続・黒崎隊長物語。
護廷の総隊長・山本元柳斎重國の元へ赴き所用を済ませた後、
一護と浦原は瀞霊廷内にある自分たちの屋敷に戻っていた。 「ただいま〜」 そう言って一護が玄関の扉を開ける。 続いて浦原も中へと。 「お帰りなさいませ、浦原様に黒崎殿。」 「ただいまテッサイ。」 二人を迎えた握菱テッサイに浦原がニコリと返す。 四大貴族には及ばぬものの結構な広さを持つ一護の屋敷には、浦原をはじめ浦原商店の店員達も共に住んでいた。 しかもただ同じ所に住んでいるだけでなく、テッサイたちはこの屋敷の管理、 簡単に言えば掃除洗濯といった生活に関すること全てをこなしてくれているのだ。 一人、もしくは浦原と二人で住むにはあまりにも大きすぎる屋敷を与えられている一護としては 彼らの存在に内心大変感謝していた。 「おかえりなさい・・・」 「おっかえりー」 テッサイに続いてウルルとジン太も一護たちを迎えた。 「おう、ただいま。」 こちらでも幼い姿のままの二人に一護は微笑む。 それから草履を脱いで上がり口に片足を乗せ・・・とその時、テッサイ・ジン太・ウルル以外の人物から声がかかった。 「お帰り黒崎くん!」 「お、井上。ただいま。もう帰ってたのか?」 「うん。無事合格できましたよー」 「他の二人も?」 「もちオッケーでした!」 右手を額に当てて敬礼のポーズをとりながら笑うのは、一護の高校時代の同級生・井上織姫。 魂が一護の霊力に影響されたためか、彼と同様に彼女も十台半ばの姿をしており、 さらにあの頃のふわふわとした優しい雰囲気も健在である。 それはともかく。 この場にいるはずのない人物の登場と、それが当たり前であるかのように織姫と会話する一護に 浦原はしばし思考が追いつかなかった。 「・・・・・・えーっと。黒崎サン、これは一体どういう・・・」 「あ、悪ぃ!言ってなかった!井上たちさ、今日からここに住むことになったから。」 「よろしくお願いします。」 一護は苦笑し、その隣に立って織姫がぺこりと頭を下げる。 「それは構いませんけど・・・よく見つけられましたね。この世界で。」 浦原が少し感心するように言った。 尸魂界は広い。 現世からやって来た魂が住まう場所である郛外区、通称流魂街は 瀞霊廷の周りを東西南北に分け、それぞれに一から八十までの区画に分けられている。 そんな所で知り合いを見つけるというのは随分と可能性の低いものなのだが・・・ 「あ、それね。実はこの前真央霊術院の入学試験があっただろ? そん時に学院の前を散歩してて偶然見かけたんだ。」 「やっぱこっちで生活していくには死神になるのが一番いいと思いまして。」 そう言って、安易な考えとは思いますけど・と織姫が苦笑する。 ついでに彼女の話からすると、先程の織姫の「合格できた」というセリフは、 つまり、無事に真央霊術院に合格したということだったのだろう。 「そうですか・・・って、お話を聞いているともうお二方いらっしゃるんですよね?あの、それってもしかして・・・」 今まで一護の隣にいたために気づくのが遅れたが、なにやら知っている霊圧を感じて浦原が奥を覗き込んだ。 「僕たちもいますよ。」 「・・・お世話になります。」 現れたのは石田雨竜。そして茶渡泰虎。 どちらもやはり十台半ばの姿をしている。 「石田が死神になろうとするなんて思っても見なかったけどな。」 一護が雨竜のほうを向いてニヤリと口角を上げる。 雨竜も雨竜で一護に向けてフッと笑い、指で眼鏡を押し上げた。 「僕もそれなりに成長したつもりなんでね。いつまでも憎い憎いと言ってるわけじゃない。 それに、滅却師の力を持った死神がいるっていうのも結構いいんじゃないかな。両者の橋渡しのような存在として。」 「左様で。」 そう言って、一護は浦原の方に振り返る。 「つーことで、こいつらも一緒に住むから。」 もちろん部屋はそれぞれ離れの方になるけど・と付け足す一護に一応は安堵を覚えながらも、 「わかりました。」 と、へらりと笑った浦原はどうにも邪魔者が増えたような気がして、後でこっそり溜息をついた。 |