恋人バカとピンクの嵐





□■一護篇■□



「お、恋次!久しぶり!」

瀞霊廷、護廷十三隊隊舎内のとある廊下。
そこで偶然見かけた後姿に一護が声をかけた。
呼び止められた恋次は白い羽織を翻し、一護の姿を確認すると驚いた顔を見せる。

「なんだ一護じゃねーか。こっちに来てたのかよ。」
「代行の定期報告があんだよ。・・・ったく、めんどくせー。」
「死神代行の報告なんてまだまだ楽なもんだろ。俺達はその何倍って仕事が机の上で待ってんだぜ?」
「へいへい。そーっすね、阿散井隊長。」
「やめろっての。その言い方。」

半眼になって嫌がる恋次に、一護は幾分スカッとした心持ちで口端を吊り上げて笑う。
それを見てさらに嫌そうな顔をする恋次。

恋次は今や六番隊を離れ、一つの隊をまとめる隊長として白い羽織を纏っていた。
その羽織に目をやって一護は人の悪い笑みを浮かべる。

「にしても白い羽織の似合わねー隊長だよなぁ。」
「うっせー!自分でも似合ってねぇのわかってンだからそうやってイチイチ言うな!」
「おーおー。自覚済みか。ま、ルキアは似合ってるとか如何とか言ってたけどな。」
―――そりゃァもう煩く。

恋次の隊長就任が決定した当初、まるで自分のことのように喜んでいたし、白い羽織にあの赤い髪が映えて美しいなどと周囲に言い続けていたのだ。
しかも四六時中、一護が寝ようとしている時にさえ。

(・・・あれはさすがに参ったな。しばらく寝不足状態だったし。)

思い出し、一護は眉間の皺を深くする。
しかしそんな一護の様子に構うこともなく、恋次は言われた言葉を頭の中で反芻してからガシッと一護の肩を掴んだ。

「っな、なんだよいきなり!」
「ルキアが!?・・・そ、そうか。ルキア・・・そう、ルキアのヤツ最近どうだ?」
「アイツか?アイツなら一緒に来てるぜ。今は白哉んトコに行ってるけどな。」
「一人で、か?」
「お?おう。それがどうした。」

なにやら挙動不審?と思いつつ一護がそう返すと、恋次の顔色は見る間に色が抜けていった。

「おい、恋次どうし・・」
「バカヤロウ!ルキアが襲われたらどーすんだよっ!?」
「は?」

まさしく“目が点”。
無茶苦茶なことを言い出す恋次に一護は唖然としてしまう。

「あんな細っこくてちっこくて可愛らしい人形みてーなヤツなんだぞっ!?一人で廊下歩いてたら誰かに攫われちまうだろーがっ!」
(うっわ、なんだよコイツ・・・って、ルキア馬鹿か。)

いや、もともと何となくそうかなーとは思ってたけど、ここまであからさまだったっけ?
・・・あー。これは、なんか色々吹っ切れたってことか?
つまるところルキア共々恋人バカってわけですか。そーですか。

なにやら思い切り溜息をつきたくなったがそこはあえて我慢し、一護は恋次の腕をペシリと払って自由になった両肩をすくめた。


「そう心配すんなって、白哉がいるんだし。白哉にもルキアが会いに来ること知らせといたから。」
「まぁそれなら・・・」

いいけどよ・と呟く恋次。

(やっと落ち着いたか。)


バカップルってやつはひたすら迷惑なもんなんだな。
そう思ってしまう一護に何も罪はないだろう。











□■恋次篇■□



「そういやさ、浦原のヤツどうしてる?ちゃんと仕事してんのか?」

ルキアのことでみっともない所を曝してしまったがそこはからかわれる事なく、一護が話の方向を変えてきた。
これ幸い・と恋次は浦原喜助――自分が隊長に就任すると同時に永久追放を解かれて護廷の隊長に復帰してきた男の様子を口にした。

「あ?・・・あの人な。まぁそこそこって感じじゃねぇ?別に俺ンとこまで仕事が回ってくることも無ェし、適度に書類捌いて適度に研究室に籠もってるみたいだからな。」
(たまに「黒崎サンに逢いに行ってきます!!」って発作みたいに隊舎抜け出そうとするらしいけど。)

隊舎が離れている為か、自分でその姿を目にしたり声を耳に入れたりしたことはないが、小耳に挟んだ隊員達の噂話の内容を思い出し、恋次は内心苦笑する。
そんな恋次の内情も知らずに一護は「そりゃ良かった。」と顔を綻ばせた。
と、そこに。

「くっろさっきさ〜んv」

噂をすれば影。
おそらく・・・否、きっと一護の霊圧を感じ取ってのことだろう。
金髪の隊長・浦原喜助本人が桃色オーラを撒き散らしながら現れた。

(阿呆な噂はともかく)基本的にいつも真面目に働いている人間がスタッカートにハートつきの呼び方をするというのは意外と強烈なもの。
浦原とすれ違った名も無きヒラ隊員達は皆そろって顔を青くし、恋次はひたすら頭痛を覚えた。
その中で(浦原本人を除き)被害を受けていないのが一護。
これが『耐性』っつーモンか?と、二人の付き合いを知っている恋次は僅かに頬を引きつらせた。


「浦原?お前、仕事はどうしたんだよ。」

今さっき恋次から真面目に働いていると聞かされた本人がこうして目の前にいることに一護が片眉を上げる。
すると浦原はさっと一護の手を取って、

「そんなの黒崎サンと比べたらゴミも同然っスよ!」
(仕事がゴミ・・・それを隊長のアンタが言うか。)

当然のごとく言い切った男を見やって恋次の頬は余計に引きつる。
しかしそれが誰かに見咎められるということなどなく、浦原は一護の手を取ったままさらに続ける。

「せっかく黒崎サンが来てくださってるんですから会いに行かずして何をするっていうんですか!」
「な、何言ってンだよ!」
「おや。黒崎サンったら赤くなっちゃってかぁわいいーv」


なんかハートが飛んでる幻覚が見えるんですけど。

恋次の目の前には両手を取られて真っ赤になりつつも満更ではない様子の一護と万遍の笑みを浮かべて「可愛い」を連呼する浦原。
その様子をどこか遠くに眺めながら恋次は「ルキアに逢いてぇなー」などと意識を飛ばしてみる。
そうでもしないとこの二人が放つピンク色の空気にやっていられなくなるからだ。


しばらくそうやってイチャついた後、浦原は片手を一護の肩に回し「忘れる所でした」と一護を連れてもと来た道を戻ろうとした。

「・・・浦原?」
「これからご一緒しません?うちの隊舎にちょうどいいお茶菓子がありましてね。黒崎サンに食べて欲しいんスよ。もう絶対気に入りますから!」
「あっ、でも恋次は・・・」
「阿散井隊長ならこれから残りのお仕事片付けられるんですよね?」
「へ?いや俺はもう・・・」

話を振られて一瞬だけ言葉に詰まるが、期限が迫っているような仕事もないので大丈夫だと答えようとすると、浦原がさっと恋次に向ける笑みを深めた。

「ですよね?」
「・・・・・・はい。」

目が笑ってませんよ。浦原隊長。

浦原のそんな様子に気づいているのかいないのか(前者ならこれからの一護との付き合いについて考え直さなくてはいけないかもしれない)、一護は肩に手を回されたまま「そっか」と残念そうな顔をした。

「んじゃまたな、恋次。」
「おう。じゃあな。」


一護が恋次に背を向けて歩き出す。
離れていく二人を見やって恋次はガクリと力が抜けるのを感じた。


ようやくピンクの嵐が去ったか・・・


その後、はぁ〜と重く深い溜息をつく隊長殿がある廊下で目撃されたという。








150000HITを踏んでくださった『KING OF NEW YORK ―K.O.N―』の写楽♪様に捧げます。
一護&浦原+恋次&誰かということでしたので「誰か」にはルキアを当てさせていただいたのですが・・・
ど、どうでしょう。
しかもイチャついてるのは浦原&一護ペアのみでした(爆)
あと恋ルキなのか恋→一なのかいまいち分かりにくくてスミマセン。
もしかしてここはルキアじゃなくて白哉とか修兵とかを出して置くべきでしたか・・・?
そうそう。浦原さんの副官の席はもちろん(笑)空白ですよ。
あと真面目に仕事してるのは一護にやれと言われたからです(尻に敷かれてる!?)

写楽♪様、この度はありがとうございましたv
返品・交換はいつでもどうぞ!