それはクリスマスが終わって大晦日と正月が来る前の、日本人ならばそれ相応に忙しいある日のこと。


「にーちゃん誰や?」
 初めてその人物を見かけた時、志摩廉造は恐ろしいなどとは欠片も思わなかった。
 廃墟も同然の寺の裏で膝を抱えて顔を伏せていた青年が廉造の声に反応してゆるりと顔を上げる。青い、青い、宝石のような双眸が幼い廉造の姿を捉えた。
「……俺?」
 声に合わせて青年の身体に灯っている青い炎≠ェかすかに揺らめく。
 古くから魔を祓う家系に生まれた廉造にとって青い炎は怨敵の証だ。しかも七年前には東洋・西洋問わず、多くの聖職者達がこの青い炎によって命を失っている。『青い夜』と称されるその惨劇の記憶は幼い廉造にはないけれども、親や兄姉達から散々その時のことを聞かされて育ったため青い炎は憎むべき敵だと認識していた。
 けれども。
「お、おん。にーちゃんや」
 気圧されたのは恐ろしかったからではない。青年の身体に灯った青が、青年の両目に埋まった青が、あまりにも美しかったからである。
 身に纏う青い炎以外にも、耳は長く、喋る時に見えた口の中には鋭い牙があった。だから青年が人間ではないのだと一目で判るのだが、あえて彼を人間の年に当てはめるならば、その姿はちょうど廉造の兄であり志摩家の次男である柔造と同じかもう少し下ぐらいに見える。
 青年は廉造に視線を向けたまま何度か瞬いた。寝起きのような気だるげな仕草に、何故か幼い廉造の心臓がドキリと大きく脈打つ。そんな自分自身の反応を不思議に思いながら廉造は相手の応えをじっと待った。
 やがて青年はまるで幼子のように、ことり、と小首を傾げ、
「お前、俺が見えてんだ?」
「見えとるよ」
「ふーん。まだそんなちっせぇのに魔障受けちまってるんだな」
 哀れむように、楽しむように。薄く笑みを浮かべた。
「俺さ、一応人間の格好はしてるけど、諸事情でコールタールと同じくらいなんだよね。存在感ってやつが。だからお前がよく一緒にいる目つきの悪ィガキには俺のこと見えてねえみたいなんだわ。あいつ、魔障はまだ受けてねえみたいだし」
「坊のこと言うてはんの?」
「あ、うん。たぶんそいつ。お前ともう一人がそう呼んでた気がする」
「へぇ」
 もう一人、とはきっと子猫丸のことだろう。
「にーちゃん、俺らのこと知ってはったんやね」
「知ってるつってもたまたま見かけただけなんだけどな。ここの寺の子供だっけ? お前ら仲良いの?」
「おん。幼馴染ってヤツや。でも俺と子猫さんは坊の護衛みたいなモンでもある……かも」
 何せ坊こと勝呂竜士は志摩廉造や三輪子猫丸の家系にとって守るべき血統を継ぐ者だ。今はまだ同い年の子供として共に駆け回ったりしているが、大人になれば自分達は勝呂を守護する従者になる。
 廉造がそう教えると、青年は「人間ってめんどうだなぁ」と小さく苦笑を漏らした。
「悪魔には、そぉいうん無い?」
「血統云々ってやつ?」
 青年の問いに廉造はこくりと首を縦に動かす。
「やってにーちゃん、青い炎持っとるやん。それ、祓魔師やったらみぃんな怖がる最高血統やで?」
 廉造の知識では物質界・虚無界共に青い炎を持つのは青焔魔だけとされている。しかし今目の前にいる青年からは話に聞いた恐ろしさなど欠片も感じられない。それにサタンは力が強すぎて物質界に対応する物が無く、憑依という形でこちら側に長時間顕現することはできなかったはずだ。ゆえに青年はサタンではなく、けれども青い炎を持つからサタンに連なるものだと考えられた。
 と、廉造が補足説明を加えると青年は目を丸くして呟いた。
「……お前、ちっこいくせに頭いいなぁ」
「これぐらいできひんかったら他人の護衛なんぞやってられへんって。そぉいう風に育てられとる」
 特に廉造は志摩家の五男坊であるので、家を継ぐという役目はなく、主人の血筋を絶やさぬよう身を呈して相手を守護することが仕事になる。主人となる勝呂は当然だが、子猫丸も三輪家を継ぐ長子であるため、同じ祓魔の家系であっても彼らは廉造ほどそういったことを強制されずに済んでいた。
「嫌じゃねえの?」
「イヤも何も、それしか知らんと育ってきたからなぁ」
「色々諦めてんだな、お前」
 その声に哀れみは含まれていなかった。
 ただ事実を確認するかのように青年は青い瞳でじっと廉造を見つめ、時折、眠そうにその青を瞼の裏に隠す。
 初対面の、しかも悪魔にここまでぺらぺらと自分の事情を話してしまったのは廉造自身驚きだが、青年の態度を見ているとそれも仕方のないことかもと思えた。この人(悪魔だが)なら余計な感情を交えずにこちらの吐き出したい物を淡々と受け止めてくれるのではないか。そう思わせる雰囲気を持っているのだ。
「そやね」
 だから廉造は素直にそう答えることができた。
「なあ、にーちゃん。名前、なんて言うん? 俺、志摩廉造いいますねん」
「俺? 俺は、燐」
 名前というのはその存在を縛るものであり、そう易々と教えて良いものではない。特に魔を滅する家系の廉造や、その対象となるはずのこの悪魔の青年などは。しかし廉造は燐が自分を害する存在だと思えず、まだ燐も廉造に対して同じように思ったのだろう。あっさりと名を教え合うことができた。
(それにたぶん、嘘は吐いとらんみたいやし)
 青い目を眺めながらそう思う。燐というのは本当にこの青年の名前なのだろう。
「燐、か。俺のことは好きに呼んだってや」
「じゃあ廉造……あ、『れん』の方が呼びやすいかも?」
「せやったら『れん』でも構わんでー。まぁよっぽど奇抜なモンで無い限り解るさかい」
「ん」
(あ……)
 ふわり、と燐が微笑みを浮かべる。それを真正面から受け止めた廉造は先程よりももっと強く心臓が脈打ったのを感じた。しかも今度はそのドキドキが治まらない。なんでや? と混乱しているうちに顔面まで熱くなってきて、燐にどうかしたのかと小首を傾げられてしまった。
「れん?」
「なっ、なんでもないんや。ちょぉ暑いかなーって」
「今、冬だぜ」
「う」
「変なれんぞー」
 くすくすと燐が笑い声をあげる。
「お前、面白いなぁ」
「この場で言われてもあんま褒められてる気ぃせえへんのやけど」
「ちゃんと褒めてるって」
「ホンマに?」
「ほんまに」
「せやったら別にええけど……」
 それに笑う燐を眺めるのは何となく良い気分になる。ふわふわと身体が軽くなるような、そんな感じだ。
 廉造は燐の隣に腰を下ろすと「なあ、燐」と語りかけた。
「燐はいつからここにおったん?」
「さあ……気付いたらここにいたって感じなんだよなぁ」
「まさか寝ぼけとるん?」
「んー、そうかも。いっつもこんな感じ。本体≠ェ移動すると俺もそれに釣られるから」
「本体?」
「そ。俺、コールタール並の存在感だって言ったろ? 普通、人型の悪魔ってヤツは人間に憑依してるから魔障を受けてねえ人間にもいる≠チて意味では見えるモンだけどさ、俺はそうじゃない。その理由が、俺の心臓が封印されてるからなんだ。で、その封印先が今の俺の本体ってワケ」
「ちゅーことは、燐の心臓が封印されてる物がここの近くにあるんやね」
「せーかい。まあ、近いっつっても数メートル程度じゃねえけどな」
「何に封印されとるん? やっぱ鏡とか玉(ぎょく)とか?」
「なんだよ、れん。お前、俺の本体を探すつもりか?」
「やってそこまで言われたら見てみたいやん」
 唇を尖らせて廉造がそう言えば、燐は一瞬だけ目を丸くして、それからしばらく考え込む仕草を見せた。
「燐?」
「……れん」
「なんや?」
「俺の願いを一つ叶えてくれたら俺の本体が何か……もちろんそれが保管されてる場所も教えてやるけど、どうだ?」
「何を要求されんのか判らんとか、悪魔の取引っぽい響きやねぇ」
「だって俺、悪魔だしー。あ、でも命とか魂を取ったりはしねえぜ。あとたぶんお前やお前の大切な奴はぜってぇ傷つけねえ」
「たぶんって何ですの」
「じゃあ絶対」
 言い直す燐に「ええ加減やなぁ」と苦笑しつつ、廉造はひたと青い目を見据えた。
 そして、一呼吸置き。

「……ええで。教えて、燐の本体」

「オーケー。契約成立だ」
 告げて、燐が立ち上がる。
 立ち上がった燐はまだ座ったままだった廉造に「来いよ」と手を伸ばした。廉造がその手を取るといとも簡単に子供の身体を抱き上げ、勢いよく地面を蹴る。
「っ、ちょ、燐っ!?」
「ちょっと我慢なー。すぐ連れてってやるから」
 廉造を抱きかかえ、燐は屋根や木々を足場にして猛スピードで走る。
「俺の心臓が封印されてんのは刀なんだ」
「か、かたな?」
「お前も知ってるかもな。倶利伽羅っていう、確かお前ら明王陀羅尼宗の本尊とか何とか」
「はあ!? そないなモンにサタン関連の悪魔の心臓が封印されとるんかい!」
「そう。ビックリだよなー」
「うえええ……なんやとんでもないこと知ってしもたような気ぃしますわ」
 燐のような青い炎を持つ悪魔が物質界に存在していることどころか、その封印先が明陀の本尊だなんて。まだ十歳にもなっていないのにちょっと重要機密を知りすぎじゃないのかと廉造は思う。
 だが、
「じゃあ今からでも止めておくか?」
 その燐の発言に廉造は首を横に振った。
「いやや。ちゃんと燐の心臓が封印されてるやつ、見る。そんで燐の願い事叶えんと」
 子供故の好奇心、ではない。
 そもそも志摩廉造という人間は子供のくせにかなりの面倒くさがり屋で、厄介事はなるべく避けて通ろうとする性質を持っている。にも拘わらず、今だけは、この青い炎を纏う悪魔に対してだけは、何かを諦めるつもりになどなれなかった。今廉造の胸にあるのはただの好奇心などではなく、もっと強く深いものだ。
「(人間が悪魔に魅入られるってこないな状況を指すんやろか……)」
「れん? 何か言ったか?」
「なんでもないでー」
 ふるふると首を横に振る。ついでに抱きかかえられた状態のまま燐の肩口に頭を預ければ、少し抱き止める腕の力が強くなったような気がして、廉造は口元にゆるりと弧を描いた。



* * *



 二人は明陀の本尊・降魔剣『倶利伽羅』が保管されている所までやって来た。
 薄暗い部屋の中、台に置かれた長い桐の箱を燐が指差す。
「これが俺の本体。ちなみに俺は触れないようになってる」
 だから代わりに箱を開けてみて、という言葉に従って廉造は桐の箱に手をかけた。中に入っていたのは反りの小さな日本刀で、抜刀できないように鞘には封印のための呪符が貼り付けられている。
「これが明陀の本尊……。初めて見たわ」
「まあ、本尊って言うわりにはしょっちゅうここから持ち出されてんだけどな」
「え、そうなん?」
「俺の心臓をこの剣に封印した奴とかその関係者が定期的にチェックしてるんだ」
「そん時は燐も一緒に移動してはんのやね。どこまで行っとんの?」
「正十字学園って分かるか? あそこ、学校が集まった場所だけど正十字騎士團日本支部も兼ねてるだろ? んで、日本支部の支部長が俺を封印した本人だから……」
「そないな所までちょくちょく行っとるんや、ウチの本尊」
「本尊なのになー」
 ちなみに明陀宗内部でその事実を知っているのは今のところ座主の勝呂達磨ただ一人であるらしい。本日廉造が知ったために、これで二人になったわけだが。
 燐から補足説明を聞いた廉造は桐箱の蓋を開けたまま悪魔の青年に問いかけた。
「そんで、燐の願い事て?」
 廉造の台詞に燐の青い目がきゅうっと細められる。
 そうして、彼は告げた。
「倶利伽羅の封印を解いてほしい」
「封印を……?」
「その札を取るだけでいいんだ。簡単なんだけど、俺はこれに触れられないからそれもできない。だから廉造、お前にやってほしい」
「……俺とか他の大事なモンは傷つけへん言うたやんな?」
「おう。その約束は守る」
「なんで封印解いてほしいんか訊いてもええ?」
「不安を解消するため、かな」
 ぽつり、と燐は答えた。
「今の俺はかなり力が弱まってる。だから下手な祓魔師に見つかると強制的に主従契約が結ばれちまうんだ。本来の力があればこっちの意志でいくらでも撥ね退けられんだけど……」
 今まではまず燐の存在を知っている者が極端に少なく、また彼らは皆それ相応に分別のある人間だった。そのため、青い炎の悪魔≠封印しても、そこから無理矢理契約に持ち込むような真似はしなかった。
 燐の心臓を倶利伽羅に封印した本人は悪魔を使役することに興味が無かったようであるし、その友人である祓魔師の男は燐を自分の息子のように扱うことはあっても決して『使役すべき悪魔』として見ることはない。また本尊に悪魔が封じられていると明陀の中で唯一知っていた勝呂達磨も、封印の定期的なチェックを終えて倶利伽羅と共に京都に戻ってきた燐を見つけると「おかえり」と目を細めるのだ。
「そういう奴らの使い魔になるんだったら良いんだけどさ。俺の炎を見てキレる奴って結構いるだろ? 『青い夜』ってのもあったし。だから俺は自分の意志にそぐわない奴と契約なんかしたくねーの。こっちの身がどうなるか分かったもんじゃねーし」
「確かにそやね。サタンを恨んでる奴が燐に酷いことせえへんとも限らん」
「だろ?」
 廉造の同意に燐は顔を綻ばせる。
「だから力を取り戻したい。封印されたばっかの頃は俺も力の扱いが全然駄目で、封印でもしなきゃ他の祓魔師に存在がバレちまうところだったんだ。俺の力はこんなだし、バレたら普通は一瞬で処刑が決定されちまう。だから俺の命を助けてくれたあいつらには本当に感謝してんだけどな。でももう七年も経った。俺だって炎の制御はできるようになったし、そろそろバレて処刑∴ネ外の不安要素についても構えておきてえんだよ。……なあ、れん。頼む」
「…………うん」
 青い瞳に見つめられながら、そう言って廉造は首を縦に動かす。
 相手は悪魔で、これはあまりにも不用意な行動だ。解っているが、それでも廉造は燐を信じようと思った。この青は嘘を吐いていない、と。
「ほな、いくで」
「おう」
 子供の小さな指が鞘と柄を跨ぐようにして貼り付けられている呪符へとかかる。指先が触れても人間である廉造には何の影響も及ぼさない。そうして、端を摘み軽く力を入れただけで長方形の紙はいとも容易く取り去られた。
「これで、ええ?」
「ありがとな」
 廉造が振り返ると、燐は短く答えて倶利伽羅に手を伸ばす。触れられないと言っていたそれを、呪符が取り去られた今はまるで本来の持ち主であるかのように掴んでいた。
 と、同時に燐から感じる存在感が増す。それは燐が倶利伽羅を抜刀すると更に顕著になった。
(ああ、ホンマにこの剣に燐の心臓が封じられとったんや……)
 燐が纏っていた青い炎は勢いを増し、同色の瞳の奥に赤い光が灯る。おそらく魔障を受けていない者であっても今の燐ならば目視可能になっているであろう。
「燐、どうやった」
「いい感じ」
 ふっと廉造に微笑みかけ、燐は抜刀していた倶利伽羅を鞘に戻す。すると封印を解く前からチラチラと燃えていた燐の炎は完全に姿を消し、耳の長さや犬歯の尖り具合も普通の人間とあまり見分けがつかない程度になっていた。
「燐? その姿、」
「そこそこ人間っぽく見えるだろ? うん、やっぱちゃんと力が制御できるようになってる」
 両手を握ったり開いたりしながら燐は調子を確かめているようだ。先刻までの若干寝惚けたような感じも無く、表情から察するに上々と言ったところだろうか。
「れん、本当にありがとな」
「ええよ。俺もすごいもん見せてもろたし」
「うーん、でもそれだけでは吊り合ってねえよなぁ」
 ぽつりと燐は呟く。
「なあ、れん。他に何かして欲しいこととか見たいモンとかあるか? 俺ができる範囲だったら封印を解いてくれたお礼に叶えてやるぜ」
「いきなりそない言われてもなぁ……あんま思いつきませんて」
 悪魔であるはずなのに、燐は約束を破るどころか対価を払うつもりらしい。どこまでも悪魔らしくない悪魔だ。
 だがいきなり願い事を問われてもそう簡単には思い付けない。元々廉造はあまり何かを望まないようにして育ってきた身である。これが数年後なら十八歳未満は見てはいけない雑誌%凾頼んだかもしれないが、生憎彼はまだ十にも満たないお子様だった。
「れん、何でもいいぞ」
「そやなぁ」
 短い腕を組んでうーんと考え込む。
 しばらくそんな格好のまま固まっていた廉造は、しかし青い目を見つめてふと思い付いたことを口にした。
「もっと燐と一緒におりたいんやけど、そういうのはアカンの?」
 一歩間違えば燐の自由を奪うことになるかもしれない。そんな願いはやはり叶えられないだろうかと、廉造は眉根を寄せながら燐に問う。
 すると燐はぱちくりと瞬き、
「おう、いいぜ!」
 にこりと大輪の花を咲かせた。
「え、ホンマにええの?」
「良いって。じゃあどうする? あ、そうだ! いっそ俺と使い魔の契約結んでみっか!」
「はあ?」
「我ながら良いアイデアじゃん! 折角自分の意志でそういう契約もできるようになったんだから、俺が自分の好きな奴を選べばいいんだよな! れんは悪い奴じゃねーし丁度いい。メフィストは俺になんか興味なくて、ジジィにはもうクロがいて、達磨さんは伽樓羅がいるし」
「え、え! え?」
 何やらぽんぽんと知らぬ名前も知っている名前も出てきたが、そういう知人を差し置いて燐は廉造を己の主人に選ぶつもりのようだ。
 確かに一緒にいたいと思ったのは事実である。封印が解かれて自由の身になった燐が京都から離れるかもしれないと考えるとぞっとする。しかし、そんなに簡単に決めてしまっていいのか?
「燐、本気なん?」
「本気も本気! まあ、れんが嫌なら止めとくけど……なあ、れん。俺がお前の使い魔になるのは嫌か?」
「い、嫌なわけあれへんやろ!」
 廉造は咄嗟にそう返していた。
 燐の顔が不安そうなものから嬉しそうなものへと変わる。
「じゃあこれからよろしくな、れん!」
「……おん。よろしゅう頼んますわ」
 こうして廉造は一風変わった悪魔の主人となった。







2011.09.03 pixivにて初出

既にOnly My Majestyシリーズで燐が主人、志摩が従者をやっておりますが、主従逆転バージョンも書いてしまいました。
「PTaBD」は「Pinkish Tamer and Blue Devil」の単語の頭文字を取ってくっ付けただけです(笑)
ピンク手騎士と青い悪魔。(エロ手騎士でも可)