共犯者
「早く抜け。」
天井の木目を見つめたまま一護が冷たく言い放った。 羞恥の欠片も持ち得ない少々きつめの言い方に男がくつりと笑みを零す。 「そんな事言わずに、もう一度付き合っていただけません?」 「ダメ。却下。今日はもうお終い。早く退け。風呂に行かせろ。」 畳み掛けるように短い言葉を連続で放つ口に「ハイハイ。」と言ってから軽く口付け、 浦原は子供に覆いかぶさっていたその身を起こす。 「最中はイイ声で啼いてくれるのに、終わればあっという間に元通りっスねぇ・・・」 「ンなの俺の勝手だろ?だいたい“処理”に関してはお互い様だ。」 「もう少し余韻ってやつも楽しんだら如何です?」 「あいにく人肌はそれほど好きなモンじゃなくてね。・・・と言っても、一人でスルよりコッチの方がイイからな。」 「ま、確かにね。」 “人肌が・・・”と”一人よりも・・・”のどちらに同意の意を示すのか図りかねる呟きを聞きながら 一護はゆっくりと褥から立ち上がった。 座り込んだままその姿を見上げて浦原が薄く笑う。 「それじゃ、お湯は先にどうぞ。ちゃんとしないとお腹痛くなるんでしたっけ?」 「まぁな。受け手の辛い所だ。」 「適材適所ですよ。」 「確かにアンタを抱く気にはなァ・・・」 想像するのも気持ち悪い・と零しつつ、一護は襖を開けて部屋を出た。 一護と浦原、両名が湯を使い終わった後、浦原はふと一護に問うてみた。 「そういや黒崎サンって今はアタシの相手して頂いてますけど、その前ってどうだったんスか?」 「は?」 自分とこういう状況になる前はどう処理していたのか訊いてくる男に一護は「アホか。」と視線を向ける。 「そんなの訊いてどうすんだ?」 「・・・ただの好奇心?」 「あぁ・・・だろうな。」 そんなもんかと呟いて一護はたった一言の答えを口にした。 「抱いてた。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」 てっきり一人でヤっていたという答えが返って来るだろうと無意識のうちに予想していた浦原は その言葉に一瞬思考が停止してしまった。 「初めのうちは一人で何とかしてたんだけどさ、いつだったかな・・・まぁそこそこのお姉さん方に誘われて? そんで抱かせてもらってたんだ。今思えばそれほどのモンでもなかったけどな。」 某お姉様受けのよろしい友人よりも恐ろしいことをポロリと吐いて一護が嗤って見せる。 しかし「そうですか。」と何とか意識をこっちに戻した浦原はふとその言葉に引っかかりを感じた。 「・・・“今”は?」 「ああ。だって今はアンタが居るだろ?アンタに抱かれてる方がよっぽど気持ちいい。 女の人には何人か相手してもらったけど比べモンにならねぇな。・・・さすがは年の功ってところか。」 「あと避妊の心配も要らねぇから楽だ。」と付け足す子供になにやら空恐ろしいものを感じなくも無いが 浦原も“今”には満足しているのでそれに苦笑で返した。 「そりゃァ良かった。アタシもキミよりいい子は抱いたことが無いっスよ。」 「お世辞でも何でも嬉しくねぇよ。そんなモン。」 「アリャ。そうっスか?」 「一応男なんで。」 「あはは。」 確かにそうだと浦原が笑った。 |