「大虚とまで手を組んだのか・・・」
光の柱となった反膜に包まれ藍染が浮き上がっていくのを見上げ、浮竹が告げる。 「・・・何の為にだ」 「高みを求めて」 その答えに浮竹は表情をさらに厳しいものへと変えた。 「地に堕ちたか、藍染・・・!」 「・・・傲りが過ぎるぞ浮竹」 怒りに荒くなった浮竹をなだめるかのように藍染は静かに口を開く。 「最初から誰も天に立ってなどいない。君も僕も・・・神すらも」 その手は柔和さを醸し出していた黒縁の眼鏡へと伸ばされる。 そのまま眼鏡は粉々に砕かれ破片となり、また逆の手で藍染は茶色の柔らかな髪を掻き揚げた。 「だが、その耐え難い天の座の空白も終わる。これからは・・・」 額を曝し、藍染は冷たい瞳で地上の者達を射抜いた。 「私が天に立つ」 その身から発する圧倒的な力の波に彼を見上げる誰もが息を呑んだ。 空から人々を見下ろし、自身がその王であると宣言する姿。 それは、まるで――― 「・・・ラピュタ王・・・」 「・・・は?」 若々しい少年の口から出たその言葉に場の空気が一瞬にして凍った。 誰かの間抜けな一音が響き渡り、徐々に上昇していたはずの藍染たち三人もそのまま空中でストップ。 ただ、少年――オレンジ色の髪を持つ旅禍・黒崎一護に視線を向ける。 「違うぞ一護!ラピュタ王ではない!ヨン様だ!!」 突然の声。 それは傷ついた兄を抱きしめる儚げな少女から。 「なっ!?んなワケねーだろ!これはどう見たってラピュタ王だ!ムスカだ!!」 「何を言う!?ヤツの名前は藍染惣右介であろう!!」 「それならルキア!オメーも違うだろ!?ペ・ヨンジュンだからヨン様!藍染惣右介ならソウ様だっ!! ちなみに今はオールバックで冷笑MAX!!ヨン様スマイルなんか欠片も無ェ!!」 「くっ・・・!」 少女・ルキアは悔しげな表情を浮かべる。 その腕の中の兄・白哉は妹の突然の変異に目を白黒させるばかり。 「ル・・・ルキ「しかしだ一護!!」 兄の言葉は遮られ、いじける兄と妙に瞳を輝かせる妹という奇妙な光景を作り出す。 ルキアはすびしっ☆と天を指差し、不敵な表情で笑う。 「ヨン様ではなくソウ様である事は認めよう!しかし!だがしかし!貴様に藍染を"ラピュタ王"などとは言わせん!!」 そう言って、指差した先――藍染の方へ視線を向けルキアは告げ・・・否、命令した。 「藍染惣右介!!貴様、そんなところに立っておらず地上に降りて来い!! それに髪も戻して黒縁めがねの代わりにもっとフレームの細いものにしろ! 冷笑も禁止だ!貴様はあの雛森副隊長を落としたヨン様スマイルならぬソウ様スマイルで顔を固定しておけ! 首にはマフラー!!これは外せんぞ!! そして決め手に北極星を指差してこう言うのだ!"ポラリスはいつでもそこにいるよv"とか何とか!!!」 そこまで言ってルキアは一護を見た。 背骨で何とか上半身と下半身が繋がっている状態の少年は、それはそれは苦しげな表情でうめく。 もちろん、痛みではない別のものに対して。 しかし少年も負けてはいなかった。 構造的に無理なはずの上半身をぐっと持ち上げ、うつ伏せだった体を起こす。 そんなバカな!?と斬った本人は目を剥くが、無視。総無視。つーか誰にも気にしてもらえない。 少年は上半身を持ち上げた体勢で空中の藍染を睨みつけた。 なんだか先刻よりももっと憎々しい思いとかムカつくとか果ては殺気まで込められた瞳に藍染の背を嫌な汗が流れる。 「オイコラ、テメー!なに引きつった顔してんだよ!! テメーは冷笑うかべて"人がゴミのようだ!"ってしてりゃァいいんだっての!! つーかテメーの本名って他にあんだろ!?ロアイゼン・パロ・ウル・ラピュタとか!! んでもってとある少女が持ってる飛行石と天空に浮かぶ城を見つけて世界を支配すんじゃねぇのかよ!? あと黒縁の眼鏡なんざいらねぇけど、こげ茶のサングラスはしとけ!! そして最後に少年少女の二人組みに"バルス!"って唱えられて"目がぁ目がぁ!"って情けない声出せばいいんだよっ!!」 「こら一護!何を藍染に強要しておるのだ!受け子のくせにっ!!!」 ルキアが放った最後の台詞。 妙に強調されたそれに一護は顔は真っ赤に染まる。 「受け子言うな!俺はまだ一人相手にしか受けてねぇ!!」 本人、何を言っているか既にわかっていない。 「黙れ小僧!お前にサンが救えるか!ではなくて!! 道を歩くだけで受け受けオーラを放つ高校生が何を言う!? 貴様、こちらに来てからその死覇装姿で何人の死神のハートを射殺してきたと思っておるのだ!!?」 「射殺すとか言うな!!某キツネを思い出しちまうじゃねぇか!!」 少年の叫びに某キツネこと市丸ギンが「ひ、ひどいわ・・・」なんてちょっぴり泣いてしまったが気づく者はいない。 「うるさいぞ!未だ浦原にしか体を許していないといっても受け子は受け子だ!きっちり認めてもらうぞ!!」 びしぃ!と一護を指差したルキアはそのポーズのまま「ははん」と笑う。 それからハッとした表情になった彼女はすぐさま指の向く方向を藍染へと変えた。 「そうだった!藍染惣右介!!危うく貴様に言い忘れる所であったぞ!!」 その声に圧され、藍染の肩がビクリと揺れた。 「貴様、一護のことを"浦原の部下"と言ったな!?はっ・・・わかっておらんな。 このような受けオーラ漂う少年相手にあの強欲商人がただの駒や部下で終わらすわけ無かろう!! 此奴は浦原の部下ではない!!彼女だ!!!」 「俺は女じゃねぇ!!」 「うるさい!同人業界では女体化も既に経験している貴様が言うな!!」 「それを言うなぁ!!!」 突然の悪夢に襲われたかのように顔を真っ青にした一護が頭を抱える。 そんな彼に追い討ちをかけるかのようにルキアは『衝撃の事実』を口にした。 「今年の冬コミには私たちのサークルが浦一本を出す!浦原×一護だっ!!わかっておるな!?一護!!」 「わかるかぁ!!」 「(無視)ちなみにページはなんと100Pを予定!既に予約が殺到しておるわっ!喜べ!!!」 「喜べるかぁっ!!つーかなに勝手にンなもん出してやがんだ!!」 「ダメよ朽木さん!それを黒崎くんに言っちゃあ!!」 突然、第三者の声。 叫びながらも柔らかく可愛らしい雰囲気を纏うそれ。 しかし、聞き覚えのある声に一護はぎょっとした。 「井上・・・!?」 茶色の髪をなびかせて、少女・井上織姫ただ今参上。 その姿を捉え、ルキアはハッと口に手をやった。 「あっ・・・ごめんなさい、井上さん!私、つい・・・」 「・・・いいえ。言ってしまった事はもういいわ。それにしても冬コミなのはやっぱり悔しいわね・・・」 「そうねっ・・・!ごめんなさい!私が連れ去られたばっかりに・・・!」 「朽木さん!自分を責めないで!!確かに原稿が夏コミに間に合わなかったのは貴女の分が遅れたから・・・ でも、それは貴女のせいじゃないわっ!!」 そこまで言って、織姫が藍染をキッと睨みつけた。 「アイツよ!アイツのせいで私たちは浦一本を夏に出すことが出来なくなってしまったの・・・!」 「そこにいる大虚たち!!今すぐその変な光をやめなさい!! そして(ヨン様+ムスカ)÷2の人間を今すぐ引き渡すのよっ!!!」 「な、何を言・・・」 藍染の言葉は途中で切れた。 その直後、彼を襲ったのは気持ちの悪い浮遊感だ。 「へ?」 間抜けな声を最後に藍染を含む三人は地上に落下。 そして――― 「椿鬼っ!!」 少女の声と共に、この オマケ 「卯ノ花隊長!あの旅禍の少年、いかがいたしましょう・・・」 治療をすべきかどうか。 そう訊いて来た己の隊の者に卯ノ花はフッと笑みを浮かべ、 「あれだけ元気ならきっと自力で治るでしょう」 と言い、遠い遠いどこかを見つめていた。 |