★あてんしょん!==>
対ドルトーニ戦終了後捏造。一護と陛下の再会+ネル。 一護は虚の力を制御可能になった後に前世の記憶を取り戻し、その上で(原作通りに)虚夜宮を ここから元となった黒幕一護シリーズとは少々異なってきます。(黒幕一護シリーズでは、一護は記憶を取り戻し、それから単身で虚夜宮へ。そして裏切り暴露で死神&現世側と縁を切ります。一応。) 陛下は基本設定のアノ陛下。人形使って遊んでいらっしゃる方です。別れの時から千年以上経っているので当時と比べると程よく御擦れあそばされました。(=今や天上天下唯我独尊状態。)でも根本はきっと同じ。 <==!んょしんてあ★
wirepuller α+ (・・・ま、こんなもんか。) 十刃落ち・ドルトーニを倒した一護は卍解を保ったまま内心で呟いた。 少々お遊びが過ぎた感は否めないが、特にこれと言った支障も無いだろう。 自分や、自分について来た破面のネルの様子からそう判断して、更に奥へと進むために一歩踏み出す。 「ネル、行くぞ。」 「わっ。ま、待ってくれっス一護!」 慌てて、追いつこうとネルが駆け出したその時。 ―――ドンッ! 「「・・・っ!?」」 背後で衝撃が生まれた。 ネルが目を見開いてもうもうと上がる土煙を見つめ、その小柄な体躯を護るように一護は素早く立ち位置を移す。 そして天鎖斬月を正面に構え、土煙が晴れるのをじっと待った。 霊圧を探るが欠片も捉えられないことから、先刻の遊んでいられるような相手では無いのかと一護の双眸が険しく狭められる。 やがて煙が晴れだし、“敵”が姿を現わした。 「やっほーv」 「・・・ッ!!!」 煙の向こうにいたのは草色の髪をした小柄な破面。 ただし仮面は全て剥がれており、身に纏う衣装と胸に開いた穴で判断するのみなのだが。 その破面は敵であるにもかかわらず、一護に向かって友好的な笑みを浮かべていた。 ふにゃりと砕けた表情に、力の無さそうな体躯。 それだけを見れば、先程戦った破面の方がよっぽど強そうに思える。 現にネルは姿を見せた草色の髪の破面にビシッと指を突き出し、強気の口調で告げた。 「おまえみたいなひょろちぃヤツ!一護があっという間にやっつけてくれるっス!」 「あはは。それは大変。」 相対する破面は、しかし笑みを保ったまま。 ネルはそんな反応に頬を膨らませて一護を見た。 「一護!あんなヤツさっさと・・・」 「逃げるぞ。」 「へ?・・・うわぁ!」 一護はネルが言い切る前に彼女を脇に抱え込み、感情の無い、しかしどこか焦ったような声で短く告げて走り出した。 「い、いい一護っ!?なんで逃げるんスか!あんなのさっきみたいにサクッと倒せばいいだけなんじゃないんスか!?」 「人を見かけで判断しちゃいけません。っていうかアイツだけは見かけで判断しないで下さい頼むから!」 懇願するように――ただしネルを小脇に抱えたまま――そう言って、一護は足を動かし続ける。 その胸中では「冗談じゃねぇ!!」という思いが渦巻いていた。 ネルが知らないのも無理は無いが、一護はあの破面を知っている。 初めて顔を合わせた時と比べれは随分“身軽”になっているが、性格そのものは殆ど変わっていないだろう。 だからこそ、あのまま逃げなければどうなっていたのかも予想がついた。 (戦る気満々の目ぇしやがって・・・。あいつが本気になったら虚夜宮がどうなるか分かったもんじゃねーんだよ。) 今まで(ほぼ)傍観に徹していたというのに――(記憶を取り戻してから気付いたことだが)例えば現世にグリムジョー達が来た時とか――、とうとう暇すぎて退屈に耐えられなくなったのだろうか。 例えそうであっても頼むから俺で暇潰ししないでくれ、と脳内で訴えながら、一護は角を曲がった。 すると。 「お疲れー。」 「・・・・・・・・・お、おう。」 かなりの間が空いて、口から出たのはそんな言葉。 正面で手を振っている『彼』を視認し、足も止まってしまった。 抱えたネルはあまりの移動速度の速さに気絶している。 「・・・速いな。」 「君が遅いんだよ。そんなもの抱えてちゃあ本気なんて出せないでしょ?」 壊れちゃうからね、と笑う破面に、一護は諦めた様子で大きく息を吐き出した。 「降参。もう逃げねーよ。」 「よしっ!それじゃあ今から一戦・・・」 「やりません。」 「えー。」 「えー、じゃねぇよ。解ってて言うな・・・ロイ。」 親しげに破面の名を呼び、力の抜けたネルの身体を抱え直しながら一護は先刻よりも僅かに大人びた顔でそう返す。 しかしスッと細められた双眸は“出来るがやってはいけない事”を前にした子供のように楽しそうな光が見え隠れしていた。 纏う空気の色を変えた一護を見て、破面、ディ・ロイは「ふふ。」と小さく笑う。 「だったら今はいいよ。諦めてあげる。・・・でもいつかは君と本気で戦ってみたいな。俺も成長したんだから。」 「考えとく。・・・まぁ、俺の大切なモンが全部消えちまったらの話だけど。もしくはそれ相応の場所がある場合かな。一応。」 「わかってますって。」 ディ・ロイは、一護が唯一己と同格かそれより上と認めている目の前の破面(つまりディ・ロイ)と戦ってみたいと思っていることを、本人が口にせずとも感じ取りながら嬉しそうに告げた。 護ることを生きる意味のようにしている一護は、実のところ正反対の破壊願望をも持ち合わせているのだ。 ・・・にこにこと笑うディ・ロイと同じように。 その破壊願望が主として最初から備わっているディ・ロイとは異なり、彼の前世に由来するものなのか、はたまたたった十六年間の人生に由来するものなのかは分からないが。 「俺達が本気で殺りあったら一体どこまで壊れてくれるんだろうね。」 「さぁな。」 ディ・ロイの問いかけに肩を竦め、一護は曖昧に答える。 ただし少なくとも王鍵創生による被害どころの話ではなくなるだろうとは考えていた。 小さな島国の、ほんの一点程度では済まない、と。 「でも今はそんなこと関係ねぇだろ。」 「うん。まぁね。」 話の切り換えに従ってディ・ロイが肯定を返す。 そして改めて一護を眺めながらふっと隻眼を緩ませた。 「何はともあれ。お帰り、一護。」 (2007.03.13up) |