音の進む速さは1秒間に340メートル。
「グリムジョー。」 だから声が発せられてから此方に届くまでに約0.006秒かかった。 ぶっちゃけ2メートル。 それだけの距離を開けて互いの顔すら見ずに。 「ん?」 返せば、沈黙。 空耳だったかと思えるようなモンでもねーし、ちょっとばかりイラっとくる。 「・・・グリムジョー。」 「だから何だよ。」 声が苛立ってるのは何も俺だけの所為じゃない筈。 「・・・・・・」 また沈黙。 けれど何か言いたそうな雰囲気。 「ウルキオラ?」 促せば、一呼吸置いて喋りだす。 「死んだら・・・」 「あン?」 「死んだら、何処へ行くのだろうな。俺達は。」 「さぁな。」 突然何を言い出すかと思えば。 そんなことに興味は無い。 今は今。 ただそれだけ。それが全て。 「ただの虚と同じように塵になってあそこへ行くのだろうか。」 「俺が知るかってんだ。」 非力な刀で貫かれ、切り裂かれ。 塵となったモノの行き先など知る由も無い。 「グリムジョー。」 「はいはい。」 そろそろ面倒くさくなった。 欠伸をかみ殺し、なおざりな返事をする。 この声は淡々とし過ぎていて沈黙よりも退屈だ。 だけど、コイツの言葉は時に――― 「お前が死んだら、俺は何処を探せばいい?」 「・・・っ」 「俺が死んだら、お前は何処を探してくれるんだ?」 「ンなもん知るかよ。」 ―――突飛で、でも的を射ているようで。 そして他人の呼吸を一瞬止める。 結局は考えたこともなかった事柄について考えさせられるハメに。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 「・・・・・・」 俺が答えるまで何も言わねーつもりか。 沈黙に沈黙で返したら沈黙で返って来やがる。 仕方がないので溜息をつき、とりあえず何かを。 「・・・・・・死ななきゃいーんだろ。」 「?」 単純明快に答えた筈がコイツには理解できなかったらしい。 きっとコイツの頭は物事を難しく考え過ぎなんだ。 「俺もお前も、わざわざ二回死ぬ必要は無ェってことだ。」 「・・・ああ。そうか。」 「簡単なことじゃねーか。」 「そうだな。」 死んだらどうするなんて考えなくてもいい。 ただどちらも死なずにいれば良いだけ。 そしたら、探さなくても傍にいられる。
約0.006秒の距離
(2006.02.24up) |