サワガシイセイカツ
先日、某強欲商人から改造魂魄を取り戻した一護たちであるが、
彼らは今、非常に悩んでいた。
「こいつのカラダ、どうしよ・・・」 「生きているものに入れるわけにもいかんしな。」 二人は改造魂魄を宿らせるための体を見つけなくてはならなくなってしまったのだ。 自力で死神になれるのを隠す一護がカモフラージュのために改造魂魄を義魂丸として使うことは出来る。 と言うか、いざと言う時にはそのつもりだ。 しかし普段は使いたくない。 何と言っても一度痛い目にあっているのだ。 一護の体に入って学校で大騒ぎし、そのあとかなりの怪我まで負ってしまった彼である。 では、一護が使わない時にはどうするのか。 「死体探すっつても、そう簡単には見つからねぇし。」 体を持たないまま改造魂魄を保管してもいいのだが、彼の叫びを聞いた後ではそんなことも出来まい。 せめて自由に動ける体を・・・と言うことで探しているのだが、実際にやってみるとなかなか困難なものだった。 「いっそヌイグルミはどうだ?」 ポツリと零すルキアの視線をたどると、そこには薄汚れたライオンの人形。 「や、やってみるか?」 「うむ。」 一護がそーっとヌイグルミの口に改造魂魄を入れる。 「「・・・」」 むくりと起き上がるヌイグルミ。 そして・・・ 「いてーな!丁寧に扱えって言ってんだろうが!!」 「「!?」」 生き物でなくても良いなんてビックリである。 とにかく予想に反して大丈夫だったことを「これ幸い」と思い、一護たちは彼の体をこの人形にすることにした。 しかし、彼に体を与えたのは間違いだったのだろうか・・・ 「コン」と名づけられた改造魂魄であるが、体を得てからの彼はとにかくうるさかった。 あの悲痛な叫びをした彼は何処に言ったのやら。 「テメーはもう少し人形らしく出来ねぇのか。」 「うるせぇ!ヤローの言うことなんざ誰が聞くか!!」 「・・・なっ!」 一護の顔が引きつる。 「この俺様がテメーのカモフラージュになってやるんだぜ? もう少し敬ったらどうなんだ。なあ、一護チャーン?」 コンは短い腕を組み、ビーズの瞳で流し見る。 ヌイグルミのはずなのになぜか表情豊かなその顔は 今の一護の怒りのバロメーターが針を振り切るのに十分なものだった。 ブチ。 鈍い音が一護のこめかみで立つ。 「ほほぅ・・・そんな事言うのか、お前は・・・」 一護はゆらりと立ち上がり、右手を軽く振るった。 「・・・斬月。」 瞬間、その手に現れたのは巨大な刃。 「い、一護・・・?」 「覚悟は良いか?ヌイグルミ。」 コンからは一護の表情が見えない。 それがいっそう恐怖をあおった。 そして、一護が刃を構える。 「ちょ、ちょい待て一護!俺が悪かったっ!」 「今さら遅い!!」 鈍く光る刃がコンめがけて振り下ろされる。 「・・・!」 両目を腕で隠したコンだが、切られた感触はいつまでたってもやってこない。 不思議に思って恐る恐る腕をどけると、その目に映ったのは肩を震わせる一護。 「一護・・・?」 コンが声をかけても一護はそのまま。 「おい、どうした?」 少しばかり心配になって顔を覗き込もうとすると聞こえてきた微かな声。 「・・・っく、は・・・はは。」 笑っている。 「はは・・・お、おかっし。必死になってやがんの・・・あ、ダメだ。腹痛ってぇ。」 今度はコンがキレる番である。 「テメェ!からかいやがったな!?マジで死ぬかと思ったんだぞ!!」 しかしコンの叫び声は一護の笑いを煽るだけらしい。 とうとう堪え切れなくなり、伏せていた顔を上げて笑い出す。 「オイ!!笑ってねぇで何とか言いやがれ!聞いてんの・・・」 一護の顔を見て、コンは叫ぶのをやめた。 「・・・あぁ、くそっ」 後頭部に手をやって柔らかな爪でガシガシと掻く。 (何考えてんだよ、俺。俺が好きなのは特盛と姐さんだけだっつーのに。) 「勝手に笑ってろ。」 ライオンがポツリと呟く。 そんな、騒がしい日々。 |