秘密ヲ共有スル条件












「いーやーだーッ!!!もうイヤだこんな生活ー!!!」

「うるせぇよコン。」
「たたっ斬るぞ改造魂魄。」

しばらく人間としての生活を送っていた反動か、ヌイグルミの身体に戻ったコンがついに我慢の限界を突破して喚き出した。
慕っていたルキアが尸魂界に戻ったことも大きな理由の一つであることは解る。
しかしいちいちそれに優しい反応を返してやる気にもなれず(むしろ反応していてはコンが図に乗って仕方が無い)、一護はベッドの上で雑誌を捲りながら一刀両断。
加えてここ最近特に理由が無くとも具象化を頻繁に行うようになっていた白い彼も、コンに視線をやらぬまま――と言うより一護が読んでいる雑誌を一緒に眺めながら――淡々と吐き捨てる。
その後は。

「あ、一護ちょい待ち。捲るの早い。」
「はいよー。」

応え、一護がページを捲る手を止めた。

「よし、次。」
「・・・むしろお前がこれ持つか?」
「おう。んじゃ場所チェンジ。」
「ん。」

すでにと言うか元々と言うか、コンのことなど眼中に無いと言った様子で雑誌を読む二人に、平たいライオンのヌイグルミがガクリと項垂れる。
しかしそのためコンは気付けなかった。
ルキア姐さぁん、と情けない声を出すコンを見て一護と白い彼が苦笑を噛み殺しているのを。

(しゃあねーなぁ。)
『おいおい、だからって意味も無く身体貸したりすんなよ。ただでさえこいつはお前の身体で無茶苦茶やるんだからな。主に世間体及び精神面で。」
(・・・・・・・・・う。想像したら嫌な汗が出てきた。)

声に出さず呟き、チラリとコンを見遣る。
加えて一護がそう思う傍から何やらコンの呟きが聞こえてくるではないか。
しかもその内容は、

「ああ・・・今となると一護の身体に入りっぱだった頃は良かったなァ・・・。ノゾキしようがスカートめくろうが、評判悪くなんのは一護だもんなァ。気が楽ったらなかったぜ・・・」

というもので。

「・・・おいコン、てめぇまさかホントにそんなことやって・・・」

盛大に頬を引き攣らせる一護。
冗談ではない。
もし万が一自分の身体でそんなことがされていたなら、明日からどうやって生活していけばいい!?
自責以外のことで世間様から白い目で見られるのはゴメンだ!
あまりの恐ろしさに動くことすら忘れ、ベッドに腰掛けたまま固まる。
その代わりとでも言うように、一護の視界の端でゆらりと白い影が動いた。

「おい・・・改造魂魄、お前マジでンなことやってねぇよなァ・・・?」
「え、ちょ、なにその殺気・・・っ!!しかもご丁寧に刃物付きぃぃぃいいいいっ!!!」

怯えるコンに白い彼が不気味な笑みを浮かべて一歩一歩、殊更ゆっくりと近寄っていく。
しかも右手には白い斬月を携えて。
ザザッと音を立てて後ろに下がるコンだが、生憎人間とヌイグルミの体格差は大きい。
幾らもしないうちに白い彼が壁際にコンを追い詰め、金色の瞳でじろりと睨み付けた。

「・・・オイ、」
「は、はい・・・」
「お前、まさか一護の身体でンな愚かしいことやっちゃいねぇだろうなァ?」
「や、やややややっておりませんです。はい。」
「本当か?」
「本当デスッ!マジ本当!大事な一護の身体でそーんな迷惑なことやらねぇって!!いや、マジ!マジだからその剣と殺気は仕舞ってぇぇぇぇえええ!!」
「ふん・・・」

壁にピタリと張り付きながら泣き叫ぶコンに白い彼は小さく息を吐き出し、一護の方に振り返った。
その背後で瞬時に滝のような涙を止めて憎々しげに舌を出すコンの姿を見ながら、一護は努めて表情には出すまいとする。
ここでもうひと悶着起こされでもすれば、完璧に不審がった妹達が顔を出すに違いないからだ。
それに白い彼の悪ふざけも冗談半分(だと思いたい)であるし、不必要に鎮火しかけた火を再度煽る必要も無いだろう。

(とか何とか思ってたら、)
『虚か。』

橙と白、その両方が同時に窓の外―――肉眼では捉えられない遠くを見た。
次の瞬間には一護の身体から黒い着物、否、白い着物の人影が姿を現わし、数瞬迷いを見せた後、ヌイグルミから義魂丸を取り出して抜け殻になった己の肉体にそれを飲み込ませた。

「あ、一護いいのか?」
「まぁイイんじゃね?・・・コン、ちゃんと留守番してろよ。変なとこ出歩いたら、解ってるよな?」

白い彼に軽く応え、最後の台詞はニッコリと黒い笑みを浮かべて告げる。
コクコクと首を高速で縦に振るコンに「よし」と呟き、一護は窓枠に足を掛けた。
すでにその傍らに白い彼の姿は無い。
憩いの時間は終わりを告げ、またこれから赴く先に在る虚は大した物ではないと判断したためだ。
そうして一護は一人、白い死覇装を翻して闇夜に身を躍らせた。









『一護、』
(ああ。気付いてるぜ。)

雑魚虚を一撃で仕留め、その身体が白い破片となって空に消えていくのを眺めながら、一護は脳内の声に頷いた。

(すぐ傍に二人。片方は知らねぇ奴だが・・・霊圧から察するにただの死神だな。ルキアの代行で来た奴、か・・・?)
『だろうな。まぁこっちは放っといても害は無ェだろ。問題は―――』
(・・・あいつか。意外と尻尾出すの早ェんじゃね?今朝会ったばっかだってのに。)

オカッパの転校生を思い出し、一護は胸中で苦笑を零す。
そう。二つ感知出来た気配の内、知っている方はあの平子真子のものだ。
こんな場面で近付いてくるということは、すなわち早々に仮面の軍勢として一護と接触を計るつもりなのだろう。
焦りすぎだと思わなくも無いが、あちらにも何かと事情があるのかも知れない。
例えば、仲間の中にせっかちな人間がいる、とか。

(なんてな。)

一護は独り言ち、微かに口元を歪ませる。
その変化と重なるようにして一護の背後から平子ではない方の人物の大声が聞こえた。

「ああーっ!」

瞬時に「公害!」と思ってしまったが、相手は死神。
霊的存在であるからして、大声を出しても夜のご近所の迷惑にはなり得ないだろう。
一護がそんなことを暢気に考えているとも知らず、当初の予想通り黒い死覇装を纏った男―――死神は、太い眉を怒らせ、びしりと効果音が付きそうな勢いで一護を指差した。

「な・・・何者だ貴様ぁ!色違いの死神みたいなカッコしおって!!怪しい奴め!!」

敵意、と言うよりは怯えと表現したいような、しかしながらそれでは相手のプライド的な何かに傷を付けてしまいそうな、そんな微妙な表情とへっぴり腰で警戒心剥き出しの相手を一瞥する。
次いで自分の今の姿を見下ろし、一護は「確かに怪しいわな。」と呟いた。
黒い着物ならまだしも、視界に映るのは白色のそれ。
なまじ死覇装と形が一緒なだけに余計な怪しさが付加されているようにも見える。
が、それがどうしたという心境で、一護は半眼で死神に視線を送った。
相手の両方がびくりと動いたのを眺め、呟く。

「・・・そっちは何なんだよ。」
「え?お・・・俺!?」

まさかこう切り返されるとは思ってもみなかったのか、問う側から問われる側に代わってしまった死神が焦りを五割り増しで表情に出す。
それでも何とか体裁を保とうとした努力をそこかしこに――例えば冷や汗をかきながらも足を後ろに下がらせない等――見せながら、男は立てた親指で己を指差した。

「俺の名前は車谷善之助!!何かの罪でしょっぴかれた朽木ルキア女史のかわりに、この地区を任せられたエリート死神なのだ!!ビビッた!?」
「んなビビッた、とか訊かれてもねぇ・・・」

(知ってる?)
『いや、あんなザコのこと俺に聞かれても。』

笑いを喉の奥に留め、それ以上何か言う代わりに精神世界へと引っ込み中の相棒へ語りかける。
しかし目の前の死神・車谷とか言う男のことを特に知りたいわけでもなく、ただ時間潰しのつもりで告げた疑問に答えは要らない。
白い彼が肩を竦める気配を感じながら、一護も心持ち同様の動作を行なった。
この男のことなどハッキり言って今はどうでもいいのだ。
肝心なのはまだ目の前に現れていない気配の方。

(ああ、くそっ。)

顔だけを車谷に向けたままの格好で一護はスッと両瞼を閉じ、開くと同時に視線を正面へ向け直した。
そして、抑え気味の霊圧と共に姿を見せた人物へ笑いかける。

「よぉ平子、夜の空中散歩たァ随分と洒落たモンだな。でもその右の刀はちょっとこの場にゃ似合ってねぇんじゃねーか?」

現れた人物・平子真子が刀を構える前にその声で動きを止める。
彼はまさか一護が気付くと思っていなかったのか、下段と言うには不自然な位置で斬魄刀の切っ先を固定していた。

「・・・気付いとったんかい。」
「まぁな。お前も別段霊圧を隠してたってわけでもねぇんだろ?」

気を付けていれば、席官クラスの死神なら容易に感知出来る程度だ。
おそらく平子は己が斬りかかる瞬間に一護が気付くことを期待していたのだろう。
多少そのタイミングは外れたが。

「なんや、もうちょいカワエエ反応期待しとったんやけどなぁ。」
「そりゃあ残念。」

欠片も残念とは思っていない表情で一護が返すと、平子は多少ムッとしたように鼻を鳴らした。
一護は虚を斬った時からずっと右手に持っていた斬魄刀を背中に仕舞うことなく、決して警戒を解かぬまま、その不機嫌そうで、それでもどこか楽しそうな気配を纏う平子に語りかける。

「一応セオリー通りに訊いておく。テメーは何者だ?」
「仮面の軍勢・・・て言わんでももう解ってるみたいやな、おんどれ。」
「さあ、どうだろう。」

八割方認めるような答えを出し、一護は小さく肩を竦めた。
もしかしたら相手はこう考えているのかも知れない。
すでに自分達のことが市丸ギン経由で黒崎一護に伝わっていただけのことだろう、と。

(だとしたら残念不正解ってところか。)
『まぁ、普通は俺みたいな裏技なんて知らねぇしな。』

含み笑いが脳裏に響き、一護の口元も歪ませる。
そんな表情の変化を知ってから知らずか、平子は気を取り直すように頭を振った。

「まぁエエ。にしても・・・話には聞いとったけど変わった色やな、それ。」
「白黒反転してっからな。ま、時期が来ればそのうち戻るさ。」
「へぇ。」

何か含みがある言い方で平子から視線が送られる。
だがこのよう言葉だけでは到底一護と白い彼の真実に辿りつけはしない。
隠していることは(山ほど)あるが、一切合財教えてやるつもりは無い、という気分を前面に押し出して一護は微笑を浮かべた。

「おい、一・・・「おいっ!キサマら!!お、俺を無視して何話してやがるっ!!」

平子が何か言おうとした時、背景の一部と化していた車谷がタイミング悪く話に首を突っ込んできた。
途端、平子のへらへらとした表情が険しくなる。
これは少しマズイかも知れない。
表情に比例して霊圧まで敵意を感じるものに変化していくのを感じ、一護は眉間の皺を深めた。

(あンの馬鹿、さっさと逃げてりゃいいものを・・・)

白い着物の死神と制服姿の空を飛べる人間が揃った時点で(遅くともその後二人の仲が決して芳しくないことを察して)、自分だけでは対処不可能だと判断出来れば良かったのだが、それが出来る判断力は持ち合わせていなかったらしい。
訳も分からず自己主張だけは立派な死神に嘆息し、一護は念のため平子が車谷に何か仕掛けても対処出来るよう心がける。

「おいおい平子・・・テメェ何も知らねぇ死神狩るために現れたんじゃねーんだろ?」
「目障りなゴミ片付けんのも話持ち掛ける人間の役目やで。」
「ちっ、」

舌打ちし、一護は平子を睨み付けた。
素早く動けるよう片足を半歩引くことも忘れない。
そんな一護の様子に、平子は鋭かった目つきを戻して微苦笑しながら「しゃーないなァ・・・」と呟く。

「こないな所で嫌われてしもたら元も子もないわ。」
「だったらその殺気もさっさと仕舞えよ。」
「はいはい。」

平子は視線を車谷から一護に戻し、刀身剥き出しのまま斬魄刀を肩に乗せた。
霊圧の中に混じっていた敵意も消えている。

(こんなヒラ相手に殺気向けるなんてな。)

何考えてやがんだよ、と胸中で一護が呟けば、脳裏で小さな笑い声と共に応える声が響く。

『相手が“死神”だったからじゃねえ?何せ平子真子は死神嫌いの“仮面の軍勢”なんだからな。』
(ああ、確か元隊長だったのに、藍染の所為で虚化して尸魂界から追い出されたんだっけ?)
『らしいな。その後どうやってここまで来たのか、生憎俺は知らねぇけど。その義骸のこととか。』
(とりあえず死神を憎む理由にはなり得るってか。・・・そして俺は死神じゃないから勧誘?あと義骸のことは今度浦原にでも訊いてみるか。もしかしたらもしかして、ってこともあるかも知んねーし。)

この現世で、しかも高校生として暮らすならば、霊体で済むはずもない。
必ずどこからか義骸を調達してくる必要がある。
白い彼との会話でそれに気付き、一護は後日知り合いのあの男に問うことに決めた。
しかしながら、今は目の前の状態をどうするか、が最優先である。
とりあえず一護は平子への警戒を維持しつつ、背後の死神へと振り返った。

「おい、アンタ車谷とか言ったか?」
「お、おう!なんだ小僧!」
(小僧は余計だっての・・・。)
「いや、俺は黒崎一護。これでも死神でな、三番隊隊長市丸ギンと共にある任務でこっちに滞在中なんだ。ここは俺が収めるからアンタはもう下がってくれ。」

市丸の役職名に「元」を付けなかったのはわざとである。
どうせ未だルキアの情報も正確に伝わっていないらしいのだ、下手に「元」を付ける方がよろしくない話の展開になる可能性が高い。
そんな一護の意図は見事に正解し、車谷は多少戸惑いを残しつつも「市丸ギン」という強力なネームバリューのおかげでこの場から去った。

「優しいやっちゃな。」
「これでも“護る”ことが仕事でね。」

車谷の背を見送るだけで何も行動を起こそうとしない平子に、ほっと安堵しつつ答える。
さて次はどうするか。
考え始めた一護に平子は再び口を開いた。

「にしても、ホンマおんどれと市丸、仲エエみたいやな。オレの知らんこともアイツは色々知っとるみたいやし?」
「そりゃあ・・・な。」

彼ら二人がいつ何を話したのか知らないが、市丸は平子に色々と仄めかすような行動を取ったのだろう。
それでもこちらの不利益になることはないはずだ、とここには居ない男に信頼を寄せながら一護は答える。

「ふん、まぁエエ。そんで今日の本題や。・・・単刀直入に言う。一護、お前は死神やない、オレと同じ―――」

言いながら平子は左手を額の少し上まで持ち上げ、何かを引っ張るように顔の前を下に滑らせた。
と同時に、現れる虚の面。

「―――死神から虚の領域に足を踏み入れた者。・・・オレらの仲間になれ、一護。お前も腹ン中に虚を飼ってる異端者や。そないな所におる人間ちゃう。」
「それは俺が決めることであって、平子、お前に決められることじゃねぇ。」
「ンな悠長なこと言ってられんのも今のうちやで。そのうち腹ン中の虚に内側から喰い尽くされておんどれの護りたい物っちゅーやつも護れんようになる。」
「ならねぇよ。」

あくまでも不敵に一護はそう返した。
だってなるはずがない。
己の中に生まれた“虚ろ”は欲望のままに全てを喰らう怪物ではないのだから。

「根拠の無い強がりはアホの証拠やで。」
「根拠があるから言ってんだよ。」
「ほな言うてみい。」
「嫌だね。お前には教えられない。」
「市丸ギンは知ってるんやろ。」
「その問いは俺にカマでもかけてるつもりか?」

平子の返答は無言。
どうやら本当にカマをかけただけのようだ。
一護は黙りこくった相手にフッと笑い、口元に弧を描く。

「まぁいいや。その通り。ギンは知ってるぜ。」
「・・・やっぱりか。でもアイツは死神、そんでお前は死神やない。こっち側の人間のくせに市丸ギンには教えて、オレには欠片も教えられんっちゅーことかい。」
「ああ。」
「理由は。」
「単純だよ。その色々とやらを明かすための『信頼』がお前にはまだ全くと言っていいほど足りねぇんだ。」
「市丸ギンは足りとるっちゅーことかい。」
「足りてるとも。」
「大罪人・藍染惣右介に付いとった奴やで。」
「今は違うさ。」
「はんっ、」

それ以上の反論は控え、平子は最後に短く毒づくと不機嫌そうな表情を晒した。
一護はそれをじっと見定める。
しかし長くは続かず、平子が頭を振ってから一護と視線を合わせた。

「一護、お前は俺らの同類や。どう足掻いたってそれは変わらん。」
「まだ言うか。」
「ああ、言わせてもらうで。・・・せやけど今日のところは退散させてもらおか。状況も悪かったしな。ま、気長に行かせてもらうわ。覚悟しときぃ。」

そう言って教室で自己紹介を終えた後のようにひょうきんな雰囲気を纏い、平子はニッと歯を見せて笑う。
平子のそんな様子に一護は肩を竦め、最後のヒントとばかりに言い返した。

「「お前は同類だ」って言いながらまた勧誘してきたって全くの無駄だぜ。」
(何せ前提が間違ってんだからな。)

白い彼ではないのだから、胸中での呟きが相手に聞こえることなどない。
それを解っていながらあえて言わず、一護は聞いているのかいないのか微妙な態度で背を向ける平子を見送った。
ヒラヒラと手を振る様は、場所が場所なら普通の学生の下校に見えたことだろう。
生憎今は空中を歩くなどという事態になってしまっているが。

「悪い奴ではないと思うんだけどなー・・・」
『それでも相手の目的が判らねぇ限りこっちらか何もかも明かしちまうわけにはいかねーよ。』
「解ってる。悪く思えない奴が悪くないことばっかりやってるなんて保障はどこにも無いことくらいな。こっちこそ気長に時間をかけて見定めてやるぜ、アイツのこと。」

呟き、一護もその場に背を向ける。

「ああそうだ。コンの奴、ちゃんと留守番してるよな・・・?」












おまけ(?)
(帰宅してからこういう展開もアリかな、的な。)




「コンのヤロウどこ行きやがったぁぁぁぁああああ!!!!」

部屋に戻った一護は電灯を付けっぱなしの室内を見回し、死神の姿のまま――と言うか身体が部屋のどこにもないので霊体でいるしかない――絶叫した。
窓は一護が出て行った時と同様に開きっぱなし。
カーテンがひらひら揺れている。
いや、それはいい。
季節柄、それは普通の状態だ。
問題は留守番をしているはずのコンin一護の身体がどこにも見当たらないこと。
隠れている?
そんなはずはない。
人間一人分の気配はすっかりこの部屋から消えてしまっている。
しかも出て行ったのはかなり前のことだと見て間違いないだろう。
念のため押入れ等も見てみたが収穫はゼロだ。
部屋の真ん中に立ち、窓の向こうの景色を眺めた。
その顔には満面の笑み。
しかし、

『眉間に滅茶苦茶深い皺を観測。』

ぽつりと呟く白い彼の声の通り、これから人一人斬り殺してきます!と言われても納得してしまいそうな表情だった。
そんな呟きなどすでに耳に入らなくなっているのか、一護は気にした様子もなく、白い死覇装姿のままでしゅるりと斬月を包んでいる布を解く。

『いち、ご・・・?』
「抹殺けってーい★」

普段の黒崎一護からは考えられないほど軽やかな声がその口から飛び出した。
だが台詞自体は限りなく黒い。
斬月を握る手にも青筋が立つほど力が篭っている。

「改造魂魄っつっても霊圧が探れねぇわけ無いしなー。ってな訳でLet's go!」

さすが成績上位者と言わんばかりの発音で告げると、一護は笑顔のまま窓から飛び出して行った。
しかも自己最高記録を叩き出さんばかりの超高速瞬歩で。
いつの間にやら具象化していた白い彼はそのまま一護の背を見送り――あのような相棒の姿を見てしまった所為で己が(もしもの時に)コンに鉄槌を下すという選択肢がごっそりどこかで落としてしまったのだ――口を開く。

「これでもしあの改造魂魄が変なことやってたら・・・おお怖っ。」

想像し、ふるりと身体を震わせた。






















白一護が一護の保護者から双子の兄弟になってきているような・・・?

(横で雑誌読んでるし)(ちなみに原作に従うなら、一護の読んでる雑誌はおザンプ様)(ジャンプを読む白一護・・・)

あと白黒は片方がプッチンといくともう片方が冷静(?)になることが多いですね。

二人足して割れば丁度いい、くらいの。


コンに関してですが、グランドフィッシャーがすでにご退場済みなので、今回は特に何もありません。

あるとすれば、一護に発見されて「コォォオオオオンンンン!?」「ギャーーーー!」ですかね(笑)












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