最近、少々困ったことが出来た。
今まで嫌になるくらい生きてきたけれど
こんなことは初めてだ。












Notice My Heart











「オイ、下駄帽子。何見てんだよ。」
「いえいえ。そんな事はありませんよ。」
「・・・・・・・・・あっそ。」

今アタシの目の前に座って、テッサイが作ったお菓子を食べているこの少年。
日本人には、いや、世界中どこを探しても 稀に見るオレンジ色の髪をもった子供。

何故か最近、気づくとこの子を見ている自分がいる。
目が合うと、体に甘い痺れが走る。
声を掛けられると、言いようもない喜びを感じる。
笑いかけられると、このまま死んでしまうのではないか・と思ってしまう。

でも、アタシ以外の誰かに笑いかけているとき
アタシは胸の辺りがとてつもなく苦しくなるのだ。
なにもかも全てこの子限定の現象。

この子の行動一つで
一喜一憂する自分。

今だってほら、この子がアタシのことを気にしていると言うだけで
アタシはこんなにも喜んでいる。
今までのアタシなら考えられなかった姿だ。


困りましたね。


この子と出会ってから些細なことで感情が揺れ動くようになった。
冷静沈着冷酷無比とうたわれた、あの浦原喜助が。
でも一番困ってしまうのが、

(・・・嫌じゃないんスよね。こんなアタシが。)

この状況を良しとしている自分だ。








「なぁ、やっぱアンタどうしたんだよ。」
「・・・ハイ?」
「なんかいきなり黙り込んじまうし。」

おや、ずいぶんと考え込んでしまっていたようだ。
こんな状況でさえ、彼が自分を気に掛けてくれたことに
途方もない喜びが湧き上がる。

「大丈夫ですよ。別にどうという事も無いですから。」
「そう見えねぇから言ってんだけど?」
「そうっスか?」
「うん、そう。」












「えぇっと、まあ。ちょっとですね。」

ああ、沈黙に耐え切れなかった。
こんなことも以前のアタシにはありえなかったことだ。

「ん?」
「え〜と。最近、少々困ったことがありまして。」

この瞳に見つめられると、何故か逆らえなくなってしまう。

「困ったこと?」

・・・ここまで来たら、最後まで話してみるべきでしょうねぇ。

「最近、ある人の行動一つで一喜一憂してしまうんスよ。
それがあまりにもアタシらしくなくって、なんだかなぁ・と。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へぇ」

その沈黙が痛いですよ、黒崎サン。

「あ〜あのさぁ。」
「?」
「アンタのそれって、恋煩いじゃね?・・・つーか惚気か。」


















ああ。なるほど。
アタシは彼に恋をしているのか。

これが、恋。
多分これは初めての感情。
キミのためだけにアタシが初めて持ったもの。
これまでの長い人生の中で、キミのためだけにずっと取って置いたもの。

悪くない。むしろ大歓迎だ。

「でさぁ、いったい相手は誰なんだ?
アンタがそんな風になるような女性ひとなんだろ?
ここまで言っちまったんだから、ついでに白状しちまえって。」

どうやらアタシらしくない一面を見て、彼は呆れながらも少々機嫌が良いらしい。
眉間の皴が一本少なくなっている。

「そんなに知りたいですか?」
「おう。いっつもヘラヘラしてるアンタがそんな風になるんだからな。」

キラキラ。
好奇心で目が輝いてますねぇ、黒崎サン。

「じゃあ、簡単に会える方法をお教えしますよ。
黒崎サンがご自分で鏡を見てくださるだけで結構ですから。」
「・・・・・・・・・え?」
「アナタが好きですよ、黒崎サン。
好きすぎて、困ってしまうぐらいに。」

ニッコリと。笑顔が自然に出てくる。

「え、おまっ、ちょっ・・・えぇ?!」

おや、耳まで真っ赤ですねぇ。
混乱のためか、それとも。


「か、帰るっ!お邪魔しましたっ!!」

ドタバタドタ・・・ガンッ!ドタバタドタバタ。ガラッ!ピシャリ!









あ、痛そう。大丈夫でしょうか。
それにしても、あっという間に帰られてしまいましたねぇ。

でも、逃がす気はありませんから。
覚悟してくださいね。黒崎サン。
せっかくアナタが自覚させてくれた気持ちなんですから。

それじゃあとりあえず、

「テッサーイ!ちょっと出掛けてきますねー!」
















まずは愛しいあの子の所へ。























浦原さん自覚編でした。告白編?

副題は乙女浦原(とカッコイイ一護)を書こう!です。

な、なってない?

うん、まあ。ここは所詮、自己満足サイトですから(オイ)












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