「お疲れーっ!」
「いやーついに終わっちまったなぁ、俺達の出番」
「ぐっちょんぐっちょんのめっちゃくちゃだったねぇ」
「ペトラ、笑顔でんなこと言ってる暇があったらとりあえず血糊を拭け」
 ドラマ『進撃の巨人』第22話を収録し終えた現場では、今回ついに死亡してしまったリヴァイ班のメンバー、エルド・ジン、グンタ・シュルツ、ペトラ・ラル、オルオ・ボザドが和気藹々と互いの労をねぎらっていた。
 己の首元に巻いていたクラバットを取り外したオルオは、演技中とは異なり表情筋を思い切りリラックスさせた状態で傍らにいる紅一点の頬についた血を拭う。ペトラの方も演技中とは異なり、それを嫌がるでもなく当然のように受け入れていた。あまつさえ「ほら、綺麗になったぞ」「ありがとー」という、なんともほのぼのしたオプションつきだ。
 そうしてオルオを邪険にしないペトラと演技中よりも若干どころか大幅に美形度を増したオルオ――奴は普通にしている時の方がイケメンだというのはキャスト全員が一致した見解である――をにこやかに見守っていたエルドとグンタの耳に、聞き慣れた二人の声が届いた。
「お疲れ様でした、みなさん!」
「これでお前らと演じるのも最後か。楽しかったぞ」
「「「「エレン! リヴァイさん!!」」」」
 現れたのはエルド達と同じく未だ調査兵団の衣装を着こんだままの今作主人公エレン・イェーガーと、自分達の上官役を演じるリヴァイ。二人ともそれぞれ花束を二つずつ抱えており、鮮やかなその色彩に女性であるペトラが最も早く反応を示した。
「わぁ、綺麗ですねその花!」
「今回の撮影で終了されてしまうみなさんに。オレとリヴァイさんから」
 カメラの前で演じている時とはまた違う穏やかな笑みを浮かべてエレンはペトラに花束を差し出す。合わせてリヴァイも手に持っていた同じ形のものをエルドとグンタに渡していた。エレンが持っていたもう一つはオルオに渡り、受け取ったオルオは表情を崩して「ありがとな」と実に嬉しそうに笑う。
「ありがとう、エレン。ありがとうございます、リヴァイさん」
「いや。礼を言うのはこちらの方だ。お前達のおかげで俺達も良い演技ができた。感謝する」
「リヴァイさんにそう言って頂けるなんて……!」
 畏れ多いですー! 恥ずかしいですー! と四人は口々に赤い顔で告げる。
 それを微かながらも笑みを浮かべて眺めつつ、リヴァイが「その感謝のしるしと言っちゃあ何だが……」と口を開いた。
「今日は俺のおごりでメシ食いに行くぞ。酒も好きなだけ飲め。ただしエレンはソフトドリンクだけだがな」
 途端、わっと弾ける歓声。
 ごちになります兵長!! と示し合わせたように四人とエレンがふざけて敬礼すれば、リヴァイもまた口元を緩めて右手を左胸に当てる。
「おう。好きなだけ騒ぎやがれ俺の可愛い部下共」







2013.09.09 pixivにて初出