の所為だろうね。その文章、ブログのやつらしいんだけど、実は女の子が書いた日記なんだよ。」
 一人称は「僕」なんだけどね、と続けた国木田の台詞は残念ながらあまり俺の頭には入って来なかった。こっちはただひたすら谷口の新たなる(?)異常性を見せ付けられたような気分で、空の青さとはまた別の真っ青感を味わっている最中である。谷口、お前が彼女を作りたくても気持ちの割にはその機会に殆ど恵まれないことを知っているが、何もそこに辿り着かなくても良かったんじゃないか・・・?
「まあそう言わずに、友達のよしみで読んであげなよ。と言うか、僕も読んだんだからキョンも読んでね?」
「・・・は、はい。」
 今、国木田の後ろに修羅が見えた。



□■□



○月×日 月曜日

 今日もまた、新しい一週間が始まりました。「また一週間学校か・・・」とか「仕事か・・・」なんてげんなりしている人もいるかも知れませんが、僕はこの始まりの日が嬉しくて仕方ありません。だって学校は彼と会える大切な時間を僕に与えてくれるのですから。放課後、彼に会うのが楽しみで僕は学校に通っているのです。・・・不謹慎でしょうか?
 午前午後といつも通りに授業を終えて僕の一番楽しい時間がやって来ました。僕の通っている学校は教室と部室のある建物が別なので、僕はそこまでの道のりを急いでいるようには見えないように、でも内心早く辿り着きたくてたまらない気持ちを抱えながら歩くのです。もちろん今日も。今日はもう、彼は部室に来ているのでしょうか。もしかして同じ部活に所属するAさんの着替えのためにドアの前で立っているかもしれませんね。その時は僕も一緒に待たせてもらいましょう。彼と二人きりでお話しするチャンスです。
 そう考えながら部室に行くと、残念ながら彼はドアの前に立っていませんでした。少しションボリです。しかしそんなことでめげていてはダメです。このドアを開いた時に彼が僕を見てくれるかもしれません。目が合えば最高です。そしてもし彼がまだ来ていなくても今度は僕が彼の来室を笑顔で迎えればいいのです。
 モチベーションを上げてノック。中から聞こえたのは「はい」という固めの声。いつも聞こえるAさんの女性らしい「はぁい」という声ではありません。心臓が高鳴ります。ああもう。この声を聞くだけで僕は顔が緩んでしまいそうで大変になってしまうのです。しかし彼にそんな緩んだ表情は見せられません。一瞬で完璧な笑顔を形成し、ドアノブを回します。こんにちは、と挨拶をした視線の先にはやはり彼!なんだお前か、という台詞には胸にツキリと痛みが走りますが、そんな素っ気無さも彼の魅力です。
 僕は笑顔を保ったままいつもの席につきました。部室を軽く見渡すと、彼以外の部員はどこにもいません。いつも、いつでも椅子に座っているNさんすら。どうしたのでしょうか。
 と、そう思っていた僕に彼の方から話し掛けてきてくれました。曰く、僕達以外の部員は部長の思い付きで出かけてしまったとのことです。これは神様がくれたチャンスですね!月曜日からなんて幸先のいいことなのでしょう。彼と二人きりになれるなんて。
 僕はウキウキを隠せないまま部室の棚に置いているボードゲームの一つを取り出し、彼を誘います。返事はOK。暇だから、と理由付けされてしまいましたが、暇でも構ってくれないことが多々ある彼からのOKに僕は頬が緩むのを抑え切れません。しかしここは我慢です。だって先日、あまりにも表情が崩れてしまった僕に対し、彼は気色悪いと告げたのですから。・・・彼から暴言を吐かれるのは悲しいことですが、それよりもっと嫌なのは彼が僕の所為で気持ち悪さを味わってしまったということです。彼の暴言は冗談半分(もしくは挨拶半分?)なのでしょうが、それは考え方を変えると幾らかは気持ち悪さを味わっているということでもあります。だから僕は精一杯表情筋に頑張ってもらってまた定位置につきました。
 僕達は一緒にゲームをして、他の部員達が帰って来たのに合わせて中断させました。続きは明日、ですね。明日の約束を取り付けることが出来て本当に嬉しい。
 今日も部員みんなで帰宅しました。この時間も僕にとってはとても大切なものです。だって部員全員で帰宅するとは言っても、彼の隣に並ぶのは僕だけなのですから!今日も他の部員とは少し離れて彼と二人、夕陽の中を歩いて帰りました。二人だけの秘密にしたい話題もある時は顔を近づけて話すことも。しかしながら今日はまさしく「日常」で、そうすべき話題は見つかりませんでした・・・。明日に期待、ですかね。



@ @ @



○月△日 火曜日

 最悪です!!今日も放課後の部活を楽しみにして授業をこなしてきたのに、放課後になるのと同時にアルバイトの連絡が入ってきました。こういう突然のアルバイトはよほどの理由がないと断れません。このブログを以前から読んでくださっている方は既にご存知でしょうが、僕のアルバイトは慈善活動的な部分が大きく、大切なことなのです。とても大変なことですが、それなりに誇りだってあります。・・・まあ、彼のためになっていると考えられるからこそ頑張れるというのが本音なんですけどね。
 ですが、やはり彼と一緒にいられる時間が減ってしまうのには胸を引き裂かれる思いです。僕は泣く泣く了承し、部室には一瞬だけ顔を出して本日は部活に参加出来ない旨を伝え、学校を去りました。部室には彼がまだ来ていなかったことを追記しておきます。顔すら見ることが出来ないなんて。
 昨日は神様に感謝したい気持ちでいっぱいだったのですが、今日は全くの逆ですね。せっかく今日は彼と昨日のゲームの続きをするはずだったのに・・・。彼は明日でもOKしてくれるでしょうか。
 今日のアルバイトで僕は少しばかり乱暴な仕事の仕方をしてしまいました。上司には「頑張ってますね」と褒めていただきましたが、微妙な心地です。これが、怒りをパワーにするということなんでしょうか。
 そんなパワーなんていらないから、彼に会わせて欲しい。彼に会いたい。声が聞きたい。電話は・・・ダメでしょうね。だって理由が無い。



@ @ @



○月□日 水曜日

 彼とゲームの続きをすることが出来ました!しかも彼が他の人には聞こえないように「昨日のバイト、大丈夫だったか?久々だったし、怪我とかしてねえか?」と訊いてきてくれたのです!!今日の彼のこの台詞を僕は一生忘れません。ああもう。幸せすぎて言葉にならないのですが、本当にどうしましょう。
 と思っているうちに表情が崩れていたらしく、「大丈夫です」と答えたのに、彼が吐き出したのはそれに対する台詞ではなく、「顔が近いぞお前。つうか何だその表情は。気持ち悪い」という注意兼感想。またやってしまいました・・・。思わず床に手を付いて項垂れたい気分です。このように→orz
 まあ、そんなこんなで落ち込みもしましたが、何はともあれいつも通り彼とゲームをすることが出来て幸せでした。結果は僕の惨敗でしたが、僕にとってこのゲームの意味は勝つことなどではなく相手が彼であるという一点のみですから、然程重要なことではありません。ただしあまり負け過ぎると彼が面白くないと感想を零してしまうので、目下の目標はもう少しゲームの腕を上げることですね。手を抜いているんじゃないかと疑われる時もありますが、僕はいつでも本気です。・・・意識の大半は彼に持って行かれてる状況ですけどね。
 今日のボードゲームはキリのいい所で終了したので、また明日に持ち越すという事態にはなりませんでした。明日は何をしましょうか。

("彼"とやらの台詞に心当たりがあるような・・・?)

@ @ @



○月☆日 木曜日

 今日は彼と賭けチェスをしました。負けた方が勝った方の言うことを聞く、というものです。ただし無理なことや非人道的なことは無しという、当たり前の条件付きですけどね。提案したのは僕ですが、それを了承した彼も勝った時はジュースの一杯でも奢らせようとか、そういうつもりだったのでしょう。僕も最初なんとなくで言ってみただけだったので、特に何か思うことがあったわけではありません。もし万が一僕が勝ったとしたら、去年の部活の夏合宿の時にバツゲームでやった"振り向いて「大好き」"というのをやっていただくつもりではありましたけどね。
 ところがです。その勝負は僕が勝ってしまいました。驚き唖然としつつも、やはりこれはチャンスです。僕は喜々として最初から決めていた願いを口にしようとしました。しかし、タイミング悪く振動する携帯電話。アルバイトです。・・・ええと、これは一体何の死亡フラグなんでしょうか。気付いた彼も僕のアルバイトの内容を知っているので思わず頬を引き攣らせているようでした。
 まあ、今こんな風に日記を書いているように、思ったほど大変なものではなかったんですけどね。いつも通りのものでした。いやしかし、タイミングが悪すぎます。何年も同じバイトをしている僕ですが、今回ばかりは妙な汗が背中を伝いました。
 帰宅後、僕は一応彼に連絡を入れておくことにしました。随分気を使わせてしまったみたいですから。嫌な汗は流しましたが、こんな風に家に帰ってからも彼の声を聞けると言うのはちょっとしたハッピーですね。それと賭けチェスのことですが、明日その願いをきいてくれるそうです。やったv

(・・・気のせいだ。気のせいに違いない。気のせいにさせてくれ。)

@ @ @



○月■日 金曜日

 思わず鼻血を出すかと。ええ、本気で思いましたとも。
 今日は昨日チェスで勝った僕の「命令」ということで、彼に"振り向いて「大好き」"をやっていただきました。部員全員の前で。本当は僕一人に対してやって欲しかったのですが、それでは色々と、ねえ?
 部長さん曰く彼の羞恥プレイということで、全員がにこにこしたり無表情だったり慌てていたりと様々な表情で彼の行動を見守りました。実は部長も彼のことを少なからず思っているようなので、口ではそんなことを言いつつも僕と同じくらいドキドキしていたに違いありません。
 彼が「大好き」と言ってくれた瞬間、僕はもうこのまま昇天出来るのではないかという心地でした。無表情がデフォルトのNさんですら僕に判るくらい表情を緩めていたような気がします。やはりNさんも彼のことが好きだったようですね。まあ、Nさんの場合、それが恋愛としての「好き」なのか、父や兄といった家族に対する「好き」なのかが微妙なところですが。彼もNさんにはストレートな好意を示しやすいので(それが家族愛に属するものだと信じてます・・・!)後者であることを願うばかりです。
 お父さんが彼、その妻が僕、僕達の子供がNさん、とか素敵じゃありません?あ、調子に乗りすぎでしょうか。今日は彼の"振り向いて「大好き」"以来、テンションが異常なんですよね。それは部員全員に言えたことですけど。明日には治っているでしょうか。

(手に力が入り過ぎて紙が歪む。谷口が変な顔をした。)

@ @ @



○月▽日 土曜日

 今日は毎週恒例の市内探索でした。やはりいつも通り特別な何かが見つかることもなく、そして僕と彼が同じグループになれることもなく終了です。確率的にはもうそろそろ僕と彼が二人きりで組んでもいいはずなんですけどねえ。何か見えない力に邪魔でもされているのでしょうか。でも障害があるからこそ恋は燃え上がるというもの!僕は負けません。例え神が相手でも。それに僕は元々とてつもなく大きな障害を覚悟の上で彼を好きになったのですから。
 そうそう。帰り際、部長さんは明日も皆で集まると宣言なさいました。どうやら昨日、彼女のクラスでは少し多めの宿題が出たらしく、彼女は既にそれを終わらせてしまったのですが彼女と同じクラスの彼がまだ手もつけていない状態だったため、彼の部屋に集まってそれを手伝うということになったのです。夏休みの宿題をわいわい騒ぎながら消化したあの日を思い出しますね。
 と言うことで、明日は彼の家にお邪魔することになりました。心中でガッツポーズをしたのは当然です。彼の苦手な数学の問題もあるそうですから、理数系の僕としては良い所を見せるチャンスですね。
 明日に備えて今日は早く寝ることにしましょう。それでは、おやすみなさい。

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)

@ @ @



○月★日 日曜日

 先に宿題を終わらせていた部長さんや何でもそつなくこなせるNさんという強敵がいる中、ちょっとしたミスで怒鳴ることもいきなり解答に飛ぶこともなく最初から懇切丁寧に教えられる僕が、彼の家庭教師役(数学版)の座を得ることが出来ました!頭の中ではファンファーレと紙吹雪です。しかも彼からのご指名で。ええ、もう。何と言いましょうか。勝った、と。その場で万歳しなかった僕はすごいと思いますよ。
 しかも最後には彼から(憮然とした表情ながらも)「ありがとな」の一言が。生きてて良かった!本当に今まで頑張ってきて良かった!
 その後、彼は部長さんから現国、Nさんから古典を習い、合間にAさんが淹れてくださった美味しいお茶を飲んで見事宿題を終わらせることが出来ました。余った時間にテレビゲームで対戦もしましたよ。
 夕食は彼のお母様のご好意に甘えてご馳走していただくことになりました。いつもの倍以上の料理を作っていただくことに大変申し訳ない気もしましたが、ガヤガヤ言いながらその手伝いをする僕達を眺めるお母様の視線がとても優しそうなものだったので良かったと思います。僕は料理があまり得意ではなかったので、途中から彼と一緒に彼の妹さんの相手をさせていただくことになりました。
 彼の妹さんは彼の包容力が大きすぎる所為か(もしくは甘やかせ上手な所為で)年齢の割には少し幼いような感じがします。けれどその純粋な心でぶつかって来てくれるのはとても暖かな気持ちになるものですね。原因であるはずの彼本人は妹さんの幼さに多少不安を感じているようですが。でも可愛いと思っているのは確かでしょう。
 これでまた一週間が終わってしまいました。  また来週も楽しく過ごせますように。



□■□



 一週間分の日記を読み終え、俺はゆらりと立ち上がった。もうすぐ授業?関係ないね。俺にはやらねばなんことがある。それに今気付いたのだ。
「キョン?どこに行くの?」
 ちょっと九組へ。用事があったんでな。
「でももうホームルームが・・・」
 適当な理由を頼む。遅くても二時間目までには帰って来るから。
 心配そうに見上げてくる国木田に力無い笑みを向け、俺は教室を出る。谷口は幽鬼のような俺の様子に恐怖して口を利けなかったようだ。別に構わん。これを教えてくれたあいつには感謝してもいいかな、と思えなくもないのだが、だからってわざわざその恐怖を取り去ってやる義理などない。国木田なんて俺の様子にはお構いなしに普通の会話が出来てるしな。いっそそれを見習え、谷口。
 六組の教室を出て数メートル歩いた時点で俺は我慢出来ずに走り出した。廊下を走るな、なんて壁のポスターも今の俺には何の効力も無い。幽鬼から般若へと変化し、俺は全力疾走で九組へ向かった。このブログ日記の作者を叩きのめすために!
 ふざけんじゃねーぞあの野郎ぉぉぉおおおおお!!!!



□■□



○月▲日 月曜日

 今日はなんと、朝から彼の顔を見ることが出来ました!ホームルームが始まる直前です。彼はクラスの自分の席に座っていた僕をドアの所で呼びつけ、そのまま屋上に通じる人気の無い階段の踊り場へ・・・。彼の右手に握られた左手の手首が今も熱を持っているようです。
 連れて来られたその場所でチャイムがなるのを聞きながら、僕は彼の言葉を待ちました。チャイムが鳴り終わってしばらく後、彼の低い声で僕の名前が呼ばれます。そして告げられたのは―――・・・。
 僕がこの日記を書いていることが彼にバレてしまったのです。恥ずかしい!僕の赤裸々な彼への想いが本人に伝わってしまったのです。やはり重要なところをぼかしていても彼には判ってしまったのですね。嬉しくて、でもやっぱり恥ずかしい。
 彼は僕に言いました。この日記を消してくれと。止めろと。でもみなさんが御覧の通り、僕はまだ日記を書いています。彼に言われたのに。それは何故かって?ふふ、本当は秘密にしたいんですけど、ずっと読んでくださっている方や応援してくださっている方に感謝の気持ちを込めて教えちゃいますね。
 止めろと言ったその時の彼、耳まで真っ赤だったんです!怒りじゃなくて、照れていたんですよ。あの強引さは恥ずかしさ余って怒り百倍ってことだったんです。
 僕の想いを知った彼は、彼の可愛さにやられた僕がその身体に抱きついても引き剥がすということをしませんでした。これってただ照れていただけじゃなくて、僕の気持ちを受け入れてくれたってことですよね?そして僕達は埃っぽいその場所で初めてキスをしました。まるで映画のように。彼からではなく僕から、でしたけどね。彼からのキスはまた次の機会に取っておきましょう。
 そして彼と心を通じ合わせた僕はその喜びの結果とこれまで感謝を伝えるため、本日、ここに日記を書きました。これが最後の日記です。つまり今日の日記は彼にお願いして許してもらった、みなさんに向けての日記です。僕が勝手に語ってばかりいるものじゃなくてね。
 これまで本当にありがとうございました。僕は晴れて、ずっと想ってきた人と通じ合うことが出来ました。彼のお願いによって今後のことをこのブログに記すことは出来ませんが、僕はいつまでもみなさんのくださった温かい応援メッセージを覚えていることでしょう。
 それでは、さようなら。幸せになりますね!!



□■□



 火曜日。嬉しいのか恥ずかしいのか、昨日のことを思い出しどうにも表現しにくい心地のまま登校すると、クラスで谷口が机を涙で濡らしていた。どうやら贔屓にしていたブログの管理人が昨日で執筆活動を停止すると宣言したらしい。真実――と言うか裏側――に気付いた俺は生温かい声で谷口を慰めてやったよ。ネットの世界の誰かより目に見える本物の方が何倍も幸せだ、ってな。








・古泉を幸せにしたかった。(結果、予想以上にキモくなった。)
・谷口に思いっきり謝りたい。
・最後はキョンデレのターン!書いた本人もビックリです。
・実は古→→→→←キョン。キョンからも矢印は出ています。古泉からのが凄いだけで。