いえね。確かにウチには子供の姿をしたのはいますけど
だからってそれをやろうなんて気にはなりませんよ。

―――店の飾りつけ?
別にそっちの方で繁盛したいわけでもありませんからねぇ
する必要もありませんって。

人生に楽しみを求めているわけじゃありませんので。
まったくもってその日に何かをしようなんて気、
今まで一度も起こったことはないんです。

むしろその日に気づくことすら稀でしたから。


ただ・・・・・・
そう。
ただキミに、会うまでは―――・・・





暖かな夜





カラコロ。カラコロ。
住宅街に響く下駄の音。

街灯によってできた影は二つ。
寄り添って、共に歩む。

カラコロ。カラコロ。

12月も半ばを過ぎた頃、
いたるところで緑と赤が目立つようになり、
夜になれば
このあたりでもキラキラとイルミネーションが輝いていた。

「・・・もしかして、もうクリスマスの時期っスか?」
「もしかしなくても、明日はクリスマスイヴだぞ?」

白い息と共に吐き出される声。
少し、風が吹いて
そのオレンジ色の髪が揺れる。

「寒っ・・・」

その首にふわりと巻かれる暖かいもの。

「えっ・・・?」

己のマフラーを自分の首に巻いてくれた本人の顔を見ると、
ソイツはニッコリと笑って、

「どうぞ。差し上げますよ。」

優しい、声で言う。

「ん。サンキュ。」

寒いから。
そう。寒いから、今夜は特別に甘えさせてもらおう。





「ところで黒崎サン。」
「ん?」

マフラーに顔をうずめていると
また、話しかけられる。

「クリスマスのご予定は?」
「あぁ、24日は午後からクラスのやつらとクリスマスパーティだろ、
んで、25日は家族とだぜ?」

そう答えると、
ソイツ―――浦原は少し考えるようなそぶりを見せて、

「そうですか。」

そう言った。





家に着いたから、本日の夜の散歩はこれまで。

「それじゃあな。あとコレ。サンキュ。」

マフラーを指で軽くつまんで言う。

「いえいえ。それでは。」

カラコロ。カラコロ。
下駄の音を響かせて浦原は帰っていった。







カラコロ。カラコロ。
下駄の音を鳴らしながら元来た道を帰る。
カラコロ。カラコロ。

もうクリスマスなんですねぇ。

今年は珍しく、そんなことに気づいた。
以前の自分なら、それがどうした・といった感じで終わってしまっていたのだが、
今年は隣に彼がいる。
彼―――自分が初めて心の底から想う人、黒崎一護が。

だから

明日の夜がいいっスかねぇ
クリスマスイヴの夜に―――・・・















コンコン

窓をたたく音。

ルキアではないだろう。
彼女なら今日はクラスの女子数人と井上(多分)の家に泊まるはずだから。(+コンで)
イヴに相手がいない女の〜とか何とか言っていたような気がする。
まあ、彼女が「イヴ」をどういうものとして認識しているのか定かではないが、
楽しんでいるならそれはそれでいいと思う。


コンコン

再び窓をノックする音。

もしかして・・・と思って窓を開けると、そこにいたのは

「メリークリスマス。黒崎サンv」

やはり、浦原喜助。
ただし、いつもと違うところが一つ・・・

「う、うらはら?」

彼の頭上にあるのは白と緑のストライプが入った帽子ではなく、
赤い三角帽子で、
へなっと折れたその先には白いボンボンがついていた。

「コンバンハ。今夜は良い子の黒崎サンにプレゼントを持って来たんスよv」

そう言って、サンタクロース浦原が取り出してきたのは、
きれいに包装された箱。

「コレはテッサイからっス。フルーツケーキだそうですよ。」
「へっ?!あ、あぁ。サンキュ。
テッサイさんにもありがとうって言っといてくれるか?」

かなりの大きさの箱を受け取って、そう返す。

「ええ。もちろんですよ。
そして、コレはアタシからのプレゼントです・・・」

その瞬間、唇に触れる温かなもの。

「んっ・・・」

すぐ目の前には浦原の整った顔。
薄く目を開けてこちらを見つめている。

「・・・ふ・・・・・・ぅ・・・・・・はぁ・・・っ」

長いような短いようなキスの後、
下を向いたままの一護に浦原は少々焦る。

「い、一護サン・・・?」
「浦原。」

下を向いたまま声をかける。

「はい?」

そして、こちらを覗きこんでいる浦原に
一瞬のかするようなキスを・・・・・・

驚いて固まってしまっている彼を
ニィっと誰もが見惚れるような魅力的な表情で見つめて、

「俺はもう子供じゃねぇからな。もらいっぱなしって訳にはいかねぇよ。」

それを聞いた浦原もすぐに元に戻って・・・・・・




ニッコリ二人で見つめあって

「「メリークリスマス」」
















クリスマスは、まだまだこれから・・・・・・・・・








「海月庵」の辻朋様にささげます。
浦一的クリスマスです。
ご希望に添えていれば良いのですが・・・汗