只今充電中











「ちーっす。」



そう言って現れたのは制服姿の黒崎サンだ。

こんな風に学校から直接来てくれるなんてよくあることで、アタシにとっては暇な午後の楽しみの一つ。
けれど、今回ばかりは違う。
近づいてくる霊圧に気づいたアタシはちょっと吃驚してしまった。
今日は絶対に来るはずないと思っていたから。
だって今、彼は―――




「・・・テスト期間中じゃありませんでしたっけ?」


試験発表がされると急に此処に来なくなって、今ぐらいの時間なら家で真面目にお勉強してるはずの黒崎サンが何故?

はっきり言て物凄く嬉しいんですけど、やっぱりどうしたのか気になる。
毎日ちゃんと予習復習してるみたいだから特に根を詰めなくてもかなりの点数は取れると思うけれども、
黒崎サンったらなんにでも妥協しない子だから・・・テストだってやれる所までやり切るんですよね。

だったら・・・


黒崎サンの訪問で嬉しさと疑問を同時に抱えることになったアタシが黙って畳の上に座っていると、
彼はスタスタと此方に歩み寄り、そのままアタシの目の前に腰を下ろした。

えーっと・・・


「黒崎サン・・・?」

どうしたんっスかー



名前を呼べば、彼はちょっと気まずそうな顔をして此方を見返してくる。
黒崎サンどうしたの?
少しばかり元気がないみたいですけど?




「あー・・・・・・悪ィ。少しだけ。」

「はい?」


その口から出された言葉にアタシはただ疑問符で返すしかなく、そうして次の瞬間には。

がばっ


「っ!?」


流石に声は出なかった。

けれどもアタシは大袈裟なくらい驚いて、それからゆっくりと視界の端に映るオレンジ色に手をやった。


「・・・黒崎サーン?どうしたんスかぁ〜?」

その細っこい体で抱きついてきた愛し子におどけた調子で問いかける。


「・・・・・・」



無言っスか。

伝わってくる心拍数は早くもなく遅くもなく。
適度に力の抜けた体をゆるく抱きしめ返し、アタシも無言でしばらく―――と。


「・・・・・・・・・っうし。充電完了。」

「?」


急にそんなことを呟いたかと思えば、黒崎サンはあっけなく離れていってしまった。

正面。
向かい合ったまま。

どちらも畳の上に座り込んだ体勢で、黒崎サンはニカっと笑った。

あ。元気になってますね。
・・・なるほど。



「黒崎サン、もういいんスか?」

「じゅーぶん。」

「定期テスト、あと二日でしたよね。」

「おう。これで残りも大丈夫だと思う。」

「それじゃ、健闘を祈ります。」

「ん。じゃあ明後日にまた来る。」

「お待ちしてます。」



彼のその背を見送ってアタシは一人クスリと笑った。

だってそうでしょう?
なんて可愛らしく愛しい子。

「アタシで元気を充電・なんて。」


明後日まで我慢できるだろうか?
嗚呼、今すぐにでも抱きしめに行きたいよ。






















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実は"二学期中間テスト"に合わせようと書いてたものです(笑)

結局、期末テストな時期になってしまいましたが。・・・それでも少し遅いかな。








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