愛の言葉















「・・・好き。」












「好き・・・愛してる・・・」










一言一言を大切に。

優しく柔らかく、想いを込めて口に出す。

自分一人の部屋で、たった一人への。


窓から吹き込む夜風にカーテンはふわりと揺れ、その端が羽根のように頬を撫でていく。
空に浮かぶのは満月。
人口の明かりを灯さずに、その光だけで室内を満たす。



「好き・・・・・・好きだよ。」



たくさん在りすぎて胸から溢れ出してくる想いを言葉にして外へ。
どうしようもなく渦巻くこの感情が少しでも綺麗なものとなるように願いを込めながら。
だって、「恋」や「愛」といった感情はそんなに綺麗なモンじゃない。
グルグルグルグル胸の内で渦巻くそれは、到底相手に見せられるような形をしていなかった。
汚くて。醜くて。残酷で。自己中心的で。
・・・だからこそ、溜まる一方のそれを言葉にして吐き出す。

するとどうだろうか。

こんなにも綺麗なものになっていく。
こんなにも、自分が相手を思う気持ちは綺麗なものへとなっていく。
それが嬉しくて大切に大切に言葉を紡ぐ。


「・・・好き・・・・・・好きなんだ。」

















「へぇ・・・そのお相手は何処のどなたでしょうねえ?」



ひときわ大きくカーテンが揺れ、窓辺に影。
月を背負う姿のまま、窓辺に腰掛けた男はくつりと笑った。

いつも通り帽子を目深に被っている男に視線をやり、一呼吸。



「・・・アンタには関係ねーだろ。」
「そうですか?」



返されたのは疑問形。
そしてくつくつという小さな笑い声。



「そうだよ。アンタには関係ない・・・関係ないんだ。」



最後の方は視線を外してしまったけれど。


・・・そう。関係ない。
この想いは、この言葉は。目の前の男に何ら関係のないことだ。

ただ自分が言葉にしているだけで。
たった一人に向けながら。

・・・・・・否。この言葉は誰の方向にも向いていない。
これは誰かに受け取ってもらうための言葉ではないのだから。

ただ、胸の中の想いを紡ぐ。

言葉として外に出し、その場で留めて、そしてお終い。
風に乗せて声を届けることもなく。

望むのは言葉の結晶化。
自重で沈み、その場を動かず。


こんなことをするのは・・・たぶん、言葉の行く末がわかっているから。

言葉を届けて、それで?
綺麗な言葉を相手に届けて、それで何がどうなるというの?
弾かれて、ゴミ箱へ直行。
それが決められた未来。
ならば届けず留めた方が良いではないか。
汚いものから綺麗なものを生み出して、それで終わり。

そこが「最後」。




「関係ない・・・言い切ってくれますね。どうして?」



どうして・って・・・
届かないものを、受け取られないものを、わざわざ届ける必要もないでしょう?
だから"関係ない"。




「どうしてもこうしても・・・アンタには関係ないんだよ。」




無駄な事をするつもりはない。

つまり。

アナタに届けるつもりはない。
アナタに告げるつもりはない。

だから、アナタには関係ない。






















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浦→←一ですヨ?(なぜ疑問系・・・)








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