「えーっと、岩鷲岩鷲っと・・・」

一角からルキアの居場所を聞きだした後、一護は弓親という死神と戦っているであろう岩鷲を探して 迷路のような瀞霊廷内を走っていた。

ただでさえ長く共に居た訳ではなく、また特出した大きさも持たない岩鷲の霊圧を 大勢の死神達の中から探るというのは意外に難しい。
加えて、岩鷲は死神ではないが近くに霊圧の高い死神が居れば 当然のごとく掻き消されて一護には感知し難くなってしまう。

「いっそのこと大声でも出して呼んでみるか・・・?」

でもそれだと近くに居る他の死神にも気づかれるしなぁ・と呟きながら一護は面倒くさそうな顔をする。
と、そこに。



ドーンっ!!



大きな爆発音と共に昼の青空に大きな光の花が咲いた。

「・・・あそこか。」












キヨワナヒトジチ











「うおおおおおおおおお!!!なんで俺だけ毎回毎回こんな追っかけられなきゃいけんーんだよォ!!」

『顔が虐められキャラだからな。』
「虐められキャラなんだ?」

見つけた岩鷲は大勢の柄の悪そうな死神達に追い掛け回され闇雲に走り回っていた。
それを塀の上からこっそり眺めつつ(人は誰しも自分の目線より上の物には気づき難いものだ)、 一護と白い相棒はポツリと零す。

「にしても、残りの一人倒してくれたみたいでラッキーだったな。」
『まぁな。アイツもそれなりにはやるみてーだ。』
「お?ちょっと肯定的?」
『そこだけ、な。でもあんなふうに追い掛け回されてんのは・・・。 さっき打ち上げたようなデカイ花火の一発や二発お見舞いしてやりゃァいいのに。』

そこまで頭が回らねぇのはマイナス点だ・と辛口の評価を下す白い彼。
そんな相棒の言葉に一護は苦笑を漏らし、それからスッと立ち上がった。

「んじゃ、そろそろ助けに行きますか。」















岩鷲は走る。
その後ろには人・ヒト・ひと。
人相のよろしくない死神の皆さんが斬魄刀を振りかざして追いかけてくる。
今は別れた一護を探せば良いのだろうがそんな余裕などこれっぽっちも無かった。

「っくしょー!あの野郎、今頃何処で何やってやがんだよっ!?」

そう言った顔は既に涙目だ。
岩鷲自身さすがに美形とは言い辛いが、後ろの彼等はハッキリ言って不細工の凶悪面。
そんな集団に延々と追い掛け回されて身体的なもの以上に精神的に厳しいものがある。
しかし色々とギリギリな状態になってしまった岩鷲に突如としてよく通る声が降ってきた。

「岩鷲!伏せろっ!!」
「っ!?」

反射的に身を屈める。
その真上、頭に巻いたバンダナを掠めるように何かが通り過ぎた。
後に続くのは数多の打撃音と蛙が潰れたような悲鳴。
そっと瞑っていた目を開けて後ろを振り返れば、オレンジ頭の死神が布に包まれた大刀を振り回していた。

「一護!」
「よっ!何とかオカッパ倒せたみてーじゃねぇか!」

一護は岩鷲を見てニッ笑い、隙ができたと勘違いして後ろから飛び掛ってきた死神数人を 視認せぬまま軽々と斬月で薙ぎ払う。
そしてタンッと石畳を蹴って跳躍し、岩鷲のすぐ傍に降り立った。

「随分とまぁ人気者だな。」
「うるせぇ!俺だって好きで追い掛け回されてるワケじゃねーんだよ!」
「そりゃそうだ。」

岩鷲の喚きに苦笑して一護は死神達と対峙する。

(さてさて。死神の皆さんにはどうやってお引取り願いましょう。)
『蒼火墜あたりでもかましとくか?』
(それもアリかな。一角みたいに何か訊きてぇことがあるわけじゃねーし。)

んじゃ早速・と一護が鬼道を放とうとしたその時。

「な・・・何しやがんだこのガキャあ!!」

死神の集団の奥から怒声が響いた。

(なんだ?)
『誰か近づいて来るみてーだけど。』

目の前の集団から聞こえる一護達以外の誰かに向けられた声はだんだん場所を移動してきているように思える。



「てめーこっち来んな!」
「す・・・すいませんっ!!」
「何だてめーは!?」
「痛い!!あっ、すいません!」
「フラフラすんなコラ!!」
「さわんな!殺すぞ!?」
「わ、すいませ・・・」



野太い怒声と何かがぶつかる音に紛れて弱々しい声が謝罪を繰り返す。
そしてとうとう、その声の主が一護達の目の前に放り出された。

「うわあっ!!」

顔を地面に強かに打ち付けたのは黒髪黒目の気弱そうな少年。
こちらを見上げる瞳は混乱に満ちている。
本来なら優しく手を差し伸べるべきなのであろうが、状況が状況なので致し方ない。
岩鷲に素早く捕らえられたその少年を見て、

「・・・・・・・・・・・・人質ゲット?」
『オイ。』

ポツリと漏らした一護にズビシッと相棒からツッコミが入った。






・・・が、しかし。

「俺ら十一番隊は護廷十三隊最強の戦闘部隊。ひきかえ四番隊は弱すぎて救護しかできねえ十三隊最弱のお荷物部隊。 ゆえに俺ら十一番隊は四番隊が大っキライでーっす!殺したきゃ殺せや!ぶっちゃけ一石二鳥だコラァ!!」

「いや―――!!!」
「ちょちょちょ、ちょっと待てえ!!キライだから死んでもいいなんてヒドすぎるじゃないか、キミ達ィ!!」

「おーマトモな反論だ。」

黒髪の少年は悲鳴を上げるし、岩鷲は拘束していた両手を離して必死に正論を言っている。
その様子を一歩離れたところから傍観しつつ呟いた一護は、「いくぞオラァ!!ぶッ殺せ―――!!!」と叫んで 突撃してくる十一番隊の皆様の方に体を向けて構えを取った。

「結局こうなるわけか。」
『さっき人質とかほざいたのは何処のどいつだよ。』
(それはノーコメントで!)

ニッと笑った一護の左手に蒼炎が渦巻く。

「破道の三十三『蒼火墜』!!」










一護と岩鷲、そして黒髪の死神少年が去った後、そこに残されたのは程よく焦げた十一番隊の隊員達だったという。






















チャドは近くに居なかったってことで。

(ここの一護ならチャドの霊圧に気づく筈だし)





白『ソイツも連れてくのか?』

黒「此処に置いて行っても碌な目に会いそうに無いし。」

白『・・・ああ。確かに。』

黒「な?」


岩「おーい、一護ー。お前誰と話してんだ?」

黒「気にすんな。」

岩「?」












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