「さてここで問題が一つ。お前、どこに住む気だ。」
「一護ちゃん家v」 「却下。」 「却下っスよ。」 「却下だぞ。」 場所は浦原商店の客間。 現世の尸魂界関係者プラス一護と白い彼マイナス夜一で開かれた緊急会議ならぬドタバタ会議にて、一護の疑問に答えたギンは三者から即座に否定の言葉を食らった。 順に一護、浦原、一心。 白い彼は姿を見せているものの、そういうことに関しては全て一護に任せるつもりなのか、何も口を挟まない。 そしてもとより斬月も。姿を見せることもなければ一護の頭の中で声すら出さない。 よって会議参加者五名のうち、反対3、保留1、賛成1でギンが黒崎家に住むという案は却下された。 「なんでやの一護ちゃあん。一心さんや喜助兄さんなら反対されんのも解っとったけど、一護ちゃんまで・・・。」 三者のうち最も早く反対の意を唱えた少年に対し、ギンはガクリと項垂れる。 その様を淡々と見つめながら一護は当然と言わんばかりの声で答えた。 「ウチには女の子が二人もいるんだぞ。お前みたいな家族以外の男なんぞ入れられるか。」 (さすが一護サン!) (さすが俺の息子!) (一護ちゃんてシスコンやったんかい!) 妹二人を持つ高校生の兄として告げる一護に成人三人組から心中で賛同とツッコミが入る。 その彼らの表情にも一応大きな変化は無かったのだが、なんとなく三人が思っていることを察知した白い相棒が一護の隣で呆れたように呟いた。 「・・・一護、シスコン大っぴらにし過ぎ。」 「うるさい。」 自覚は出来ているらしい。 しかし背に腹は変えられぬと言うことなのだろうか。否定はしなかった。 閑話休題。 誰よりも一護にバッサリと切り捨てられたギンは仕方なさそうに溜息をつき、「ほな、自分でみつけますわ。」とその溜息の延長のような声音を吐き出した。 「義骸のこともあるさかい、住む所くらいは兄さんに頼るわけにもいかんやろな。」 「と言うか、住む所に関しては自分で探すって此処に来たとき言ってたし。お前。」 「よう覚えてはるね、一護ちゃん。」 「記憶力が大事な高校一年生ですから。」 一護はそう答え、浦原商店店員のテッサイによってタイミングよく運ばれてきた麦茶に手を伸ばす。 そしてグラスの中でカランと氷が音を立てるのを聞きながら喉を潤した後、付け足すように口を開いた。 「言っておくが、俺はたぶん手伝えねぇぞ。新学期用に色々用意することもあるし。」 「学生さんは忙しいっスからねぇ。」 「おう。つーわけで、一人で頑張ってくれ。」 浦原の合いの手が機嫌よく入ったのとは対照的に、一護にそう宣告されたギンは「えー!」と不満を露わにする。 しかし、「一護サンと二人で家探しなんて絶対に許しませんよ。」などという呟きがあったのはこの際気にしないことにしても、結局のところ一護がそう言ったのだからこの集まりの中でそれ以外にはなるはずも無く、ギンは浦原から義骸を受け取ったのち己だけで家を探すことが決定した。 ただ一護が共にいないということに関して駄々を捏ねつつも、己だけで探すという点においては特に何も問題無さそうな顔をしているところからすると、ギンもしくは尸魂界の死神にとってそれ関係のことはさほど難しいことではないのだろう。 せめて家具や食器等の買い物くらいには付き合ってくれと繰り返すギンの相手をする傍ら、一護はそう思った。 |