ビルが横に生える奇怪な街
街に響くキンッと澄んだ高い音 音と同時に散る火花 火花の前に交錯する白と黒 白と黒が織り成す剣舞 剣舞を見守る無人のビル ―――世界は、ただそれだけで構成されていた。 My Strawberry 眠る顔を上から静かに見守る。 白い袴に散らばるのは鮮やかな橙。 その橙の持ち主の眉間を見て、俺はクスリと笑った。 「・・・寝てても皺よってンぞ。」 小さく、呟く。 いつもしかめられている眉間が就寝中もやはり皺を刻んでいる事実に、今更ながら笑みが漏れた。 そこをほぐすように親指で軽く突付く。・・・・・・変化なし。 彼の――一護の眉間のことは諦めて、その手をそのまま前髪へと伸ばした。 ・・・少し、湿っている。 先程まで修行と称して自分とこの世界で切り結んでいたためだろう。 今は疲れて俺の足の上に頭を預けて眠る一護の、そのオレンジ色の髪を一房手に取った。 水分を得た短髪が常よりも一層艶やかにその存在を主張している。 同じ色のはずなのに、どうしてコイツの髪はこんなに綺麗なのだろうか。 そう思いつつ、髪を片手で弄る。 気づけば口元には軽い笑みが浮かんでいた。 ゆっくりと身体を折る。 目を細める。 口を開く。 そして、俺はその髪を軽く 「・・・甘い。」 それは舌の味覚神経が伝えてくる信号か。 それとも体の奥底から湧き出る想いによるものか。 今はその正体を突き止めるつもりなどない。 ただこの身に満ちる暖かくてやわらかい、そしてどこかくすぐったい感覚に身を任せていたいと思った。 コイツの心が穏やかな証拠だろう。やわらかな風が頬を撫ぜる。 その風は一護の髪も優しく包み込み、少しずつ乾かしていく。 風に揺られて、屈んでいた俺の顔にオレンジ色の髪がパサリと触れた。 見た目よりもずっとやわらかなそれは、俺に痛みではなく心地よい感触を与えては離れていく。 「一護ー・・・そろそろ起きねぇと。」 いつまでもこの世界に留める訳にもいかず、覚醒を促すために何度か一護の肩を軽く揺らす。 「・・・んぅ・・・」 「ん・じゃねーよ。ホラ、起きろー・・・」 「う・・・」 なかなか起きないその様子に少しばかり悪戯心というものが沸いた。 肩を揺する手を放し、代わりに更に屈みこんで一護の首筋に唇を寄せる。 白い肌を一度だけきつく吸った。 「・・・っあ。」 半覚醒の一護の声。 それを耳に入れ、顔を離す。 「上出来。」 鮮やかな赤い鬱血を確認してニヤリと口元が弧を描いた。 そうして、目の前の両の目がうっすらと開かれ、 琥珀色の双眸が俺を確認する。 「オハヨ、一護。」 「・・・おはよう。」 何度か目を瞬かせた後、よっ・と言う掛け声と共に一護が起き上がった。 コチラを見て不審そうな顔をする。 「お前、何かやった?」 「いんや、特に。」 「・・・なら良いけど。」 言って、一護がくるりと向こうを向いた。 「帰んのか?」 その背中に声をかける。 「おう。じゃあな。」 「ん。」 俺が答えるのとほぼ同時。 一護の姿はこの世界から溶けるように消えていった。 跡形もなくなったその空間に視線を合わせたまま、軽く苦笑する。 「イキモノっつーのは 身体にまでそれが現れるんだってな。・・・それが死神なら尚更だ。」 ニヤリと顔を歪め、晴れた空を見上げた。 「一護、鏡見てみ?」 と、外に向かって声をかけながら。 オマケ 一護は精神世界から目覚めてすぐ、相棒の声を聞いた。 『一護、鏡見てみ?』 「鏡・・・?」 いきなりの言葉に僅かながら不信感を抱きつつ、言われるまま鏡に己の姿を映す。 「鏡がどうしたってんだよ。一体何が・・・」 と、一護の言葉が切れた。 そのままワナワナと震えだす。 「テメー!なんちゅーことをっ!!」 見つけたのは首筋に残る鮮やかな赤。 正真正銘のキスマークに一護が真っ赤になって喚いた。 しかし、返ってくるのは相棒のクスクスという笑い声のみ。 それを聞きながら、一護は鏡の前でただただ項垂れた。 「・・・あとで鬼道で治しとこ。」 ポツリ、とそれだけを言って。 「まいぺぇす」の文々様に相互記念として捧げますv 「最強少年。」シリーズで白黒・・・いかがでしたでしょうか? 返品&交換はいつでもオッケーですので(笑) それでは、これからもよろしくお願いします! |