このアリス学園に入学してからホンマに色々なことがあった。
蛍がウチを庇って倒れてしもたり、ウチの両親のことがわかったり・・・ 例を挙げればキリが無いくらいや。 そんなこんなで楽しくもあわただしい学園生活を送ってきたウチらやけど、 アリス学園高等部に無事進学することができました。 そしてやってきた高校生活初めての冬の出来事・・・・・・ 某特力系少女的彼と彼女の位置 「ねぇねぇ!蛍!! 雪!雪が降ってる!!」 この、ぴょんぴょんと音がしそうなくらいな少女の名は佐倉蜜柑。 明るい茶色の髪を二つに結んでおり、窓の外と親友を交互に見るたび その髪が少女の性格を表すかのように元気に跳ねている。 「うるさい蜜柑。2月なんだから当たり前でしょ。」 それを冷たくあしらうのが蜜柑の小学校時代からの親友という今井蛍。 黒髪に紫がかった瞳を持つ物静かな少女であるが、実はかなりの毒舌家である。 「ほ、ほたるぅ〜〜」 蛍の言葉に打ちひしがれる蜜柑。 ・・・・・・・・・いつものパターンである。 そして、彼女達のこんなやり取りに最近加わった人物が・・・ 「うるさいぞ蜜柑。そのセリフは去年の十二月から何度も口にしてる。 いい加減別のことも言ってみろ。」 自分の座席について、窓際の蜜柑たちのほうを向きつつツッコミを入れるのは、 黒髪と赤い目を持つ蜜柑の天敵、日向棗である。 ただし天敵と言ってもそれは中学に上がるまでの話。 現在はなんと蜜柑と彼氏彼女の関係にまでなってしまっている。 人生何が起こるかわかったものではない・・・とは本人達を含む皆の思いである。 「なっ!うるさいわ棗!そんなんウチの勝手やろ!? って言うか、何でそんなことまで覚えてんねん!な、そうやろルカぴょん!」 「へ!?いや、あの。えっと・・・何て言うか、その・・・・・・」 元気復活、怒り爆発の蜜柑にいきなり話題を振られ困惑している少年の名は乃木流架。 金髪碧眼の持ち主で棗の昔からの親友である。 彼が小学生のときから蜜柑に思いを寄せていたと言うのは、 < 蜜柑本人を除く、彼らの周りの人々にとって公然の秘密となっており、 今でも彼女への想いはその胸にあるとかないとか・・・ 「だからうるさい。そういう風に流架に話をふるな。」 棗は大変ご立腹の様子・・・・・・でもないようだ。 うるさい、と口では邪険に扱うが、 蜜柑が何をしてもかわいいと思えてしまうのは惚れた欲目か。 その瞳に不快感を表すものは見えない。 が、蜜柑にとって棗の内情は関係ないらしい。 棗の言葉に反応して、彼にとってはとんでもないことを言い出した。 「フーンだ!そんなこと言う棗にはバレンタインのチョコなんかゼッタイあげへんもん!! あ、もちろんルカぴょんにはあげるからね〜今年は結構自信あるんよ?」 「あ、ありがとう佐倉さん。」 「な・・・!」 流架は戸惑いながらも礼を、棗は衝撃のセリフに言葉を失っている。 「蜜柑。私には?」 そこで登場するのが、やはりと言うか何と言うか・・・今井蛍嬢である。 蜜柑はくるりと蛍の方に向き直り、おそらく彼女の中で一番美しいであろう笑顔を向けて、 「もちろん有るに決まってるやん!ウチの中での一番は蛍やって、いっつも言うてるし!」 「そうね。」 蜜柑さん、ここで再び衝撃発言。 彼氏ができようが何しようが、本命――彼女の中で不動の一位を守るのは常に今井蛍さんだそうだ。 そしてこの発言をスルーできない人物が一人。 「ちょっと待て!俺はどうなるんだ!? 中学から毎年チョコをもらってはいるが、それも全部義理だったのか!?」 かなり必死な様子の棗。 いつもの彼らしくなく、焦っているという事が丸分かりである。 そんな情けない様子の棗に気づいているのかいないのか、蜜柑は棗の方に顔を向けて、 「何言ってんの棗。アンタはウチの彼氏なんやから、バレンタインの本命なんは当たり前やろ?」 何当たり前なことを言っているのか・・・といった風の蜜柑に棗はほっと胸を撫で下ろす。 しかしそれもほんの一瞬の出来事か。 「棗は本命やけど、蛍は別格やもん!」 「え?」 「あ、やっぱり・・・」 「当然のことね。」 飛び出した蜜柑の発言への反応は三者三様。 棗は活動停止。 流架はなんともいえない表情。 蛍は当たり前のことだと言わんばかり。 「ちょ・・・」 活動停止後、すぐに復活した棗がぼそりと言う。 「ちょ?」 それを聞き返すのは棗のそばにいる流架。 「ちょっと待てえぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!!!!」 クラス中に響き渡るような大音量。 何だ何だとクラス中からこちらに注意を向けられるのも気にせず棗は続ける。 「蜜柑!おまえの中で俺の地位はどうなってるんだ!? 俺の中でおまえは一位だと決まっているのに!!」 ぶはぁ!! がしゃん!! !!!!!!!!!!!!!!!! ずしゃぁぁぁぁぁ!! 何を言っているのか本人はわかっているのだろうか。 棗の発言に飲み物を吹きだす者、椅子から落ちる者、 目が点になる者や廊下を歩いていてそのままスライディングをしてしまうものが続出する。 「なにいきなり言い出すんや!そんな当たり前のこと訊かんでもいいやん!ウチの中で、棗は・・・・・・」 「お、俺は?」 棗、必死である。 「棗は・・・・・・・・・・・・・・友達以上蛍以下。」 さらり。 「・・・・・・・・・・・・」 「蜜柑、そろそろ教室を移動するわよ。」 「あ!うん!蛍、今行く〜」 「お〜い。棗〜・・・・・・・・・・・・生きてる?」 「・・・・・・・・・・・・」 蜜柑たちが教室を出て行った後、砂になって崩れ落ちる棗が残されたとか何とか。 お後がよろしいようで? 初☆学園アリス小説でした。 高校生verのなつみかんで蛍落ち。 これはリクエストしてくださった我が友人、三日ん月様に捧げます。 ・・・にしても、棗が壊れまっくております(汗) 原作のクールな彼はどこに・・・ |