「それじゃあ時間になったし、定例報告会を始めようか」
 まるで青空が話しかけてきたとでも錯覚しそうなほど爽やかな声が“それ”の開始を告げた。
 どこかの会社の会議室を借りたような大きな部屋には楕円状に机が配置され、その一番奥に開始を告げた青年が椅子から立ち上がって笑みを浮かべている。
「今日の司会進行役はノミ蟲だったか」
「先週は杏里でしたから、そうっすね。今週は臨也さんで合ってます」
「はい」
 青年もといノミ蟲もとい折原臨也の右手側には園原杏里、紀田正臣、平和島静雄の順に池袋の住人達が座っている。
 同じ空間、それも直線距離にして五メートルと離れていないと言うのに、戦争コンビとして有名な臨也と静雄の二人は未だ喧嘩を始めていなかった。それどころか罵り合いすらしていない。静雄にいつものごとく「ノミ蟲」と言われた臨也の頬が一瞬だけ引き攣ったのを見た者もいたが、そこから大破壊を伴う喧嘩に発展する事はなかった。
「まずは出席確認から」
 臨也は会議室を見渡し、着席している人間を眺めやる。来良学園の杏里と正臣、空席、池袋の自動喧嘩人形と称される静雄と来て、その隣はまたもや空席、埼玉で暴走族のリーダーを務める六条千景、いつもワゴンで池袋中を移動している四人組のうち三人―――狩沢絵理華、遊馬崎ウォーカー、門田京平。ここで楕円の半分。己の正面に位置する門田まで確かめたところで臨也は首を傾げた。
「幽君は仕事として、黒沼君は?」
「帝人の粛正に付き合ってますよ。一応ここには来てたんすけど、直前に帝人から呼び出しがあったみたいで。最近落ち着いてきてたダラーズにまた変なのが現れたとか何とか」
「そっか、帝人君からの呼び出しじゃあ仕方ない。でも久しぶりだねえ、その単語を聞くのもさ」
 正臣の答えに臨也は己に近い方の空席を見る。そこは本来、正臣達の一年下である黒沼青葉が座っているはずだった。だが私用ならまだしも帝人に言われて欠席ならば仕方ない。むしろ帝人の誘いを断る方が万死に値するとその場の空気が語っている。
 静雄の隣に座っているはずの幽に関しては、彼は俳優という職業でもって帝人を楽しませているため、それを休む訳にはいかない。よってこちらも欠席は不問となる。
 門田の右隣には金髪のロシア人・ヴァローナ、相変わらず白衣を纏ったままの岸谷新羅、ヘルメットを外して首の断面から黒い煙を漂わせているセルティ・ストゥルルソン。運び屋のセルティの隣には最近ヤクザの孫娘としての道を歩み始めた少女・粟楠茜、将来はその配下につくかもしれない四木、赤林。一つ空席を挟んで臨也の秘書を続けている矢霧波江。その波江の右隣が臨也となるので、これで一周である。
「青崎さんはどうしたんですか?」
 一応の敬語を使って臨也が話しかけたのは四木だった。四木は一つ向こうの空席を一別して、
「黒沼君と似たようなものですよ」
「……ああ、今月の粟楠内帝人君サポート係は青崎さんでしたね。部下には任せなかったんですか」
「本人がどうしても近くで見守りたいと言うものですから」
 帝人の久々の粛正活動に合わせ、いざという時に飛び出していけるよう青崎が陰からついて行ったのだ。
「あんな大きい図体で陰から見守る……?」
「その辺はまあ、我々もプロですから」
「おいちゃんも竜ヶ峰君にバレる事はなかったしねぇ」
 青崎という男がかなりの巨漢である事を知っている臨也は秀麗な顔に疑問の色を浮かべたが、同僚とも言えるポジションの四木と赤林はそれぞれ帝人にバレる事はないだろうと答える。ちなみに青崎と同じくらいの背丈である赤林も過去にその経験があるらしい。ただし臨也の調べでは今回の粛正活動は随分久々のものであり、なおかつ帝人の粛正活動と粟楠内での月単位でローテーションする帝人君担当に赤林がなっていた時期を考慮すると、赤林が言ったのはこの会が作られる前―――ダラーズの粛正活動が最盛期だった頃だと予想される。
(……いつの間に帝人君の後ろをつけてやがったこのオッサン)
「ん? おいちゃんに何か用かい、情報屋」
「何でもありません」
 色眼鏡越しの隻眼がにこりと笑むのを見て、臨也もまた如才ない笑みを返してみせた。
「じゃあ、本日の欠席者は黒沼君、幽君、青崎さんの三名という事で。『竜ヶ峰帝人を愛でる会』の定例報告会を始めようか」



* * *



プログラム1 本日の飲食物の説明

 臨也達の机の上には500mlペットボトルの炭酸飲料とスナック菓子がそれぞれ置かれていた。
 この報告会では毎度司会進行役の者が茶菓子を用意する。基本的にはどこぞの有名な菓子店の物だったり、もしくは(特に財布に余裕がある訳でもない学生などは)無難なペットボトルのお茶だったりするのだが……。
「今日は違うんだな」
 門田がぽつりと告げた。
 自分を含め二十代半ば以下ならば炭酸飲料とスナック菓子でも問題はあるまい。しかしここには壮年の男達―――四木や赤林も同席している。情報屋としてそれなりに財布にも余裕のある男がどういうつもりで本日これらを用意したのか。門田と同じ思考を持って全員が臨也に視線を向けた。
「ちゃーんと理由があるんだよ」
 大仰な仕草で肩を竦めた臨也は、おそらく椅子と机がなければその場でコートを翻してくるりと回っていただろうぐらいの調子で答える。そして銀色の指輪が嵌った人差し指で自分の前に置かれた菓子とジュースを示し、

「これは帝人君が気になってるらしい最近発売されたばかりの炭酸飲料及びスナック菓子なのさ!」

「しまったー! 俺の調査不足!! 帝人の親友ともあろう俺がまさか変態二十代に負けるなんて……っ!」
「くっ……腐っても情報屋か。ノミ蟲のくせに」
「あー。そういやこの前、みかプーってば棚の前でちょっと悩んでたねぇ。これの事だったんだ。さっすがイザイザ!」
『新羅、これが美味しかったら私達も買っておこう。そして帝人をウチに呼んで食べさせるんだ』
「そうだね! セルティってばなんて策士なんだ! 目指せ帝人君ウチの子計画!」
「帝人お兄ちゃんは岸谷帝人になるの? でも最終的には粟楠帝人になるんだよ」
 臨也の説明により会議室の中が一気にざわめいた。
 皆の反応を満足そうに眺めつつ、臨也は司会として「はいはーい。そこまで」と手を打ち鳴らして視線を集める。
「スナック菓子だから汚れた手はその横のおしぼりを使ってくれるかな。各自解ってるとは思うけど、決して汚れた手のまま大事な帝人君コレクションには触れないように」
「それは十分承知していますよ」
「当たり前じゃない」
 臨也の左手側、四木と波江から別々に答えが返る。
「ってか俺らの場合は絹の手袋常備っすけどね」
「ねー」
 流石はオタクコンビと言うべきか。アニメグッズも数多く収集している狩沢と遊馬崎の二人は顔を見合わせてそう言い、机の上に持参した白い手袋を出してきた。
「油分。それは特に紙類に対して深刻なダメージをもたらします。避けて通るべき現象です」
「んー。でもさ、解ってても写真があったらチューとかしたくならねえ? だってハニーってばあんなに可愛いんだぜ」
「解らなくもないですが私の目の前でやったら叩き斬りますよ」
 千景の言葉にあわや頷きかけたヴァローナは杏里が穏やかな表情と声のまま告げた台詞にピタリと身体を硬直させる。千景も若干赤っぽくなっている杏里の目を見て「ああうん、了解です」と両手を挙げていた。どちらも杏里が日本刀を操る場面を見た事があるので、叩き斬るという言葉が冗談に聞こえないのだ。
「ま、俺もその気持ちは解らなくもないけどね。本当にやるなら一人の時に写真立てにでも入れてやりなよ」
「妙にリアリティがあってイラっとくるんですけど、臨也さん」
「気のせいだよ紀田君」
 数秒、正臣と睨み合いなのか微笑み合いなのか判らない状態を続けてから、臨也は次に進めるため口を開いた。



* * *



プログラム2 今週のナイス帝人君

「帝人君の可愛いあんなところや格好良いこんなところを見たって人は挙手して発表ね。……はい、……え? 波江?」
「なに。私が発表しちゃおかしいって言うの?」
「そんな事はないけど」
 かつては敵として帝人と対峙した波江だ。事情を知る者からすれば彼女がこの会に出席している事からして驚きなのだが、臨也は仕事場で波江が弟と帝人の写真の両方を手帳に挟んでいたのを見ていたのでそれ程でもない。しかし帝人と自然に会話できるまでには至っておらず、そんな彼女が帝人の可愛らしいシーンや格好良い場面を目撃しているとは思わなかった。
 そんな臨也の視線をもろともせず、波江は口を開いていたスナック菓子の袋をズラしてパソコンを正面に持ってくる。予め電源が入っており、LANケーブルとも接続されているそれを操作すると、間もなく臨也の後ろにあるスクリーンに一枚の画像が表示された。
 デジカメで撮影したと思われる写真に一同の目が釘付けになり、
「波江! その写真、データのままで売ってくれ! 横の邪魔者は編集して消すから!!」
 背後を降り仰いだ臨也が叫ぶ。
 それでも未だ視線を向け続けているスクリーンにはベンチに座る帝人が映し出されていた。柔らかな陽光に誘われてうたた寝してしまったのだろうか。膝の上に丸まった猫がおり、私服姿の帝人は隣に座る“バーテン服の男”にもたれ掛かるようにして目を閉じていた。
 隣の男は見切れており顔までは写っていないが、それが誰かであるなどこの場の人間は全員解っている。
 十四人分の視線――正確には首無しであるセルティを抜くので十三人分――を受けた静雄は苛立つどころかサングラスの奥の双眸を楽しげに細めて口の端を持ち上げる。
「人徳だろ?」
 特に誰に対して言っているのか解らなくもない発言に臨也がひっそりと机に手をついた。何か思うところがあったらしい。そんな臨也と静雄の間で正臣と杏里の二人が首を縦に振っている。
 加えて静雄はそこで発言を終えるのではなく、硝子越しの視線を臨也の対面に座る人物へやった。
「なあ? 門田」
 静雄に向けられていた二十以上の目が門田京平へと向け直される。
「…………いや、まあ……人徳かどうかはさて置き。その写真が撮られる少し前まで俺も竜ヶ峰の隣に座ってたのは確かだ」
「ええー!? なになに、みかプーってばこんなおっきい男二人に挟まれて熟睡しちゃったの!? なにそれたぎ、ぐえ」
「はーい狩沢さんストップっすよ。ここは大人しく今度帝人君に着せるコスプレ衣装の資料を確認しておきましょう」
 ベーコンレタスが大好きな狩沢がテンションMAXになると先に進まないのが解っている遊馬崎は早々に相方の口を塞ぎにかかる。そんなオタクコンビの様子を横目に門田はしばらく逡巡した後、口を開いた。
「朝までチャットしてた所為で寝不足とか言ってたな。でも用事があって朝から忙しかったらしい。これはその用事が済んで一息ついたところだろう」
「竜ヶ峰が寝た後で門田に連絡が入って行っちまったんだよ。ちなみにこれの後、門田の代わりにヴァローナが座ってたな」
「肯定です」
 静雄の補足説明にヴァローナが頷く。
「帝人のほっぺ、ぷにぷにのつるつるでした。楽園はここにあります」
「ちょ! なんだよそれ羨まし「司会進行役、早く進めなさい」
 臨也が声を上げるも波江女史の一喝により終了。



* * *



プログラム3 今週の害虫駆除履歴

「続いては帝人君にぶつかったりいちゃもんつけたりカツアゲしようとしたりしたクズどもの殲滅記録を発表ー。今回は今月最後の会だから一月分の全員のデータを集計して俺が殲滅数ベスト5を発表するよ。それ以外は手元の資料を参照して」
 波江にコピーしてもらった画像データ入りのUSBメモリを握りしめてちょっと嬉しそうな臨也が言う。
「第五位、四木さん。どんな人間をどうしたのかは伏せるけど……エグいですよ。物凄く」
「そうでしょうか。こちらとしては彼らになるべくスマートに自分の立場を理解させただけなのですが」
「……まあ本人がそう言うなら。ヤクザ怖い」
「何か?」
「いえいえー。ちなみに赤林さんは僅差で第六位でした。では次! 第四位は……ドタチン率いるワゴン組! 先々週の帝人君が追っかけられてたのを助けたので人数稼いでるねぇ。ちなみにドタチン達が伸した奴らは俺が引き取りました」
「あー……そういや事務所の隅で人格崩壊してる奴らいましたね。何やったんです?」
 その人格崩壊者達を引き取って某所まで運んだ正臣(with黄巾賊)が口を挟むと臨也はニヤリと笑って答えた。
「ただのお説教さ」
「ただの、ねぇ……」
 ただの説教で「生まれてきてすみません」と繰り返し呟く人間が出来上がるなら、今頃多くの家庭で自称人間失格な子供達が生産されていただろう。
「ま、いいですけど」
「じゃあ紀田君も納得したところで第三位。……ってこれは俺なんだけどさ。頭の悪そうなガキとオッサンは他の人間に任せて、とりあえず俺は帝人君にぶつかって何も言わなかった女子高生とか、それどころか暗がりから帝人君の腕を引っ張った売女とか! そういうのを重点的にやってたねぇ」
「さすが歪みないね臨也お兄ちゃん」
「ありがとう、茜ちゃん。男は黄巾賊に任せたけど女の処理は茜ちゃんがいてくれて助かったよ」
「どういたしまして! 帝人お兄ちゃんに酷い事をする悪い女の人の処理はこれからも私と粟楠に任せてね」
 まだ干支も回りきっていない年頃の少女はそう言い、長めの前髪の奥でにこりと輝かんばかりの笑みを浮かべた。容姿端麗な臨也の微笑も併せて目にすると、人間不信に陥りそうなレベルである。
「それじゃあ第二位。これは予想通りと言うべきか予想が外れたと言うべきか……シズちゃんだね」
 やれやれとでも言いたげに臨也は肩を竦めた。
「説明は必要ないかな。いつも通り、シズちゃんマジシズちゃんとだけ言っておこう」
 静雄の説明に関しては臨也の言う通り、言わずとも解っている事なので誰も反論しない。普段からキレやすく多くの人間を宙に打ち上げている静雄は意識せずとも帝人に仇なした者に制裁を加えており、そこへ更に己が目撃した帝人のピンチに首を突っ込んでいるので、必然的に撃破数は多くなるのだ。
「それでは第一位の発表だ。第一位は……紀田君!」
 臨也の発表を聞いて正臣は少し誇らしげにし、隣で杏里が小さな拍手を送っていた。
「紀田君の場合は黄巾賊があるからねぇ。いつぞやの帝人君じゃないけど、数は力だ。紀田君が直接手を下さずとも、帝人君が何かされてる場面に出くわした黄巾賊のメンバーが適宜対応しているからね。しかも報告はちゃんと紀田君まで上がるから、必要なら紀田君がもう一度制裁を加えているようだし?」
「数と言っても信用できる奴らにしか頼んでませんけど」
 正臣が答える。
 なお、罪歌の『母』として池袋中に『子』を持つ杏里もまた“数”はあるのだが、罪歌の子の場合、よく観察しなければ一般人と区別が付かない。よって杏里の殲滅数は杏里本人の手によってなされたもののみ数えられていた。
「ともあれ、おめでとう紀田君。月間MVPの紀田君には後程点数シールを進呈しよう」
 ちなみにこの点数シールを集めると、合計点に応じた『竜ヶ峰帝人を愛でる会』特性グッズと交換できる。蛇足だが、正臣の目標は『学園天国帝人のセキュリティソフト』である。どうやら大きな緑のサングラスをかけた帝人(2.5等身)がパソコンを守ってくれるらしい。



* * *



プログラム4 ちったいみーちゃん

「先週は園原杏里の『教室の帝人君』だったから、今週は紀田正臣の『ちったいみーちゃん』になるね。それじゃ紀田君、よろしく」
 この会では杏里が帝人の学校(主に教室)での様子を話す『教室の帝人君』と正臣が過去の帝人メモリーを語る『ちったいみーちゃん』が交互に行われている。
 臨也に言われ正臣が椅子から立ち上がった。帝人の幼馴染である正臣から語られる幼少期の話とあって、会の参加者は全員意識を集中させる。
 シンと静まった会議室の中、正臣は「今日は……」と話し始めた。
「黒沼がいねえからちと特別なやつを」
「おめーら本当仲悪ぃよな」
「まぁ昔はガチでやり合ったチームですからね。それに俺、黒沼の人格からして気に食わないですし」
 千景のコメントに正臣が答える。ただしその返答に千景が何か言う事はできなかった。何故なら一つ空席を挟んだ隣から万力のような力を持った手で口を押さえられてしまったので。
「六条うるせぇ」
「うーう゛ー!(すみませんでした!)」
 帝人の幼少期の話を早く聞きたいらしい静雄によって、要らぬ口を挟んだ者は即刻対処されるとなり、他の聴衆どころか正臣本人も千景の現状には何も言う事なく話を続けた。
「ひょっとしたら杏里とか二年の春にやったっていう鍋パーティーの参加者なら帝人の口から聞いた話かもしんねえけど……」
 そう言って始められたのは、かつて帝人が己の視点から語った小学校時代のある夏の日の物語。深夜に家を抜け出して正臣と帝人の二人で昆虫採集に行き、そこでガラの悪い上級生に出くわした事。彼らに対し、小柄な帝人が毅然と立ち向かった事。
 以前、帝人から聞いてその話を知っていた者達も正臣から改めて語られた“紀田正臣視点”での物語に、それが終わった後もしばらく無言で余韻に浸っていた。
「……紀田君って本当に帝人君が好きですよね」
「おう! あったりまえだろー」
 杏里の微笑に正臣はニカッと歯を見せて笑う。
「年を重ねるごとに大切で好きになっていく奴なんてあいつぐらいだよ」



□■□



「っくしゅん!」
「先輩、風邪ですか?」
「んー。そうじゃないとは思うんだけど」
 久々だった粛正活動も無事終了し、その帰宅途中。突然くしゃみをした帝人を青葉が心配そうな顔で覗き込む。
「誰かが噂でもしてるのかなー」
「……」
 そう言えばこの時間帯は『竜ヶ峰帝人を愛でる会』の定例報告会の最後のプログラム――今週は紀田正臣の『ちったいみーちゃん』だ――も終わる頃のはず。どんな話だったんだろうと気になりつつも、帝人の隣にいる事には変えられないと、青葉はふるふるとかぶりを振った。
「青葉君?」
「いえ、何でもないですよ。先輩は一応、今日はあったかくして寝てくださいね。それでもし風邪みたいだったら早めに病院に行ってください」
「うん。わかったよ」
 そう答えた帝人は、しかし微苦笑を浮かべたまま青葉の度肝を抜いた。
「でもこれたぶん、正臣達が集まって僕の話でもしてるからでしょ?」
「え……?」
 青葉の表情が固まる。
 あの会の事は帝人本人には教えられていないはずだ。
「ま、言ってもやめてくれないだろうし、僕に利がない訳でもないからね。好きにすればいいんじゃないかな」
 あはは、と笑う帝人は学校にいる時と何ら変わらない。だが青葉は一瞬だけそんな帝人の瞳に深い青が揺らめくのを見た。
「……先輩には一生敵わないような気がします」






親愛なるディープブルー

(底が知れないってのもこの人の魅力なんだよな)







リクエストしてくださったうこぎ様に捧げます。
うこぎ様、ありがとうございました!

↓ちなみに席順はこんな感じでした。()内は欠席者。
臨也、杏里、正臣、(青葉)、静雄、(幽)、千景、狩沢、遊馬崎、門田(※ここが真ん中)、ヴァローナ、新羅、セルティ、茜、四木、赤林、(青崎)、波江、そして臨也に戻る。