※軍パロで、来良組VS来神組の敵対状態です。司令官はそれぞれ帝人と臨也。






「よくもまぁ、あの平和島静雄があなたの下で大人しく働いてますね。洗脳でもしましたか?」
「まさか! シズちゃんの頭の中は体質上ヘンに弄れないからね。俺はただ提案しただけだよ」
 竜ヶ峰帝人は軍司令部の中にある己の執務室にて優雅にティーカップを傾けていた。
 幼い見た目にそぐわずこの司令部の最高指令官の地位を戴く彼は質問の回答者にちらりと視線を向ける。帝人とは全く違うデザインの軍服に身を包んだ青年はその視線を受け、くすりと笑った。

「帝人君を手に入れようって」

 告げた途端、ギャリッと鉄の噛み合う嫌な音が響いた。
 瞬時に臨也が構えたナイフと、その青年に殴りかかってきた(帝人と同じ年頃の)少年のナックルダスターが火花を散らす。
「紀田君、俺は今、帝人君と話をしてるんだけど。邪魔しないでくれるかなぁ」
「あんたと帝人が同じ空間にいるってだけでも虫酸が走るんだ。さっさと消えてくれ」
「ははっ! 相変わらず帝人君は愛されてるね!」
「臨也さん。あんまり大きな声を出すと部屋の外の人間にあなたの侵入がバレますよ? それと正臣、一度退いて。非公式とは言え話し合いにやってきた敵軍の指令官を問答無用で殴りつける訳にはいかないからね」
 帝人がそう告げると、臨也と正臣の二人は揃って得物を退いた。一方は愉しげに、もう一方は憎々しげに相手を睨みつけて。
「でもよぉ、帝人。この人マジ冗談じゃ済まねーこと言いやがるし」
「正臣。ここでは竜ヶ峰指令、だから」
「失礼しました、指令」
 正臣が言い直すと、その横で臨也がくつくつと笑う。
 だが正臣が青年に噛みつく前に今度は帝人が鋭い視線を飛ばした。
「臨也さん、貴方も貴方です。あまり僕の大事な部下を挑発しないでいただけますか。それに冗談も控えてください」
「冗談? とんでもない! 俺もシズちゃんも、それに新羅やドタチンだって君の事が欲しいんだよ? 軍ごと俺達に降れなんて言わないさ。君だ、帝人君だけがこちらに来てくれればそれで充分なんだよ!」
「寝言は寝てから言ってくださいね」
 臨也の台詞を聞いても苦笑一つ浮かべる事なく帝人は冷たい青の視線で相手を見据える。
「僕が正臣や園原さん、青葉君やブルースクウェア班のメンバーを置いて余所へ行くとでも? 見くびらないでいただきたい」
 机の上で手を組み、その上に顎を乗せて、軍帽の鍔の陰からからニコリと笑った。
「僕が欲しいならあなた方の気持ちなんていらない。僕が動くに見合うだけの対価を用意してからにしてくださいね。それこそ、臨也さん、貴方の軍が僕の軍に降るくらいでないと」
「それは……大きく出たね」
「それくらい僕の意志は固いという事ですよ」
「……しょうがない。説得はまた今度にするよ」
 臨也は大仰な仕草で肩を竦め、帝人にくるりと背を向ける。正臣は苛立たしげに、帝人は微笑みを浮かべて彼の背を見送った。
 執務室の扉を開けると、人払いがされた廊下に立つ二つの影。一方は腰に刀を差した少女、もう一方は帝人よりも幼い容貌の銃を持った少年。―――非公式にこの場を訪れた臨也の案内役、と言う名目の見張り役だ。
「ご苦労様、杏里ちゃん、青葉君」
「馴れ馴れしく呼ばないでください。さっさと行きますよ」
 室内にいた正臣と同じく、青葉と呼ばれた少年は臨也に対する嫌悪感を隠しもしない。また杏里と呼ばれた少女の方も、無言とは言え決して臨也を気に入っている訳ではない事が空気から察せられる。
 さっさと己を挟んで歩きだした二人に臨也は苦笑を浮かべた。しかし特定の事象においてある意味正臣よりも凶暴な少女が臨也のすぐ近くを歩いていたため、あからさまな態度には出さなかったが。きっと今ここで彼女の上官たる竜ヶ峰帝人の「み」の字でも発しようものなら、その腰に下げた刀で一刀両断しようとしてくるだろう。
(その後は青葉君が鉛弾を撃ち込んでくる、かな)
 怖い怖いと胸中で呟きながら臨也は足を動かした。頭の中で今度はどういう風に帝人をスカウトしようかと考えながら。

(……いっそ実力行使で攫ってしまおうか)






アイリスの花束







リクエストしてくださったたんぽぽ様に捧げます。
たんぽぽ様、ありがとうございました!