wirepuller extra 1
男は思う。
もしかしたら自分は、『彼』と同じ存在になりたかったのかも知れない。 同じになることが目的で、それによる力の変化はただの副産物にすぎない、と。 そう。そうなのだ。 『彼』を自分から奪った者達に復讐したいと思ったことは偽りなどではない。 しかし同時に、自分は必死に己の唯一絶対の存在を、その面影を求めていたのである。 それに気付いた時、藍染惣右介は今まで自分がやってきた事にようやく心の底から得心がいった。 欠けていた理由のもう半分を理解するに至ったのだ。 どうして自分が死神を虚化させようと思ったのか、その理由が。 だが気付いた途端、藍染は死神の虚化から興味を失ってしまってもいた。 それは何故か。 「―――あの方のまがい物など必要ない。」 欲するのはただ一人。 たとえ同じ性質であっても『彼』でなくては意味がないのだ。 勿論、それは自分自身を含めて。 ゆえに、藍染は死神の虚化という研究から手を引くことにした。 それまでに不完全なものが何体か生まれてしまったが、どうでもいい。 『彼』ではないものに興味など抱けるはずがなかったのだから。 ・・・さあ、それじゃあ次は何をしようか。 と考えた藍染の頭に浮かび上がってきたのは、もう一つの理由。 “力” 自分の唯一絶対を奪った者達に復讐するための力だ。 ならば具体的にどうすればいい? 次に浮かんできた考えに藍染は呟く。 「そうだな。だったら私は…」 ある時、ある所に、ある男がいた。 男はただひたすらに力を求め、やがて二つ目の禁忌に手を染める。 その禁忌とは、虚の死神化。 ・・・これは一人の青年の死から始まった「終焉」にまつわる話、その一端。 |