契約









これは契約。
だから、愛や恋なんてモノではない。















自分の肌の上を他人の指が滑っていく。

「・・・ん」

それに素直に感じる俺。
男であるはずの俺が、
男のコイツに組み敷かれているこの状況。

別に不満は感じない。
これは俺とコイツの契約なのだ。

たまたま近くにいた相手がコイツだったから、
たまたまコイツが了承してくれたから、
なのだけれど。

愛をささやく睦言も、優しくキスを交わすことも無い。
異色な俺にはお似合いの行為。

愛や恋、気持ちの類が欲しいわけじゃない。
相手の心なんて欲しくない。
抱きしめて、抱きしめられる。
自分とは違う誰かの体温を感じる。
そんな安心感を得るために
そんな空虚感を埋めるために
俺はコイツに抱かれる。

コイツの考えてることなんて分かるはずもねぇが、
別に嫌悪感を抱いているわけではないのだと思う。
というより、何も感じていないのではないか?
組み伏せているのが俺であろうと無かろうと。

息遣いが少々荒くなったりして、ちゃんと身体は反応する。
ただ、身体の快感を得ているだけ。


この契約を破棄する権利はコイツにもある。
だから、気に入らないなら止めてしまえばいい。
そう、止めてしまえば・・・















「どうしたんスか、黒崎サン?」

突然の問いかけに反応が遅れる。

「・・・っえ?」

俺はそれ以上言葉を発することができなかった。
次にコイツがとった行動に驚いて。

コイツの顔が近づいてくる。
そして目尻にやわらかい濡れた感触。

コイツは何をやっている?
今まで触れた事の無かった場所に
何故こうも優しく触れる?

コイツの舌が目の周りを舐めていく。



「・・・っ!何してんだよ。いきなり・・・!」

コイツの胸に手を付いて押しのける。
抵抗は無く、すっ・・・と離れていく温もり。

「何って・・・いきなりなのは黒崎サンっスよ?
どうして泣いていらっしゃるんですか?生理的なものではないでしょう?」

その言葉にはっとして、俺は自分の右目のあたりに触れる。

コイツがまだ触れていなかった右目は、
はらはらと涙を流していた。

「何だよ。コレ。」

わけが分からない。
コイツが契約を破棄するかも知れないのだと
気に入らなかったら止めてしまうのだと
そう思ったときに溢れ出した無意識の涙。
そして生じた、分からぬほどにかすかな胸の痛み。

「何なんだよ・・・っ」
「黒崎サン?」

やや眉をしかめたコイツの顔。
ああ、このままでは嫌われてしまう。
面倒くさいガキだと思われてしまう。


コイツが俺から離れてく。


増していく痛み
とめどなく溢れ出す涙

わかんねぇよ・・・っ





















これは契約。
愛でなければ恋でもない。






そう、契約のはずなのに・・・










はず、なのに。























く、暗い・・・!浦←一っぽいですねぇ。

これ、浦原視点の「遊び」と対になってるんですよ。

ですので、良ければ読んでみて下さい。

きっと浦一になるはず。いや、浦→←一かも。(ぇ












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