俺は、自分の名前が嫌いだ。





それは君を傷つける為に存在しているんじゃなくて。





名前は子供が親から一番最初に貰う贈り物だと言う話をどこかで聞いたことがある。
もちろん俺も例外なく「一護」と言う名をこの身に受けた。
最初の頃―――俺がまだすごく幼かったとき、俺は両親に呼ばれるこの名が本当に大好きだった。
でも、それはすぐに逆のものとなった。


「一護」と言う名の意味を知ってから。


それは"何か一つのものを守り通せるように"なんて可愛らしいもんじゃない。
「護」とは中のものを傷つけないように外から取り巻くこと・庇いまもるということ。
つまり「一護」の持つ意味は、言ってしまえば"自身を犠牲にして一つのものをまもる"ことなのだ。



こんなふざけた話があるだろうか?



生まれつきであるオレンジ色の髪と明るすぎるブラウンの瞳。
それがどれだけこの社会で異質か、そして異質な存在がどんな目に遭うのか・・・俺は嫌と言うほど経験してきた。


汚いモノを見るような周囲の目。
いわれのない理不尽な暴力。
子供特有の無邪気な邪気。




そうして、自分を守るのさえ満足に出来ない人間にさらに身を削れと強いるのだ。この名は。






















「だから俺は、自分の名前が嫌いだよ。・・・浦原。」

そう言って、俺は目の前の人物に笑いかけた。
コイツは、俺に近しい奴等の中で唯一俺のことを「黒崎サン」と呼ぶ。
そう、浦原は俺を名で呼ばない。俺の大嫌いな名で呼んだりしない。
だから俺はコイツの前で笑うのだ。

ホントウの、俺で。

そしたら浦原は俺を抱きしめてこう言うのだ。

『可愛いっスね。黒崎サンは。』

いつも。
決して短くはない付き合いの中、いつでもコイツはそうだった。

けれど――・・・


「なんて顔してんだ?」

いつもなら微笑んでいるはずの浦原が、今は眉尻を下げ、なんだか悲しそうな表情。
何でそんな・・・・・・泣きそうになってるんだ。


「黒崎サン。」

浦原はいつもと同じ6つの文字で、しかしいつもと違う沈んだ調子で俺を呼んだ。
そのまま俺の頭を包み込むように抱きしめ、浦原は続ける。

「ねぇ・・・キミは今までずっとそういう風に思ってきたの?・・・自分の名前が憎くて仕方なかった?」
「アンタ、何が言いたいんだよ。」

少しムッとして言う俺を浦原はさらにきつく抱きこんだ。

「アタシはね・・・キミに、そんな風に思って欲しくないんです。
・・・何かを守るには、その守護者がそこに居なくてはいけない・・・"生きて"いなくてはいけないんスよ。
だからね、黒崎サン。"一護"っていう名前は何かを守ると同時に自分をも守るっていうことなんじゃないですか・・・?」


ぎゅうぎゅうと力いっぱい抱きしめてくる浦原。
その腕の中、俺は沈黙を保ったまま。
浦原の言葉がじわりじわりと俺の中に染み入ってくる。
それにしたがって、何かが壊れていくような気がした。

そして、決定打。



「そうでしょう?・・・一護サン。」






パキン・・・と音を立てて崩れた俺の中の何か。
それが何なのか、ちっともわからなかったのだけれど。








注意・雨竜とか織姫は一護の「近しい奴等」に入っていないのです。啓吾も水色も。
一護に「近しい」のは家族、たつき、チャド、あと一応ルキア。そして浦原。
そんな感じ。

「A定食」の双間暁様に捧げます。
素敵スレ一護小説のお返しです。
ど、どうぞお納めください・・・お目汚しですいませんでした。