先の戦闘結果。
勝者、黒崎一護。敗者、浦原喜助。 軽傷者一名、浦原喜助。黒崎一護によりその場で治療。 勝者から一言。 「擦り傷だけってありえねぇだろ。」 ユダンノソノゴ
「黒崎サンって強いんスねぇ。」
皆で地上に戻ったあと、夕食前のひと時。 居間で茶をすすっていた浦原がのほほんと言ってのけた。 「あれで擦り傷くらいしかしてねぇヤツに言われても嬉しかねーよ。」 いくら受身をとったにしても、だ。 おまけに降って来た岩は綺麗に避けてやがったし。 「作った本人が言うのもなんですが、義骸が凄いだけっスよ。」 そう言って、浦原はニコリと微笑む。 顔や腕などにいくつか軽めの傷を負っていた浦原だが、今は既に一護によって治療され、 勉強会を始める前と少しも変わりない姿である。 ついでに、怪我させたのは俺だから・と言って治癒の鬼道を使われた時に嬉しく思ったのは浦原だけの秘密だ。 「それにしても、本当にキミの実力には驚かされました。」 少し真剣みを帯びた視線を向けられ一護が微かに目を細める。 「やっぱり血筋だって?」 「・・・知ってたんスか。」 ハッとしたように息をついた後、浦原が静かに言った。 その様子を見て一護は「まぁね。」と続ける。 「真血って言うんだろ?俺みたいなのを。」 真血―――死神の親を持つ死神のことであり、一般的な者達よりも能力が高いとされている。 「ええ。・・・てっきりキミの死神に関する知識は朽木サンから聞いたものだと思ってたんスけど、 それを知っているとなると・・・一心サンから教えてもらってたんスねぇ。 酷いなぁ一心サンったら。それなら最初からアタシに言ってくれても良かったのに。」 それから浦原は少し不貞腐れた感じに「酷いなぁ。ズルイなぁ。」と繰り返すが、 それとは別に、一護は浦原の台詞の中にあった自分の父の呼び方に違和感を覚え口を開いた。 「一心サン、って・・・アンタと親父って結構仲いいのか?」 一護の父である黒崎一心は現在――理由は知らないが――死神業休業中の身であるけれども、 この町に住んでいる死神で、そして同じ町にこの浦原喜助も住んでいる。 なので、どうせ互いの顔や名前くらいなら知っているだろうと一護も思っていたのだが、 浦原が「さん」づけの名前で呼んでいるところからすると、どうやらそうでもないらしい。 そうして口から出た疑問は、しかし浦原にとっては驚きに値することだったようだ。 帽子の影からの覗く両目が僅かばかり見開かれる。 「へ?仲がいいとか如何とかって言うのはこの際置いておきますけど、 その言い様からすると・・・黒崎サン、もしかしてキミ、良く知らないの?」 「何に対して良く知らないのかすら良くわかんねぇけど、 少なくとも俺は親父の口から死神って言う言葉すら聞いたことねーぞ。」 「・・・・・・・・・え?」 浦原が言葉を失う。 一心からではないとすると、その情報は何処から・・・? 死神・朽木ルキアか?―――否、これは彼女が知っているはずの無いことである。 浦原が戸惑う中、一護が口を開く。 「じゃあ情報源は何処だ?なんて訊かれても上手く答えられねぇけどな。」 説明のしようが無い存在――彼の白い相棒から教えてもらったことなので上手い答えが見つかるわけもなく、 一護はそれだけを言っておくことにした。 「キミは・・・・・・本当に、何者なんでしょうねぇ。」 浦原が呟く。 そうして一護は、ただ笑った。 |