遊び
これは遊び。
だから、愛や恋なんてモノではない。 滑らかな肌の上に指を滑らせる。 「・・・ん。」 きちんと反応を返すカラダ。 男のアタシが男の彼を組み敷いているこの状況。 何十年何百年も生きていれば、男女どちらとも抱きなれてしまって、 特にこれといった感慨も無い。 これは彼とアタシの契約。 いや、アタシにとっては、こんなもの契約ですらない。 ただの遊び。 人を抱くなんてこと、現世に来て久しくしていなかったから。 彼から言い出してきたこの関係。 ちょうど良いと思って、彼を抱いた。 彼のカラダは思っていたよりも具合が良く、 自分はなかなか良い判断をしたと思っている。 カラダはつなげるけれど、彼と口付けを交わすことはない。 もちろん愛を囁くことも。 オレンジ色の子供は、ただ温もりが欲しいだけらしく、 彼にとって互いの気持ちを確かめ合う方法であろうキスや言葉を 必要としていなかったから。 こちらも愛なんて持ち合わせていなかったから、 この行為だけに集中出来てよいのだけれど。 そんなことを考えながら、気まぐれにふと彼の顔を覗いてみると 目から流れ落ちる、どこまでも透明な雫。 ・・・・・・泣いてる。 「どうしたんスか、黒崎サン?」 突然問いかけられたからだろうか、彼の反応が鈍い。 その間も流れ続ける雫を見て、唐突に思った。 (ああ、もったいない。) 思ったのと動いたのはほぼ同時で、 彼が流す涙を舐めとる。 優しく、優しく。 まるで、愛しいものをを大切にしようとするみたいに。 どこまでも優しく。 「・・・っ!何してんだよ。いきなり・・・!」 胸に手を付かれ、押しのけられたので それに素直に従う。 「何って・・・いきなりなのは黒崎サンっスよ? どうして泣いていらっしゃるんですか?生理的なものではないでしょう?」 彼ははっとして、自身の右目あたりに触れる。 アタシがまだ触れていなかった彼の右目は 未だはらはらと涙を流していた。 「何だよ。コレ。」 どうやら本人にも分からないらしい。 「何なんだよ・・・っ」 ひとり呟きながら涙を流すオレンジの子供。 「黒崎サン?」 声をかけるが涙は止まらない。 (ああ、だからもったいないんですってば。) 彼の目から零れ落ちる雫は、なぜかとても甘い味がして。 (泣かないでください。キミが泣いているとアタシは・・・) ・・・・・・・・・アタシは? アタシが何だって言うんですか。 霊力が馬鹿でかいだけの、ただの子供に対して。 アタシは今、何を思った? 眉をしかめる。 そんなはずはない。 < もう何も感じなくなって、氷のように冷たいこの心に そんな感情あるはずがない。 何よりこれは、ただの遊び。 そう、遊びなのだ。 愛でなければ恋でもない。 そう、遊びのはずなのに・・・ はず、なのに。 |