生き物の一番美しい時というのは『死ぬ瞬間』・・・らしい。
(その言葉が本当なら、彼の『死ぬ瞬間』とはどれほど美しいのだろう。)







死についての考察







俺が駆けつけた時、彼は既に『死んで』いて、
近くには彼を『殺した』死神が立っていた。
(赤い死神。)
赤い髪の死神は俺の存在に気づくや否や、
何か叫んで可笑しな刀を振りかざしてくる。
でも、俺はそんなこと如何だっていいんだ。
今は。
(彼の方が大切。)

『死ぬ瞬間』ではなくて『死んだ後』だけれど、
彼はとても美しかった。
失った腕も、散らばった髪も、赤く染まった衣も、
全て全て、彼の美しさを際立たせるだけ。
きっとあの言葉は正しかったのだろう。
『後』ですらこれほどまでに美しいのだから、
『瞬間』なら、なおさらに違いない。
・・・・・・ただ気に入らないのは。
(その瞬間を見たのが俺じゃなくてコイツだったということ。)

彼の一番をこの死神に奪われたような気がした。
嗚呼。嗚呼。



「気に入らない。」



死神の斬魄刀を折って、砕いて。
唖然とする顔面に一閃。
骨の砕ける音と、肉の潰れる音と、
骨の砕ける感触と、肉の潰れる感触。
一瞬でなんか逝かせてやらない。
俺から彼の『一番』を奪ったんだ。
その償いはしてもらう。

ぶっ飛んだ体を捕まえて、殴って殴って殴って。
顔が潰れたら下に移って、また殴って殴って殴って。
胸ってのは案外脆いから、更にまたすぐ下にいって。

全身、殴りつけた。
死神の体はもうボロボロのグチャグチャのぐにゃんぐにゃん。
そこらじゅう痣になって、血が出て、関節は変な方向に曲がって。
壊れてしまった。
けれど、これは。



「・・・ちっとも綺麗なんかじゃないよ。」



やっぱりあの言葉は嘘だったのだろうか。





















美しい美しいイールフォルト。
貴方の『死ぬ瞬間』を俺はもう見る事が叶わない。
だから俺はあの言葉の真偽を確かめることもできない。
だって、俺にとって『死』とは貴方が居なくなるということで。
貴方以外はどうやったって『死ぬ』のではなく『壊れる』のだから。








イールフォルトの死だけはきちんと『死』と認識している陛下。それ以外は『死ぬ』ではなく『壊れる』。
・・・でもイールフォルトの『死』も『壊れる』と認識している場合もアリ(むしろこっちが本命)。

(2006.04.04up)