何か可笑しいとは思ってたんだ。
街に出れば妙な視線を感じるし、
んで、フェリスと会えばアイツはこっちを見てどっか行っちまうし。
でもそのあとイリスに言われてやっとわかった。
わかってしまった。
妙な視線とフェリスの行動の理由が。

「あっれ〜?野獣君!?首んトコ、虫に刺されてるよ?」

イリスと別れてから俺は全力で走った。
あの悪魔の住処―――ローランド帝国王城へと・・・





最終兵器彼氏





ローランド帝国王城。

王という身分に似合わぬ質素な執務室にシオンはいた。
机に向かってペンを走らせ、印を押していく。
しかし、しばらくしてシオンはペンを置いた。

「字がぼやけてきた・・・やっぱ寝不足かなぁ。」

目頭を指で刺激してみるが改善は無し。
未だ書類の文字は霞んだままである。

「昨日はあんまり寝てなかったし・・・」

そうして、「久々にベッドでゆっくり眠れるはずだったんだけどなぁ・・・」と言うセリフは、
第三者が聞けばなかなか同情を誘うもの。
しかし、シオンの口元は笑っていた・・・いや、正確に言うとにやけていた。

「ライナがかわいいからついつい・・・」

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・


『ついつい』何なのだ、ローランド王よ。



それはともかく。

シオンの顔はにやけていた。
これで顔が良くなかったら許されないくらいにやけていた。
しかし目の前にルシルが現れたことによって、その表情は急に引き締まったものになる。

「ルシル・・・?どうした?」

シオンが訝しげに問う。
ルシルは窓の外を見据えたまま小さく答える。

「いや・・・少しばかり君が相手をするには手ごわそうな気配を感じてね。」
「!?」

ルシルが姿を現すほど強い敵。
一体何者が・・・?
その答えはすぐにわかった。
窓のガラスを割って進入を果たしたその正体は・・・



「シ〜〜ィ〜〜オ〜〜ン〜〜」
「ら、ライナ!?」

いつもの寝ぼけ眼は何処へやら。
シオンが見たこともないような凶悪な面構えで登場したのは、
先刻までシオンが思い出していたライナ・リュートその人であった。


「・・・あぁ。」

言うが早いか。
ライナの姿を確認するとルシルは納得したような声を出し、溶けるようにその場から姿を消す。


「ライナ、どうしてここに?」

ビクつきながらも問う姿は“英雄王”らしからぬもの。
しかし今のライナの姿を目にしてなら仕方ないかもしれない。
怒り狂う今の彼の姿はまさに『鬼』である。

「どうしたもこうしたもねぇ!!何なんだこれは!?」

そう言ってライナがぐいっと服を引っ張って見せたのは自身の首筋部分。
服を着ていてもライナのいつもの格好なら見えてしまう箇所である。
そこにあったのは・・・


「あんだけ痕はつけんなって言っただろうが!?」

ライナの首筋にあったのは赤い鬱血。
しかも一つではなく複数個あり、服に隠れて見えない所にも続いているのが予想できるほど。

しかしライナの怒りの理由が分かったシオンは次の瞬間にはもうケロリとして、

「お、なんかエロいぞ。その発言。」
「うっせぇ!!まじめに話を聞けっ!!!」
「まあまあ落ち着いて。どう?お茶でも。」
「んなもん飲んでられるか!?どうしてくれんだよ!コレ!!」

街であったことを思い出し、怒りを通り越してライナはすでに半泣きだ。
お茶の用意を本当にやりかけていたシオンは、その手を止めてライナに向き直る。
そしてニコリと笑って言ってのけた。

「だって所有印だしv」

ギチィ・・・とライナのこめかみが嫌な音を立てる。

「じゃあさ、お茶がダメなら一緒に寝よう?
ライナ、昼寝好きだろ?俺もちょっと寝不足気味だし。
流石にちょっと昨日は頑張りすぎたかな〜なんて。眠いんだ。」

ブチッ!!!

ライナのこめかみは今度こそはっきりと音を立てて切れた。
そしてライナは目にもとまらぬ速度で魔法陣を描く。

「ならすぐに寝かせてやるよ・・・永遠に、な。」
「ちょ、待て!ライナ!!」

シオンは慌てるがライナは聞かない。

「問答無用!!求めるは雷鳴>>稲光!!!!!!!」

光が、溢れた。














残ったのは焦げた部屋と、焦げた王だったとか何とか。

ローランド帝国帝都レイルードは本日も晴天なり。








自分より強い彼氏(?)を怒らせると大変だよっていう話(ぇ

2000HITを踏んでくださった海樹様に捧げます。
海樹様、長らくお待たせしました。遅くなって、本当にすみません(汗)
シオライのギャグ・・・こんなんで良いのでしょうか?
もうばっちり返品・交換OKですので!
何なりとお申し付けください!!
この度は誠にありがとうございました!!